2011年05月13日

メガマインド (Megamind)

監督 トム・マクグラス 主演 ウィル・フェレル(声)
2010年 アメリカ映画 95分 アニメ 採点★★★★

ウルトラマンにしろ仮面ライダーにしろ、デザインやパワーがシンプルに完成されたヒーローに対抗する悪役が、とにかく輝いてないと面白くないんですよねぇ。地味な悪役じゃヒーローも霞む。なんかこう、お互いが意識して刺激し合ってるくらいが良い。ただまぁ、あんまり意識し過ぎちゃうと、世界征服が目的だったはずが、いつの間にか仮面ライダーを倒すのが目的になっちゃったショッカーみたいになっちゃうんですけど。世界征服はどうしたと。そもそも、征服して何がしたいんだと

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【ストーリー】
長年のライバルだったヒーロー“メトロマン”を、遂に倒した悪役メガマインド。念願だったメトロシティも手中に収め大喜びのメガマインドだが、ライバルのいない世界で悪役の存在意義も目的も失ってしまったメガマインドは意気消沈。しかし、ひょんなことからヒーローを新たに作り出せばいい事に気付いたメガマインドは、冴えないカメラマンのハルをヒーロー“タイタン”にすべく教育を開始。遂にタイタン誕生となるのだが、タイタンは悪の道に走ってしまい…。

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『マダガスカル』のトム・マクグラスによる、もう面白過ぎて何から書いたらいいか分からなくなるタイプの一本。日本での公開もとりあえず決まってるっぽいので、「あとは各自その時に確認して!」で済ませたい気まんまんでございますが、それだとあんまりなので以下思い付いたことをポロポロと。
悪役としての人生に居場所を見出したメガマインドが、ヒーロー不在となった時に新たな人生の選択肢を迎える様を描く本作。ヒーローとしての存在意義を問うた『Mr. インクレディブル』の逆バージョンにすっぽり収まって落ち着くのではなく、“もし悪役がヒーローを倒したら?”“世界征服を果たしたら何をしたいの?”“悪の支配する世界に更なる悪が現れたら?”“もしカル=エルの辿り着いた場所が人の良い老夫婦の家じゃなかったら?”といった、ヒーロー物を楽しむ際に浮かぶ好奇心から来る疑問の数々に正面から向き合い、しっかりとストーリー化した脚本がまず見事。『アンブレイカブル』でも描かれていたヒーローと悪役の陰と陽の関係性や、ヒーロー依存が強い市民とヒーローの関係、環境が人格に及ぼす影響、陰陽のバランスが崩れ軽くゲシュタルト崩壊に陥るメガマインドの様などなど、“ヒーローと悪役”というテーマから派生する様々な題材をガッチリと押さえ掘り下げているにも関わらず、重くなり過ぎず軽快なタッチを維持し続ける見事なバランス感覚を見せ、更にモテない男のラブコメディという要素まで放り込んでおきながらも、笑いに笑う95分というコンパクトな作品に仕上げる驚愕の荒技を成し遂げている。ベタでありきたりの枠から抜け出せないメガマインドらしく、AC/DCやジョージ・ソログッドといったいかにも不良っぽい曲を好みながらも、同じテープにミニー・リパートンの“Lovin' You”が入ってたりもする、キャラを言い表した楽曲の使い方も上手い。
ガンズ・アンド・ローゼズの“ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル”とレーザービームをバックにメガマインドがバババーンと登場するシーンなど、大きなスクリーンで楽しんでみたい箇所も少なくないので、劇場公開されたら行ってみたい作品ではあるんですが、地方だと吹替版しか上映しないことも多いので、その吹替えがどうなっちゃうのかちょっと心配でも。

