2008年 アメリカ/ドイツ映画 101分 コメディ 採点★★★★
震災以降、全国からボランティアが集まって瓦礫の撤去をしたり、いつかは配られるんであろう義捐金の話題を耳にすることが多くなりましたねぇ。それはそれで立派行動だと思いますし、集まった義捐金を「はいどーぞ」と配るのも決して悪いとは思わないんですが、瓦礫撤去などの労働の対価として義捐金を使うっても良いんじゃないのかなぁと思うんですよねぇ。生活基盤を立て直そうにも仕事がない被災地にとって、「アレがないー!コレが欲しいー!」ってただ待ってるよりも、労働という行為と定期的な収入ほど心が安定するものはないような気もしますし。まぁ、色々と難しいんでしょうけど。
【ストーリー】
世の中に不満ばかりを感じているダニーと能天気なホイーラーの二人は、栄養ドリンクの営業で学校を回る日々を送っていた。だが、彼女に振られ破れかぶれになっていたダニーが駐車違反を切っ掛けに大問題を起こし逮捕されてしまい、刑務所行きとの引き換えに子供の相手をする150時間の社会奉仕を命じられてしまう。安易な気持ちで子供たちの前に立った彼らだったが、そこに待ち受けていたのはとんでもない問題児で…。
いくら面白くてもせいぜいレンタル店の片隅に置かれて終わってしまう、日本でもコメディ冷遇っぷりが良く分かってしまう一本。面白いのになぁ。
ポール・ラッドらの顔ぶれから、30過ぎても大人になり切れない男の不安や開き直りを笑い飛ばすお得意の一本かと思いきや、もちろんそこも存分に笑わせつつ、大人と対峙する子供たちの姿もしっかりと描き切った本作。
子供との交流から成長する大人の姿って物語自体は新味がないものの、その子供たちが天真爛漫に描かれているわけではなく、描写は結構シビア。特に、中世の世界を再現して楽しむレン・フェアに熱中するオージーの趣味を全く認めず、彼自身にも関心を払わない家庭環境は非常に切実で深刻。そのオージーの家族に向かってダニーが「自分の息子だったら嬉しい」と言い放つシーンは、本作最大の喝采ポイントでも。大人になれない男たちの下ネタありのコメディとしても、ラブコメディとしてもサラっと楽しむことを厭わない作品ではあるが、先に挙げた家庭環境描写や、レン・フェアでの揉め事に、逃げ道をちゃんと用意して対応する大人の解決方法を見せたり、剣と魔法の世界にキッスを放り込む一見場当たり的描写に見えるが、ガチガチに固まった現代社会に対する反抗のスタイルって意味では根っこが同じであることを理解した上での描写だったりと、結構深い所をガッチリ掴んで緻密に描いてたりする作品なのでなかなか侮れない。“正しいオッパイの観賞法”という、男子必須項目も教えてくれますし。
主人公のダニーに扮するのは、『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』『寝取られ男のラブ♂バカンス』のポール・ラッド。いそうでいなかった“普通の男”ってポジションをガッチリと掴んだ彼だけに、今回もある程度の年齢になると感じがちな不平不満に塗れた“普通の男”を見事に演じている。相変わらず男友達が少なそうな感じも含めて。また、その相方には、遺伝子の構造が高田純次に近いんじゃないかと思えるほどテキトー男が似合う、『コップ・アウト 刑事(デカ)した奴ら』のショーン・ウィリアム・スコット。これまた持ち味を存分過ぎるほど発揮。
この大人らに対する子供らも大したもので、オージーに扮する『キック・アス』のクリストファー・ミンツ=プラッセは、普段からレン・フェアに入り浸ってるようなハマり役だし、ロニー役のボビー・J・トンプソンに至っては、あぁ見えて実は30を過ぎてるんじゃないのかと思えるほどの芸達者ぶりを披露。その他にも、相変わらず良いアニキっぷりを見せる『40歳の童貞男』のジェーン・リンチや、“異彩”って言葉じゃ収まりきれない存在感を放つ『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』のケン・チョンなど、好キャスティングが楽しい。
因みに、ヒロインに扮しているのは『恋するポルノ・グラフィティ』のエリザベス・バンクス。「ゲハァ♪」って笑いだしそうな開けっぴろげで明るい魅力を今回も披露する好みの女優の一人なんですが、如何せん私も歳を取っちゃったので、彼女とレイチェル・マクアダムスとパーカー・ポージーの見分けがなかなかつかなくなってきた感じが。彼女を中心として、何か黒っぽいのがパーカー・ポージーで、もっと開いちゃった感じのするのがレイチェル・マクアダムスだと辛うじて区別してるんですが、それでも脳内ではいつもゴッチャに。まぁ、3人とも好みの女優なんで問題はないんですけど。
逃避先だって楽ではない
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
好きな俳優の出演作を探していて出会った作品ですが、レンタルの棚で「ぼくたちの奉仕活動」というタイトルを見ただけだったら手に取らなかったかも・・・
かと言って、現代の直訳でも面白く無さそうだし・・・
いつも邦題に難癖をつけちゃうのですが、手に取ってもらえるようなタイトルを考えるのって、難しいですね。
コメディなら任せろ!なキャストをそろえた上で、シビアな問題をサラッと料理してる、美味しい作品でした!!
店側も含め、良い作品をどのように売るのか真剣に考えて欲しいなぁと思いますねぇ。難しいんですけど、難しい事をするのが仕事ですし^^;