1979年 アメリカ映画 108分 サスペンス 採点★★★★★
“脱獄”
甘美な響きである。男の子なら一度は夢想する脱獄。独房の壁にボールを投げながら脱獄計画を練ったり、スプーンでこつこつ掘ったりする主人公達に魅入ってしまうもの。「自分だったら、どう脱獄しようか?」などと考えてみるものの、まずその前に収監されなければならない事実に気付き、断念。捕まるのはイヤですもの。
【ストーリー】
過去に誰一人として脱獄に成功したことがないと言われるアルカトラズ刑務所。強固な岩盤の上に建つ事から“ザ・ロック”とも呼ばれるサンフランシスコ湾に浮かぶ孤島に建てられた刑務所に、脱獄の常習犯フランクが収監される。“脱獄不可能”といわれる刑務所に、フランクが挑む。
オープニング、ほとんどセリフもなく雷鳴とともに現れるイーストウッドは“全てを終わらせる者”のようだ。監督のドン・シーゲルは、この実話を基にした物語を派手な展開に頼らず脱獄の手口を丹念に見せることによって、素晴らしい緊迫感を生み出す。しかし、“無駄の省略”を物語や人物描写の省略と勘違いしている昨今の作品と違い、何気ないリアクションや言葉じりを効果的に使うことによって、セリフでは語られない人物の背景までをも容易に想像させてくれる。そしてまた、派手な展開を省いているとはいえ、“人種間の対立”“抗争”“刑務所側の非道な仕打ち”といった、刑務所モノを面白くしている要素を洩れなく盛り込んでいるのには感嘆してしまう。所長と看守がグルになって囚人を殺したり、ドナルド・サザーランドが電気椅子に座ったりといったムチャな展開に持っていかずとも、この高い緊張感を全編に保っているのはさすが。また、脱獄にも“婚約者がピンチ”とか“実は無実”とか“扱いがあまりにヒドイ”といったありがちな理由付けをせず、“檻に入れられたから出る”“押さえつけられたから反発する”といった本能的とも男の子のスポーツ的とも思える爽快感が、たとえ失敗していようが“自由に飛び立つ”という夢を残してくれている。
“脱獄と言えばスプーンで掘る”を定着させた本作だが、その過程は何度観ても見事。実際の手口を再現しているのだが、手先が器用でなければならないことを痛感。もうこの時点で、わたし脱落。脱獄できません。地道に生きていきます。
もちろんイーストウッド抜きでは、この作品は語れない。イーストウッド作品と言えば、完全無欠のヒーローと言うよりは微妙な間を空けた空気が魅力なのだが、本作のイーストウッドはひたすらにストイック。それでも、権威や人種に問わず誰に対しても態度が一緒であったり、何気にブルースが流れていたりと、イーストウッド映画の魅力は損なわれていない。若干肉付きのいい頃のイーストウッドではあるが、実際のフランクの写真を見てみると雰囲気が非常に良く似ている。役作りだったのか?
レモが出ていたり、ダニー・グローヴァーがどっかに隠れていたりと魅力がいっぱいの作品なのだが、DVDには不満が。画質や音質、特典のなさについては原版の問題もあるのだろうから問わないが、イーストウッド作品はやはり山田康夫の吹替えでも観たいのがファンの希望。TV収録時ので構わないので、是非出していただきたい。何度も言いますが、買い直しますから。
大人しく入っているわけがない
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>ダニー・グローヴァーがどっかに隠れていたりと魅力がいっぱいの作品なのだが、
ありゃま! 散々何度も観ているのに、
これは気が付いて無かったです。
また再観する楽しみが増えたですよ(笑)。
不撓不屈で狡猾なキャラが、
一人「大脱走」と言う感じでしたね。
カゴメ的には、
あの所長も実は結構お気に入りなんですが…。
(自分が刑務所長だったらきっとあんなタイプかと。笑)
まぁ、ハッキリどこにダニー・グローヴァーいるのかは、私も見つけられませんでしたが^^;
囚人の一人には違いありませんw
刑務所モノにありがちな悲壮感はないものの、それでも緊迫感は満点でした。壁が高ければ高いほど、越えたくなるんでしょうね、彼。理由じゃなく、“出る”というのが目標みたいな。