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そんな心配をしてしまうのも、ただでさえ魅力的なキャラクター達を更に輝かせている役者たちがあまりにも素晴らしいから。
特に、メガマインドの声を担当する『ジ・アザー・ガイズ』『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』のウィル・フェレルは、もう実は青く塗ったフェレルが出てるんじゃないのかって思えるほどのハマりっぷり。姿が見えない分見た目から来るクドさは薄まってしまっているが、隅々単語を間違える細かいギャグにしろ、声だけになると尚更フェレルの器用さが際立ってくる良い仕事振り。生まれながらにして全てを持っている恵まれた男に対し、努力を全ての武器にし対抗する“冴えない男の奮闘記”という側面が強く前面に出て、それが上手く作品に噛み合ったのも、フェレルという存在があったからに他ならないのでは。
また、ヒロイン役のロクサーヌには、『ウソから始まる恋と仕事の成功術』『デート&ナイト』と最近引っ張りだこのティナ・フェイ、当て書きとしか思えないハル役に『スーパーバッド 童貞ウォーズ』『寝取られ男のラブ♂バカンス』のジョナ・ヒル、メトロマンに『オーシャンズ13』『Mr.&Mrs. スミス』のブラッド・ピットと、錚々たる顔ぶれが集結。製作総指揮も兼ねる『ナイト ミュージアム2』『スタスキー&ハッチ』のベン・スティラーも、小さい役ながらも出演しているのは嬉しい。
キャラクターも役者もどれもこれも素晴らしいのだが、中でもお気に入りはやっぱり『紀元1年が、こんなんだったら!?』『恋愛ルーキーズ』のデヴィッド・クロスが声を当てた、メガマインドの世話係であり召使であり親友であるミニオン。ゴリにおけるラー。最低映画の呼び声も高い『ロボット・モンスター』の、ゴリラの着ぐるみに潜水服の頭部を被せただけのやっつけモンスターに模したその風貌も、下あごの飛び出た愛くるしい表情も、メガマインドに対する健気なまでの対応も、なんとも可愛らしい。あれ、一匹欲しい

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自分で自分を輝かせられるかどうかがカギ

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posted by たお at 15:58 | Comment(4) | TrackBack(1) | 前にも観たアレ■ま行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ホント、本作はウィル・フェレルあってのものでしたよね… 妻と共に笑いっぱなしでしたが、たお様の言うように本編は実に色々な要素を綺麗にまとめていましたよね…
 
個人的には『Toy Story3』『Tangled』と比べると映像が3Dにチョイ偏り気味だったと思えて残念ではありましたが、そんな私でもクライマックスの登場シーン、アレは鳥肌物でしたワ。
 
しかし吹替えもさる事ながらあの楽曲の使い方の巧さ、アレも翻訳出来ないし仮にしても伝わり辛いのがアメリカ映画のニクイとこですよね(先日『イーj−・ライダー』を観てますますその意を持ちましたですよ)
Posted by USA-P at 2011年05月13日 21:30
こんばんは〜。ウィルフときいて飛んできました(笑)
これは見たいですねぇ。隅々まで行き届いた、素敵なコメディになっていそうです。おすすめの「スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団」も見てきます。コメディ見るだけの体力が回復してきました。
Posted by ひとみ at 2011年05月14日 01:54
USA-P様、こんにちは〜♪
いやぁ、これも楽しめましたねぇ。笑い倒しましたよ。
しかしまぁ、確かに楽曲のニュアンスを伝えるってのは難しいですよねぇ。ただのBGMとして、なーんにも触れられないまま終わっちゃうのも多いですし。評論家の皆さんもプロなんですから、「こう言った意味合いで使ってるんですよ〜」くらいは事前に紹介してくれたらなぁとも。
Posted by たお at 2011年05月14日 08:57
ひとみ様、こんにちは〜♪
飛んでこられましたかw
これは、ホント楽しい作品でしたよー。劇場でも公開されるっぽいので、期待して待たれてみては。とは言いつつも、自分が面白いと思った作品は胸を張って「面白い!」と言い切れる私ですが、「じゃぁ、観る!」と言われると急に自信が無くなる小心者な私なんで、ほどほどに期待されたらと^^;
Posted by たお at 2011年05月14日 09:01
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Excerpt: 優れた頭脳の持つ悪役メガマインドは長年に渡ってあらゆる方法でメトロシティーを征服するため、正義の味方でスーパーヒーローのメトロ・マンと戦ってきた。ついに凶悪な計画で勝利する日がやってきたものの、ライバ..
Weblog: Mooovingな日々
Tracked: 2011-06-07 06:51
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