1985年 アメリカ映画 91分 アクション 採点★★★★
もう脱したとは言い難いですが、私が思春期に突入していた頃の映画館は、筋肉と血飛沫に彩られた作品ばかり上映しておりましたねぇ。アクション映画は、ほぼイコール筋肉。おかげさまで、筋肉さえあればどんな事も出来るんだと勘違いさせられたもので。3日で飽きて押し入れに放り込まれることになるトレーニング機器を、夢を見ながら購入させられたもので。
【ストーリー】
かつての部下たちが殺されていく中、元陸軍特殊部隊隊長メイトリックスは何者らからの襲撃を受け、愛娘を誘拐されてしまう。自身も捕えられてしまったメイトリックスの前に現れた首謀者は元南米某国の大統領で、彼の要求は現大統領の暗殺であった。現地へと向かう飛行機に乗せられたメイトリックスだったが、そこから脱出。飛行機に乗っていないことが判明する11時間後までに、娘を救出せねばならないメイトリックスは…。
いきなりでなんだが、この作品はシュワルツェネッガーじゃないと成り立たない。そもそもシュワルツェネッガーは、立っているだけで荒唐無稽だ。その盛り過ぎの筋肉にしろ、岩石を直接掘ったかのような輪郭にしろ、矯正される事のない訛りにしろ、全てに於いて映画内の常識や世界観を破壊してしまう。例えば、庶民の日常生活を描く作品の隅っこにでもシュワルツェネッガーを立たせただけで、日常感は消えうせてしまう。
だが逆を言えば、どんなに荒唐無稽な設定であっても、シュワルツェネッガーがいれば妙に納得をしてしまう。未来から来た殺人マシーンだろうが、宇宙人と素手ゴロで殴り合いをしようが、シュワならありうる。そうであってもおかしくないという説得力がある。本作のように、いきなり巨大な丸太を軽々と抱えながら登場しようが、娘がアリッサ・ミラノであろうが、電話ボックスや車を素手でひっくり返そうが、シュワなら出来て当然なのだ。ポルシェに追い付いてしまうドライビングテクニックや、銃の腕前、危機察知能力など筋肉とは全く関係のない部分であっても、「もう、あの身体だから」で済む。M60E3の弾がいつまでも無くならなかったり、敵兵がマネキンだったりするマーク・L・レスターの雑な仕事振りすら、シュワがいるだけで相殺される。そんな映画としては残念な個所も少なくない作品ではあるが、シュワルツェネッガーブランドが誕生した記念碑的作品であるし、その後の筋肉映画を確立させた立役者でもあると言う意味で、高く評価しておきたい作品。あ、今回はブルーレイでの観賞だったんですが、作品としては評価できるが商品としてはとても評価できる物じゃなかったので、御注意を。
いつもならこの辺で役者の事をダラダラと書いてるんですけど、もうこの作品については「シュワ!」で済んでしまいそうな気が。過度な苦悩が似合わず、苦難と言ってもせいぜい大勢に囲まれるか後ろ手に縛られる位で、それもすぐに「フンガッ!」て脱しちゃうシュワだからこその作品。確かに『マッドマックス2』のウェズに次ぐハマり役を得たヴァーノン・ウェルズや、後に『プレデター』でも組む“黒い筋肉山脈”ビル・デューク、ちょこちょこシュワと絡む『ニア・ダーク/月夜の出来事』のビル・パクストンらが出演しているが、全体的に“シュワルツェネッガー”でまとめれば収まる感じも。
因みに、エンディング曲の“WE FIGHT FOR LOVE”はパワー・ステーションが。デュラン・デュランのジョン・テイラーとアンディ・テイラーに、シックのトニー・トンプソン、そしてロバート・パーマーが結成した伝説的ユニットなんですが、元々の構想では曲毎に様々なボーカリストを招く予定だったものを、あんまりにもロバート・パーマーが素晴らしかったので、彼一人を招いてアルバムを製作。アルバムのみの参加を表明していたロバート・パーマーはその後のツアーには参加せず、候補の一人であった元シルヴァーヘッドのマイケル・デ・バレスがツアーボーカリストに。この曲もマイケル・デ・バレスがボーカルなんですが、まぁロバート・パーマーの艶を求めるのは酷なんでしょうけど…って感じに。
そう言えば、続編を待望されながらも遂に作られる事のなかった本作。続編用の脚本こそ完成していたそうですが、シュワが気に入らずボツに。その後、その脚本はアレコレ経過して『ダイ・ハード』になったとか。で、リメイクの話も出ているような本作。ロシアのアレとは別に。ただまぁ、先に挙げたように本作は“シュワ!”で成り立ってる作品なので、そこらの筋肉を連れてきた所で、何の変わり映えも無い単なるアクション映画にしかならないと思うんですよねぇ。それでもどうしてもリメイクを作りたいってのなら、立ってるだけで世界観を壊しかねない異彩を放ち、尚且つ計算高いしたたかさを兼ね備えたウィル・フェレルを個人的には推薦しておきたいですねぇ。間違いなく凄い作品にはなるはずですから。
結構丈夫な娘の肋骨
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
「あぁ、これはもぅそういう映画なんだ」
と楽しんで劇場を後に出来たものですいや懐かしい。
その作品の説得力を全て背負える人材、ってのはハリウッドでは減ってしまいましたよね… VFXがいくら進歩したって、と私も思うんですがしかし
> ウィル・フェレルを個人的には推薦
って、そりゃ反則ッしょ!?(笑)
シュワという反則ど真ん中のキャラがいたからこその作品なんですよねぇ。それを無視しちゃ作れない。じゃぁリメイクするとして、シュワ並みに存在が反則なキャラというと…やっぱりフェレルしか浮かばないw
最近ではアンジーのような腕の細い女優が、CGやらVFXで超人の役をやってますからハナから説得力もクソもなく嘘話を前提として観るカンジです。
観る側もアンジーVSプレデターでも許す客層に変わったんでしょうか^^
画質はシーンによってまちまちだし、音質は広がりにも厚みにも乏しい上に、吹替えも入っていないどうしようもない商品ですけど、シュワが輝きに輝いた作品ですよねぇ。
なんかこう、映画自体を破壊しかねないほどの存在感を発する役者ってのも、少なくなってきましたねぇ。。。