2005年 フランス映画 128分 サスペンス 採点★★★
なんら気兼ねすることなくネタバレしておりますので、「面白かったか?つまらなかったか?」だけを知りたい方は、コチラを。
前ローマ法王ヨハネ・パウロ二世の暗殺未遂事件にも関与が噂された、トルコの国粋主義組織“灰色の狼”。ヨーロッパ最大の暗部として怖れられるこの組織の、触れてはならない闇に触れまくっているという謳い文句のこの作品だが、大丈夫か?観終わった後、玄関先にトルコ人とか来やしないか?シシケバブの串で刺されたりしないか?
【ストーリー】
パリで不法入国のトルコ人女性ばかりが狙われる連続殺人事件が発生。被害者は皆似た風貌の女性で、激しい拷問を受け無残に顔面を切り裂かれていた。捜査に行き詰った若手刑事ポールは、トルコ人街の闇社会に通じた暴れん坊刑事シフェールの助けを借りる。一方その頃高級官僚の妻アンナは、記憶喪失に悩んでいた。しかし、その記憶の謎が明かされる時、二つの事件は一つに繋がり、その背後に強大な組織が浮かび上がる。
思わせぶりなミステリーを散りばめておきながら、その回収を放棄し雰囲気だけで乗り切った『クリムゾン・リバー』の原作者ジャン=クリストフ・グランジェの『狼の帝国』を映画化。脚本も担当している。二つの別々の事件を、大袈裟なハッタリで目くらませしている隙に力技で一つにまとめ上げるアウトラインを聞いた時点で想像が付くとおり、本作も大風呂敷を広げたはいいが、広げた風呂敷を畳むどころか踏みにじって突き進む、雰囲気だけは立派な『クリムゾン・リバー』風味の一本。ジャン・レノがいつ「俺、実はニーマンスなんだ」と口走るかドキドキしました。
「私の記憶は、本当に私の記憶?」と、フィリップ・K・ディック調(と言っても映画版『トータル・リコール』程度)のパラノイアに陥りながらも、自力で記憶を取り戻し、結果二つの事件が繋がっていく展開は面白いのだが、序盤にネタが割れそうな出来事を散りばめすぎているので別段驚かない。記憶が蘇った途端に殺戮マシンと化す、『バイオハザード』や『ロング・キス・グッドナイト』を髣髴させる展開の無節操さには、驚きましたが。
二つの物語を繋げたと言っても、記憶を改竄してテロ組織へスパイとして送り込む実験の為捕らえた女が、たまたまその組織の中枢から来た女だったり、“ヨーロッパ最大のタブー”と風呂敷を広げた割には、その組織が血眼になって探しているのがバックれた麻薬の密輸人だったりと、ストーリーの命綱が非常にアバウトな本作。結局今回も、雨降りしきるパリの映像など雰囲気だけで逃げ切られてしまった。
“トルコ人街の闇社会に通じてる”という売りしかないくせに、始まって早々闇社会のボスの指を切断して暴れまわる後先を考えない行動が魅力のシフェールを演じるジャン・レノ。今回もまた刑事役。ニーマウス警視との差別化は、“乱暴なムッシュ”然としたヒゲでしょうか。もうあのヒゲ、とても乱暴。痩せ過ぎたトリニティにしか見えないアンナ役のアーリー・ジョヴァーや、何気にいつもお洒落なおフランス男ジョスラン・キヴランらの印象が非常に薄い分、ジャン・レノのヒゲばかりが記憶に残る結果に。“乱暴なムッシュ”フェチの方々には、堪らない一本になることでしょう。
意味深な設定が意味深なまま終わっていたり、証人が核心に触れる発言をしようとすると途端に殺される今では時代劇でも観られない恐ろしく古い展開もするが、このヒゲに免じて★3つ。
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あのヒゲはちょっとちょっと、、、
かなり目立ちましたね。
ジャン・レノ目当てで観たので、雰囲気だけの作品でもいいです(笑)
名ヒゲ映画として、しっかり頭に刻印されましたw