2008年 アメリカ映画 100分 ホラー 採点★★★
「肉を食べるってことは命を食べるってことだから、粗末にしちゃいけませんよ」って方向に教えを持っていくのは非常に正しい事だと思うんですが、動物愛護団体などが精肉過程を公開して「ホラ、残酷でしょ?気持ち悪いでしょ?」って主張を繰り広げ押し付けてくるのは、なんか独善的で下品だなぁと思う私。何を言われようが食べますけどね。
【ストーリー】
深夜の地下鉄の駅でチンピラに絡まれている所を助けた女性が行方不明になっている事を知った写真家のレオンは、彼女の最後の姿を撮った写真に写った謎の男が事件に関わっていると確信し、その男を追う。やがてその男に導かれるように最終列車に乗り込んだレオンは、男が乗客を精肉道具で殺戮する現場を目撃し…。
“読むスプラッター”として一世を風靡した『キャンディマン』のクライヴ・バーカーの原作“ミッドナイト・ミートトレイン 真夜中の人肉列車”を、狙い過ぎる傾向にある作品そのものよりも、その自信の根拠がイマイチわからない豪語っぷりに話題が集まる感がある北村龍平がメガホンを握り映像化した、お肉屋さんホラー。
大都会の人間社会から身を隠すように存在する闇の種族の世界の、その僅かに交わる境界線を舞台に、闇の種族への食料調達を生業とする人肉解体工と写真家との戦いを描く一本。ハンマーで殴られた勢いで回転する身体から眼球が飛び出していく様をスローで撮ったりと、到達点がギャグの域に達しているやり過ぎ描写も少なくないが、人間社会に異世界がひっそりと隣接するバーカーらしい世界観を、思いのほか丁寧に描き出した本作。闇の種族の造形がなんともあんまりだったり、両種族の交わり具合に広がりが感じられなかったりと不満も少なくないが、別世界に近づく毎に常軌を逸していく主人公の姿など雰囲気は決して悪くない。ただまぁ、最終的に肉弾戦に持って行ってしまういつもの調子に、若干の呆れかえりもなきにしろあらず。
主役の写真家に扮しているのは、ブレイク直前だった『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』『バレンタインデー』のブラッドリー・クーパー。人肉解体業を受け継ぐにはなんとも頼りないが、その心のこもっていない作り笑いが似合う優男が常軌を逸していく様は、なかなか見応えある。まぁ、狂気を孕んだ時のレイフ・ファインズにどんどん似ていくだけっちゃぁそうなんですが。
また、何も喋らない時が一番魅力を発揮すると再確認させてもらった『監獄島』のヴィニー・ジョーンズや、なんか海老名家に紛れ込んでそうな『アイアンマン2』のレスリー・ビブ、出てくるだけで作品にゲテ風味を漂わせるようになったブルック・シールズ、サム・ライミ作品のボーナスキャラであるテッド・ライミなど、なんというか支離滅裂なキャスティングが魅力の本作。中でも異彩を放っているのが、後にブラッドリー・クーパーと『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』で共演することになるクイントン・“ランペイジ”・ジャクソン。格闘家らしい役柄と活躍で、出しゃばり気味のインパクトを。なんとも謎なキャスティングではありますが、ゴジラにドン・フライを出したのと同じような趣なんでしょうねぇ。
人間は肉袋のようなもの。開けてみないと何が入っているか分からない。
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