ＰＴＵ (PTU)

監督　ジョニー・トー　主演　サイモン・ヤム
2003年　香港映画　88分　サスペンス　採点★★★★

人との繋がりや偶然や必然など、「世の中って不思議よねぇ」って話を唐突にカエルの雨を降らせることで表現した『マグノリア』。文字通り“不思議”だ。で、一つの拳銃を巡る色々と絡み合った話を、バナナの皮で表現したのがコレ。

組織犯罪課のサァ刑事は街のチンピラとモメ、拳銃を紛失してしまう。それを聞いたＰＴＵ（香港警察特殊機動部隊）のホー隊長は、サァの窮地を救うため部隊を率いて拳銃の捜索に出る。一方その頃、サァを襲ったチンピラのリーダーが殺され、マフィアのボスである父親が復讐に出る。その殺人事件の捜査をしていた特捜課ＣＤＩのチョン刑事は、サァの行動に不審を抱き彼を追う。そして、午前4時。何かに導かれるように彼らは一つの路地に集まり…。



バナナの皮で転んで始まった話が、バナナの皮を踏んで転んで終結する。
長い年月をかけてコツコツと撮り溜めてきた作品が、今では滅多に観られなくなった“バナナの皮で転ぶ”シーンで挟む脱力感は、非常にジョニー・トー。とはいえ、バナナとバナナの間に挟まれた物語は緊張感が高く、相変らずまともなセリフのある女性キャラクターが一人しかいないストイックな大人の男の世界。劇中、非合法で暴力的な行動をとる警察の姿は、やもすれば“不正”“もみ消し”“馴れ合い”の物語として批判の作品となるのが常であるが、ジョニー・トーが語る通り、クリーンのままでは犯罪に対抗することが出来ない現状を盛り込み、肯定的に描いている。背広組のＣＤＩと、現場組のサァとＰＴＵの対比が、より一層そのテーマを明確にしている。



アウトロー同士に芽生える熱い友情がトレードマークでもあるジョニー・トー作品であるが、本作では現場組の連帯感といった意味合いが強い。その“灰色”さを受け入れるか入れないかで、この作品に対する評価も変わってくるであろう。
物語の構成も見事。拳銃を探したいだけなのに、どんどんドツボにはまっていく刑事とＰＴＵのこの作品の軸になる物語は時にコミカルで、それにマフィア同士の抗争、背広組の介入、イタズラ小僧が絡んでくる経緯は違和感もなくいたってスムーズ。銃撃戦のきっかけがやや強引な気もするが、その結果みんなが灰色に染まり、何となく万事解決してしまう苦い笑いの感覚は個人的には好き。カエルの雨程は強引じゃないですし。


ダーティじゃないハリーじゃ、頼りにならないでしょ？

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Comments

TBありがとうございました。
ジョニー・トウ監督が好きなのですが、ハズレが続いたように感じていたので久しぶりのアタリでした。
たまに「それドリフだろ」な笑いもありましたが、香港ノワールに相応しい渋い作品でした。
楽しめました。

Posted by 健太郎 at 2006年07月15日 22:45

健太郎様こんばんは！
出来の波が異様に激しいジョニー・トーですが、これは面白かったです!!
脱力感も含め、らしい作品でしたね＾＾

Posted by たお at 2006年07月16日 02:20

ＴＢどうもでした〜♪
ＤＶＤのジャケ写見て、チョン警部がもっと活躍するんだと思ってたんですけどねぇ・・・登場からずっとカッコ良かったのに、何であんなオチ・・・(^_^;)

Posted by はっち at 2007年02月19日 22:51

はっち様こんばんは！
まぁ、ジョニー・トゥは女性を撮る気がないですからねぇ＾＾；

Posted by たお at 2007年02月21日 00:32