2008年 アメリカ映画 102分 コメディ 採点★★★★
ただ単に人見知り屋さんなだけなんですが、初対面の人に無口で冷たい人間嫌いと思われがちな私。一つ一つ訂正していくと、懐けばすっげぇ喋りますし、関心のある人と動物には基本的に優しい方なのではと自負。人間そのものも嫌いじゃないですし、好きなタイプの人間はとことん惚れこむ傾向にあると思うんですよねぇ。まぁ、好きなタイプよりも嫌いなタイプの人数の方が圧倒的に多いのは事実ですが。
【ストーリー】
医療ミスによる臨死体験で幽霊の姿が見えるようになってしまった、極度に人間嫌いな歯科医のピンカス。自分の存在に気付く人間の登場に大はしゃぎの幽霊らに付きまとわれ困り果てたピンカスは、付きまとわないことと引き換えに一人の幽霊の願いを聞くことに。現世の妻の再婚を阻止して欲しいという願いを叶えるために彼女に近づくピンカスだったが、次第に彼女に惹かれ始めてしまい…。
脚本家としては『宇宙戦争』や『天使と悪魔』など大作での仕事が目立つものの、監督としては『エコーズ』のような小粋な一本を手掛ける事の多いデヴィッド・コープによる、ファンタジーラブコメディと言うか心霊ラブコメディ。
導入部に流れる、“君の向こう側が透けて見える”っていうまんまな意味合いのみならず、心変わりによる彼女の変化を嘆く歌詞が作品に見事にマッチしている、ビートルズの“君はいずこへ”の使い方の上手さにまず唸らせられた本作。人間嫌いの嫌な奴が特殊な体験により心の温かみを取り戻すという、肌寒くなり始める時期にわんさか増えるタイプの作品ではあるが、劇中のキャラクターとその特異な題材をしっかり練り込み、丁寧な仕上がりを見せる一本に。
幽霊がこの世を彷徨うのは死者側の未練ではなく、生きている人間の断ち切れない想いが縛り付けてしまっているという、幽霊譚としてもしっかりとした土台を持つ本作。自分たちの存在に気付いてもらったことにはしゃぎまくる姿などを笑いに転化させながらも、そこに悲しさと優しさをちゃんと残している作りが上手い。発端はやや唐突ではあるがラブコメディとしても上々の仕上がりで、「チューして終わり!」ってな安易なハッピーエンドではなく、ホッコリフンワリとしたその後を想像させる大人な着地点も好み。
人付き合いが大嫌いなピンカスに扮するのは、『ウソから始まる恋と仕事の成功術』のリッキー・ジャーヴェイス。もう、そのイギリスでしか生まれ得ないような神経質丸出しの面持ちと彼の芸風が役柄にドハマり。まるで、リッキー・ジャーヴェイスの為だけに書かれた脚本かと思えるほど。小柄で小太りというネガティブ要素を前面に出しながらも、よく見れば男前と言う絶妙な風貌バランスも良い。本作にしろ“エキストラ:スターに近づけ!”にしろ、非常に面白い作品が多い役者ではあるものの、TVでの仕事が多いせいか日本でイマイチ人気が出ないのは非常に残念な気もしますが、次回作としてとってもメジャー且つダニー・トレホさんももちろん出ている『スパイ・キッズ4』が控えてるんで、それを機会に人気が出ればなぁと。あ、でも声でしか出てないや。まぁ、それはそれで。
また、いかにもアメリカ人なチャラい感じが、リッキー・ジャーヴェイスと良いコントラストを生んでいた『グリーン・ゾーン』のグレッグ・キニアや、以前は“量産型シャロン・ストーン”か“モルダーの嫁さん”って程度の印象しか無かったものの、ここ数年女優として目覚ましい成長を見せている『スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと』のティア・レオーニが、これまたリッキー・ジャーヴェイスとは対照的に健康的な美しさを見せ、キャスティングの妙を堪能できる本作。
その他にも、『ロケッティア』でのソフトな男前ぶりが消え、ほど良い卑しさが顔に出てきたビル・キャンベルや、『ローラーガールズ・ダイアリー』のクリステン・ウィグ、中坊っぽいニヒリスティックな笑みはそのままに、良い感じのお父さんっぽさも滲み出ている『ハプニング』のアラン・ラックら、好みの役者が出ているのも嬉しい。と言うか、アラン・ラックが嬉しい。「あ!キャメロン・フライだ!」って。
幽霊じゃなくても、この状況はすっげぇイヤ
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ほんと、キャスティングが良かったですよねぇ〜〜
死ぬときは、ゴーストとなった時に恥ずかしくない服装を心がけなきゃ。
なんて不謹慎な独り言も許される(?)、シニカルな笑いと悲哀を感じさせるドラマ部分とのバランスの良さも、心地良かったです。
キャラクターをしっかり活かした上でドラマを構成する、ホント良く出来た作品でしたねぇ。
>ゴーストとなった時に恥ずかしくない服装を心がけなきゃ
裸とか特殊な格好の最中とかは避けたいですねぇw