2011年06月04日

リトル・ランボーズ (Son of Rambow)

監督 ガース・ジェニングス 主演 ビル・ミルナー
2007年 フランス/イギリス/ドイツ映画 94分 ドラマ 採点★★★★

子供の頃、『キングコング』でその面白さを知り『ランボー』にハマっちゃったことで、その後映画浸りの人生を送ることになっちゃった私。出会いってのは大事ですねぇ。親としてはウチの子供らも映画好きになってくれれば嬉しいもんですが、それ以上に好きな物が見つかるならそれはそれでいいかなぁと

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【ストーリー】
1980年代初頭のイギリス。TVや映画など、俗世間の娯楽を一切禁じる厳格なキリスト教徒の一家で育ったウィルは、ある日学校一の悪ガキであるリー・カーターと出会う。彼の家でたまたま『ランボー』を観てしまったウィルは強い衝撃を受け、すっかりランボーに夢中。ランボーの息子に成り切り、リーと共に自主製作映画を作り始めるのだが…。

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銀河ヒッチハイク・ガイド』のガース・ジェニングスが、自身の体験を基に描いたノスタルジー溢れる一本。『ランボー』がノスタルジーの対象になっちゃうんだなぁと、若干感慨深くも。
ただでさえ多感な時期なのによりによって最初に出会った映画が『ランボー』じゃ、そりゃぁやられちゃうよなぁと、出だしからとっても微笑ましい。厳格な教えに縛られ自分を抑え込んでしまうウィルと、家族の愛に飢えているが故に悪事を繰り返し、唯一そばには居てくれる兄を一方的に愛するリー・カーターという、まるで違う家庭環境と性格を持ちながらもそれぞれ大きな問題を抱えた坊主二人が、子供らしい無邪気で無鉄砲な映画作りを通して友情を育み、それぞれ抱えるもんだいから解放されていく姿を、男子の脳内で常に走り回っているイマジネーションの産物を随所に散りばめながら描く本作。80年代初頭を舞台にしておきながらも使われる楽曲に随分大きな時期の幅があったり、若干の散漫さも否めない作品ではあるが、全体を包み込む微笑ましさもさることながら、問題への決着点が思いのほか痛快で好み。映画的にも派手なリー・カーターが迎える締め括りも悪くはないが、厳格な教えにがんじがらめになっていたウィルの母親が本当に大切なものに気付く様が、「最近怒ってばかり…」の前フリも非常に効いていてとっても印象的。下心丸見えの同胞を、静かに且つ力づくで追い出し、背後から塩を投げつけるが如く喝采を挙げる締め括りは、母親以上に長い間教えを守ってきたであろう祖母の眼差しの効果も相まって、かなり痛快。
笑いあり涙ありで心温まる作品であるし、なによりも『ランボー』に夢中になる子供の姿を描く作品を嫌いになれるわけがないので高評価を。だからと言って、『ランボー・ジョーダン/捕虜救出作戦』や『ランボー者』も好きってわけじゃないので誤解なきよう。確かに“リトル・ラン坊主”ってダジャレも頭をよぎりはしましたが。

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自分がランボーに成り切るのではなく、ランボーの息子となり捉えられたパパ・ランボーを救い出そうとする姿に亡き父への想いが垣間見えるウィル役には、本作がデビュー作となり、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』では幼少期のマグニートーを演じるビル・ミルナー。ピュア過ぎるが故に、悪気のないまま相手を傷つけてしまう様を好演。免疫がない為か、「コレいいね!すっごくカッコ良いよ!」と何でも褒めちぎり相手の気分を良くする様は、確かに映画監督向きだなぁと。
一方、親から愛情を満足に受けられないが故に、むやみやたらにイタズラを繰り返す反面、好きな相手には一方的な愛情を注いでしまうリー・カーター役には、これまた本作がデビューである『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』のウィル・ポールター。自分とウィルの二人だけの世界であった映画制作の場に次々と人が入り込み、ウィルと映画が自分の手から離れてしまうことに嫉妬と怒りを感じる様を、まんまそんな子が出ているかのような自然さで好演。リー・カーターもまたランボーを演じるのではなく、ランボーにとって父親のような存在であるトラウトマン大佐を演じるのだが、リーもウィルも父親を求めながらも、息子に扮するウィルと父親に扮するリーという、性格の違いをこんな所で見事に表現されているなぁと感心。
その他に、『ショーン・オブ・ザ・デッド』では最強サバイバーだったジェシカ・スティーヴンソンや、その絡みもあってか『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』のエドガー・ライトもちらりと顔を出しておりましたよ。

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“リトル・ランボズ”の方が良くない?

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posted by たお at 14:06 | Comment(8) | TrackBack(27) | 前にも観たアレ■ら行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
へえ、「X−MEN」に出んのか。
うーん、いいかも。
最近マカヴォイ君の登場する予告見るたび、にまにましてます。
リバー・フェニックス似の男の子は、「ナルニア・・」ではいまいちでした。
というより、吹き替えしか上映がなくて、彼のよさが伝わらなかったです。
最初に見たのが「ランボー」じゃ、乱暴になるのもやむを得ないっすよね。
Posted by sakurai at 2011年06月04日 20:24
sakurai様、こんにちは!
最近吹替えオンリーの上映が増えてきちゃいましたねぇ。アニメなんかは地方だとほぼ無条件に吹替えだけだったりも。声優がプロの仕事をきっちりしてるなら我慢も出来るんですが、素人丸出しのタレントだったりするともう。。。
Posted by たお at 2011年06月05日 11:26
たおさん、こんにちは。
「リトル・ラン坊主」ナイス!な命名です。
「X-men」に出るんですね。楽しみです。
Posted by ryoko at 2011年06月06日 15:51
ryoko様、こんにちは!
下手なダジャレはさて置いても、作品の味を残すなら“ランボウズ”が正しいような気がしますよねぇ。“ペット・セメタリー”が“ペット・セマタリー”だったみたいに。
Posted by たお at 2011年06月06日 17:19
X‐MEN見てまいりました。
少年はおっきくなってて、わかんなかった。雰囲気ずいぶんと変わってました。
映画はとってもいい出来!
Posted by sakurai at 2011年06月11日 17:56
sakurai様、こんにちは!
おぉ!面白かったですかぁ!
正直関心のなかった作品でしたが、ちょっとばかり興味を。
Posted by たお at 2011年06月13日 16:19
主演の二人が可愛かったですね。
それにランボーになりたいんじゃなくてランボーの息子って所がかわいい。
あ、確かに“リトル・ランボウズ”のほうが合ってますよねぇ。
Posted by yukarin at 2011年07月10日 20:36
yukarin様、こんにちは〜♪
大好きな主人公になるんじゃなくて、主人公に可愛がられる(及び可愛がる)立場になりたがるってのが、なんとも可愛らしい作品でしたねぇ。
邦題はあと一歩詰めが甘かったのかなぁと。
Posted by たお at 2011年07月11日 14:43
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