2006年06月23日

ジャック・ブル (The Jack Bull)

監督 ジョン・バダム 主演 ジョン・キューザック
1999年 アメリカ映画 116分 西部劇 採点★★★★

「正義」だ「権利」だと騒ぎ立てた割には、自分にとって不都合な裁定が下されれば「不公平だ」と騒ぎ出す。どんな“公平”を基準にした“不公平”なのか?それぞれの主張にはそれぞれの都合があるわけだが、正義や権利は必ずしも自分にとって都合のいい結果を生むとは限らないもの。その裁定と必ず伴う犠牲を受け入れて、初めて己の主張を貫いたと言えるのではないだろうか?

【ストーリー】
悪徳大地主のバラードがのさばるワイオミングの田舎町。判事も保安官も弁護士も彼の息がかかっており、誰も彼の横暴を止める事が出来ないでいた。そんな中牧場主のミールは、法外な通行料のかたに取られていた愛馬がバラード一味に傷つけられたのに怒り、法律も味方をしない中、孤立無援の戦いを挑む。

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無法の町で正義を求め己の正義を命を懸けてとことん貫き通した男の実話を基にした、ジョン・キューザックが主演と製作総指揮を兼ねたTV映画。「たかだか馬とインディアンを傷つけられたくらいで」と誰にも相手にされないのだが、生活の糧であり“誇り”の象徴である馬と、人種がなんであれ友人に変わりのないインディアンに対する友情を守り通す為に戦い抜いた主人公の姿に、心を強く打たれる。求めた正義に伴う犠牲、たとえそれがいわれなき罪であっても、「自分の行動が招いてしまったこと」と受け入れる展開には、涙を流さざる得ない。主張を貫くばかりではなく、その側面にも注力した深い作品である。
これといって個性がないのが個性とも言える、ジョン・バダム監督。『サタデー・ナイト・フィーバー』でブレイク後、『ブルーサンダー』や『ウォー・ゲーム』と80年代にヒット作を次々と繰り出すが、90年代に入り失速。最近はもっぱらTV映画を手掛けているようだ。本作ではその“個性のなさ”が功を奏し、オーソドックスな物語を下手に誇張せずじっくりと描いている。“たかがTV映画”と侮れない作品だ。

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作品選びの嗅覚が非常に鋭いのか、関わる作品にハズレの少ないジョン・キューザック。あまり似合うとは思えない西部劇での主演だが、己の信念を貫き、人種に囚われず、不正に立ち向かう姿は、大袈裟かもしれないがクリント・イーストウッドを髣髴させる。『ミスティック・リバー』において、あたかも自分の後見者候補を選別するかのように、それぞれが監督経験がありハリウッドとも一線を画す、ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコンを出演させた。しかし、作品選びの感覚、趣味の取り入れ方、そして決して娯楽感覚を忘れないスタイルの映画を作るジョン・キューザックが、案外一番近い場所に居るのかも知れない。30年後に期待。

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ジョン・キューザックと言えば、なんといってもお楽しみはジョーン・キューザック。
「実はジョンが女装しているんじゃないか?」と思えるほどの息の合った所が楽しみなのだが、残念ながら本作には出演していない。しかし、そこはキューザック一家。父親のディックが脚本と出演を兼ね、弟のビルもこっそり出演。キューザックだらけ。あまりのソックリさに、「隠し子?」とまで思ってしまった息子役のドレイク・ベル。ジョン・キューザックも他人とは思えないのか、『ハイ・フィデリティ』でも自身の少年役をやらせている。
製作総指揮を兼ねるオリバー・ストーン映画の常連ジョン・C・マッギンレーも、主人公の親友役を好演。いつもの小悪党ぶりが印象に強いので、いつ裏切るのかハラハラしましたが。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『宇宙戦争』で、見事なお出迎え演技を見せたミランダ・オットーは主人公の妻役。ブレイク前なので、“お出迎え”も控えめ。
そして本作の収穫は、ジョン・グッドマン。劇中唯一の公正無比な裁判官を熱演。いつもの人懐っこい笑顔は封印し、凛とした態度で作品を引き締める。その言葉一つ一つは非常に重い意味を持つのだが、最後に悪徳判事に語る言葉は悲痛ではあるが痛快。美味しいところを全て持っていってしまった感もありますが。

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重いのは見た目だけではない

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posted by たお at 03:27 | Comment(8) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これ、観たいです。でも、貸映画屋には無さそうですねぃ。

ところで、貴ブログにリンクさせて頂きます。宜しくお願いします。
Posted by sheknows at 2006年06月24日 03:28
sheknows様、こちらにもコメントありがとうございます!!
意外と西部劇コーナーにちょろりと置いてあったりしますよ♪まぁ、私も三軒探し回りましたが^^;
リンクの件、誠にありがとうございます!!
こちらからもリンクさせていただきますので、今後ともよろしくお願いいたします!!
Posted by たお at 2006年06月24日 20:56
リンクの件、快諾戴きありがとうございます。急所を突く鋭さに、いつも「おお〜!」と感嘆しつつ「おりゃ〜!」と喜びつつ、拝読しております。相互リンクまで頂き、本当にありがとうございます。こちらの方こそ宜しくお願い致します。

目指すは西部劇コーナーっすね、ウス。
Posted by sheknows at 2006年06月25日 07:56
sheknows様ようこそ♪
ウチなんかとリンクすると、sheknows様の品位が疑われるかもしれませんが、よろしくお願いしますw
Posted by たお at 2006年06月25日 19:11
初めまして
楽しく拝見させて頂いております。
映画の内容を検索しておりましたところ
貴ブログに辿り着きました。
豊富な写真に加え、内容のまとめ方もすばらしく
当方ブログからアクセスさせて頂きました。
事後報告となり申し訳ありませんが 取り急ぎご報告させて頂きます。
Posted by 大日さん at 2011年09月14日 12:17
大日さま、こんにちは!
あらあら、こんな所の記事をリンクして頂きまして、ちょっとばかし恥ずかしいですがありがとーございます!
基本的にはリンク等に関してはなーんにも考えていない性質ですんで、お気楽にどーぞ^^
Posted by たお at 2011年09月14日 15:07
ありがとうございます。
今後も拝見させて頂きます。
Posted by 大日さん at 2011年09月14日 18:44
大日さま、ご丁寧にありがとーございます!
こんな所ですが、これからも宜しくお願いいたします!
Posted by たお at 2011年09月16日 06:41
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