1974年 アメリカ映画 117分 ドラマ 採点★★★
ネコってのは、子供なんかよりもお年寄りの方に懐きますよねぇ。不必要なまでに大声を出し、予測不能な方向にばかり動き回る子供の傍には可能な限り寄らない。あんまり動かなくなってきたお年寄りの傍で、尻尾をゆーらゆーらさせてる。最近うちのネコらが私の傍で昼寝をするようになってきたのは、私が年取ってきたからなんですかねぇ。
【ストーリー】
区画整理でアパートを追い出された老人ハリーは、愛猫トントを連れニューヨーク郊外に住む息子の家で世話になることとなったが、いまいち落ち着かず。そこで、娘の住むシカゴへ向けて旅立つのだが…。
『ビバリーヒルズ・バム』のポール・マザースキーによるロードムービー。
明るい未来が見えていた50年代と混沌の60年代が過ぎ、先の見えない不安が覆いかぶさり始めていた70年代初頭を舞台に、その急激な変化の最中にあるニューヨークから大陸を横断しサンタモニカへと向かう旅を描く本作。道中出会うユニークな人々との物語は散文的ではあるが、その誰もが時の移り変わりを象徴しているかのようで、その出会いや出来事に抗わず正面から向かい合うことで、自身の人生が幸せだったことを再確認しているかのようでもある。ハリーにとって非常に大きな別れに挟まれた旅ではあるが、これは決して決別の旅を描いているのではなく、別れも含めた新しい日々へと向かうための旅。その前向きさが、観る者の心を温めてくれているのではと。
本作を初めて手に取ったのが今から十数年前。「良い映画を観た」という印象こそ持ったが、時代の違いを取り払っても理解しきれていない部分もありシックリこなかったので、いい加減歳も取ってきた今回再度観賞したのだが、前回よりも大分印象が変わったものの、やはり“別れ”の部分がイマイチ理解しきれていない。十分楽しめたとはいえ、そんな状態で「名作だし評判も良いから感動した!」と諸手を挙げて高評価するのも自分で納得できないので、今回は暫定的にこの評価。更に歳を取った10年後くらいにもう一度手に取ろうかと。でも、年齢じゃないような気がするんですけどねぇ。
「人生とは川の流れに抗うようなものだ」と言いながらも、出会いや出来事に一切抗わず良い旅を満喫しているハリーに扮するのは、個人的には『炎の少女チャーリー』が非常に印象的なアート・カーニー。愚痴っぽく偏屈者を自称しながらも、隠しきれない優しさが人を寄せ付けるハリーを好演。なんだかんだと子供たちが良い子に育ったのも納得。
その他にも、『エクソシスト』のエレン・バースティンや、『アウトロー』のチーフ・ダン・ジョージ、『アダム・サンドラーは ビリー・マジソン/一日一善』のジョシュ・モステルらが良い印象を残しているが、やはり本作の準主役は茶トラのトント。芸達者なネコと言うよりは非常に素のネコって感じなのだが、タイプ的には人に気を遣う感じのネコ。二人の間を、「アッチも寂しそうだなぁ、コッチも寂しがってるよなぁ」と行ったり来たりするタイプの。十数年前に私が拾ってきて、今は実家でゴロゴロしているネコも茶トラの奴で、性格もモロこんな感じ。結局は“でんすけ”って名前になっちゃいましたが、“トント”ってのも当初候補に。性格が似ている上に、年齢的には本作のトントよりもずっと年寄りになっちゃったってのもあって姿がだぶってだぶって、そう言った意味では胸がキューっとなった作品で。
老人に心おきなく可愛がらせてあげてるの図
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