2010年 南アフリカ映画 100分 アクション 採点★★
どんな映画にしろ登場人物にしろ、前日譚というかバックグラウンドってのがあるもんですが、そこをじっくり描かないのは、わざわざ時間を掛けて描くまででもないからだったりするんですよねぇ。数行の字幕で済みますし。

【ストーリー】
民間企業により運営され、囚人同士の殺し合いをTV中継しているターミナル刑務所に収監されたカール。やがてその殺し合いはルール無用のカーレースへと発展していき、カールもレーサーとして参加することに。だが、カールの証言を恐れるギャングのボスのマーカスがカールの首に高額の懸賞金を掛け…。

もともとが風刺とケレン味が持ち味だった低予算映画を、その面白味を全て削ぐ形でリメイクされてしまった『デス・レース』の前日譚を描いたオリジナルビデオ作品。アイディアは面白いが、それを描く才能がイマイチ追い付いてきてない感のある『カオス』のトニー・ジグリオの脚本を、『弾突 DANTOTSU』のロエル・レイネがメガホンを握り、ポール・W・S・アンダーソンが製作に噛んでいる、この顔触れを見るだけでもある程度の覚悟が必要な一本。
デス・レースと前作では既に死んじゃってたフランケンシュタインの誕生秘話を描いた本作。思いのほか派手な見せ場と、劇場映画となんら遜色のない画面作りに驚かされるが、レース開始までがなんとも長い。思う存分水増ししたかのような中盤をなんとかやり過ごし、ようやくレースが始まったかと思えば、レース自体は前作の焼き直しのような変わり映えのなさで、そっからはバタバタとフランケンシュタインを誕生させて終了の慌ただしさ。刑務所ものの割に善人がやたらと出てくるので緊迫感もなく、前作と同じキャラクターを登場させるも、キャラが若干変わってたり、収監経緯が分からなかったりで前日譚らしさがなかったりも。そもそも、オリジナル版での伝説的キャラとはいえ、リメイク版では全く活躍していないフランケンシュタインの誕生秘話を描く意味合いが分からない。4勝して死ぬまでを描いた方が面白い気もしますし。まぁ、その辺のバランスの悪さも、トニー・ジグリオの持ち味なんですが。

大火傷を負う以外は結構快適な囚人生活を送ってる主人公に扮するのは、『沈黙の傭兵』『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』のルーク・ゴス。元ブロス。マット・ゴスは今何処?
その他にも、『サロゲート』『チャックとラリー おかしな偽装結婚!?』のヴィング・レイムスや、刑務所映画にはもれなく付いてくる『マチェーテ』の我らがダニー・トレホさん、全身に漂う下品な感じが堪らないローレン・コーハンなど、ビデオ作品に映画っぽさを醸し出させる顔ぶれが出演。
そんな中でも一番の見所は、もちろん『必殺処刑人』『ヒッチャー』のショーン・ビーン。ショーンを観たいが為だけに手に取った作品ですし。ギャングのボス役という、いささか不安を残す大役に挑戦するショーン。一人だけ楽しそうにサッカー話に興じる出だしから、なんか物語に混ざり切ってません。でも、使えない甥を銀行強盗計画に捻じ込み、まんまと計画失敗させるあたりから本領発揮です。捕まった主人公の証言を恐れ殺害指令を出すも、誰も言う事を聞いてくれず、「アイツ、良い奴ですし」と口応えまでされます。ボスなのに。「殺したら100万ドルあげる。でも、48時間以内に殺せなかったら、お前を殺す」と、言ってる事が無茶苦茶です。それじゃぁ、誰も言う事を聞きません。ヒロインにまで「自由にしてやるからアイツを殺せ」と命じますが、そもそもそんな権限があるように思えないので、あっさり裏切られてしまいます。ボスだと言うのに不憫です。仕舞いには自宅で銃を向けられ、とっても悲しそうな顔をしちゃいます。可哀想で仕方がありません。なんか日々の酒代稼ぎのような作品選びが目立ってきたショーンですが、こんな作品でもショーンらしさを発揮するなんて偉いなぁ。だから、たまにはちゃんとした映画に出ろ。

“早く帰れる”ってのが作品選びの基準なのかも
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そのせいなのか、少々、馴れ合い感が・・・
それにしても、ショーン。
ショーンが演じるならこんな駄目ボスかな?と、まるで当て書きされたようなキャラで、あははと苦笑いです。
評判の良さそうな「Black Death」はどんな出来なのか、とても気になります。
この際、当分中世コスプレ物で頑張ってもらってもいいです(笑)
凶悪犯しかいないはずなのに、基本善人しか出てこない刑務所でしたねぇ^^;
ショーンは、まるで現場で自ら脚本を書き直したかのような、いつものショーンでw
“Black Death”ですが、きっとペストをまき散らしたであろう人物をあと一歩まで追いつめるも、追いつめただけで終わってしまういつものショーンになっちゃわないかと不安半分、期待半分www