“未知の世界”“ミステリー・ゾーン”のタイトルで日本でも放映されていた、1959年にアメリカで放映開始された人気TV番組を、番組のファンであったスティーヴン・スピルバーグやジョン・ランディスら気鋭の監督4人が集結して映画化した一本。映画だからと言って無暗にスケールアップするのではなく、ロッド・サーリングやリチャード・マシスンらが描いてきた不条理で捻りの効いた世界の雰囲気をしっかりと残すだけではなく、各監督の個性を前面に打ち出し、TVの時間枠内でコンパクトに仕上げているのが嬉しい。この作品の後、トワイライトゾーンが再びシリーズを再開させたことや、“世にも不思議なアメージング・ストーリー”など味のあるTVシリーズが生まれた功績も踏まえて、評価は決して低くない。
第一話 偏見の恐怖 (Time Out)
監督 ジョン・ランディス 主演 ヴィク・モロー 採点★★★★
【ストーリー】
会社での昇進のチャンスを逃し、黒人やアジア人、ユダヤ人への憎悪を喚き散らしながら酒場で荒れるビル。彼は一人酒場を後にするが、一歩外に出るとそこは第二次世界大戦中のドイツで…。
『チャックとラリー おかしな偽装結婚!?』のダン・エイクロイドと『アウト・オブ・サイト』のアルバート・ブルックスらの、小気味良くユーモア溢れる会話から恐怖へと一転する笑いと恐怖のバランスが絶妙なプロローグに続いて、『狼男アメリカン』のジョン・ランディスが脚本も担当した第一話。
偏見に満ち溢れた男がその差別される側に回される皮肉と教訓、そして異世界への入口が我々の世界とドア一枚で繋がっている感覚が、非常にトワイライトゾーンらしい味わいを感じさせる一遍。“コンバット”でバッタバタとドイツ兵を倒してたヴィク・モローがドイツ兵に追われるインパクトもさることながら、いくら悔い改めようともドアが開いてしまった時点で既に手遅れという不条理さも堪らない。
ただ、やはり避けて通れないのがヴィク・モローと子役2人の撮影中の事故死。この、映画製作に於いて最も起こしてはならない事故がなければ、その後のヴィク・モローや子供たちはもちろんのこと、この後一気に輝きを失ってしまうジョン・ランディスが今どうなっていたのだろうかと思いを馳せざるを得ない。
第二話 真夜中の遊戯 (Kick the Can)
監督 スティーヴン・スピルバーグ 主演 スキャットマン・クローザース 採点★★★
【ストーリー】
希望も喜びも失った人生を送る老人ばかりが集まった老人ホームに、新たに入居してきたブルーム。彼は老人らに楽しかった子供時代を思い出すためにもと、夜中に缶蹴りに誘い出す。缶蹴りに興じる老人たちは、みるみると若返っていき…。
『未知との遭遇』のスティーヴン・スピルバーグによる、心の若さを題材としたファンタジー。主演は、『シャイニング』のスキャットマン・クローザース。
脳内がピーターパンだった頃のスピルバーグらしい題材と甘ったるさではあるが、不条理な物語ばかりが続く本作の中に於いて清涼剤のような役割を果たしているって意味では貴重な一遍。“若さ>老い”の二元論ではなく、各々のキャラクターが若さに対する考えを持ち分けている描き方が良い。題材に対する掘り下げの足りなさが気にはなりますが。
当時、一番期待していたスピルバーグのエピソードが、本作中一番印象が薄いってのに驚かされたものですが、今観てもその印象は然程変わらず。
第三話 こどもの世界 (It's a Good Life)
監督 ジョー・ダンテ 主演 キャスリーン・クインラン 採点★★★
【ストーリー】
人生に変化を求め、当てもなく車を走らせる教師のヘレン。彼女は立ち寄った食堂で出会った少年アンソニーの自転車を、誤って車ではねてしまう。アンソニーを家まで送った彼女は、アンソニーの家族に熱烈な歓迎を受け食事を共にすることになるのだが、彼の家族はどうにも奇妙で…。
『グレムリン』のジョー・ダンテによる、もうジョー・ダンテらしいとしか言いようがない一遍。主演は『イベント・ホライゾン』のキャスリーン・クインラン。
ディック・ミラーが出てきた時点で、「あぁ、ダンテが始まった」と思わせる一遍。ダンテらしいカートゥーンへの偏愛ぶりと、濃縮されまくったエクストリームな子供らしさが炸裂しまくっており、ダンテらしい気持ち悪さが所狭しと暴走するスピルバーグに可愛がられていたのも良く分かる作品。
子供らしさを濃縮すると純粋悪のようになってしまう様や、それに媚び諂う大人の姿、そして子供に正面から向かって道理を教え、超能力の指導を行う美人教師という、ダンテの中にある幼さと大人の女性に対する思い込みに近い理想像がよく表れており、このダンテらしさは人によっては嫌悪感を呼ぶかもしれないが、私は結構好き。キャスリーン・クインランの美人っぷりにも惚れ惚れしますし。
第四話 2万フィートの戦慄 (Nightmare at 20,000 Feet)
監督 ジョージ・ミラー 主演 ジョン・リスゴー 採点★★★★
【ストーリー】
嵐の中を飛ぶ飛行機の機内で、飛行機恐怖症のジョンはパニックに陥っていた。気分を落ち着かせようと窓から外を見たジョンの目に映ったのは、飛行機の翼に跨りエンジンを破壊しようとしている怪物の姿であった…。
テレビ版でも印象深かったエピソードを、『マッドマックス2』荒廃後の世界のイメージを決定づけたジョージ・ミラーがメガホンを握ってリメイクしたパニックホラー。主演は、『クリフハンガー』のジョン・リスゴー。
第二次世界大戦中、パイロットの間で噂された怪物“グレムリン”をモチーフに描いた一遍。密閉された空間で繰り広げられる、凄まじいまでに力強い緊迫感がまず見事。荒々しいまでのアップの使い方など、ジョージ・ミラーらしさも存分に味わえる。本来なら理性的であるはずの人物がパニックに陥らざるを得ない状況下に置かれることによって、ただでさえ常識はずれな“怪物”の存在を見てしまったという証言を、尚更誰にも信用されない状況になってしまう理不尽さが面白い。誰からも狂人扱いされる主人公が、唯一真実を話し、救世主であったことが判明するラストも、ニヤリとさせられるまさにトワイライトゾーンらしい一遍。最後の最後に再びダン・エイクロイドが登場し、またまたニヤリとさせる構成も堪らない。あまりの面白さに、これ以前のエピソードの印象が一気に消し飛んでしまう弊害もなきにしろあらずだが、これ一遍だけでも本作を観る価値ありかと。
気のせいにしたくても、向こうからやって来る
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飛行機に乗ると必ず思い出すエピソードですねぇ、コレ。それだけ強烈。真似はした事ありませんがw
アート系では時折オムニバスを目にしますが、娯楽系でのオムニバスって確かに最近ないですねぇ。