2009年 イギリス映画 103分 ドラマ 採点★★★
「一年ってあっという間だなぁ」と感じ始めて早十数年。この調子で年ばかり過ぎてったら、もうあっという間にお爺ちゃんになっちゃうなぁと思う今日この頃。どうせお爺ちゃんになっちゃうなら、『誘拐犯』のジェームズ・カーンみたいに「年寄りを見たら生き残りだと思え!」ってセリフが似合うお爺ちゃんになりたいもんですが、たぶん猫を膝の上に乗っけてポケーっとしてるお爺ちゃんになってしまうんだろうなぁと。
【ストーリー】
かつては北アイルランドでIRA相手に激戦を繰り広げていたハリーも、妻子を失った今は親友とのチェスだけが楽しみな余生を送っていた。そんなある日、その親友が街の不良に惨殺される事件が発生する。正当防衛を主張する不良グループになかなか手を出せない警察の姿勢に業を煮やしたハリーは、一人銃を片手に立ち上がるのだが…。
マイケル・ケインでハリーと来れば否応がなしにハリー・パーマーを彷彿してしまうが、ハリー・パーマーのその後ってよりは、やはり王道の『狼よさらば』の色に近い本作。ただ、無軌道な若者に対し、殺しの技に長けた老人が鉄槌を下す部分にカタルシスを感じさせるタイプではなく、唯一の友を失った復讐を果たした結果、行きつけのパブまで失ってしまうという、イギリス人にとって最悪の結果を導いてしまう復讐の悪循環と、信念なき暴力の不毛さと司法への不信を問うてる部分に面白味がある作品に仕上がっている。
作品のムードにそぐわないどころか、余韻までぶち壊しにしてしまいそうなエンド曲の選曲には難があるものの、犯罪密集地区となった寒々しい舞台を背景に強烈な暴力描写を挟みつつ、生き甲斐も喜びも感じられなくなっていた老人の姿をじっくりと描く様は新人らしからぬ落ち着いた手腕で、ちょっと今後が楽しみな監督になりそうな雰囲気が。ちなみに、製作者の一人として『キック・アス』のマシュー・ヴォーンも名を連ねている。
イーストウッドにしろスタローンにしろ、最近一時代を築き上げたスターが総決算的な作品を作る傾向にある気がするが、本作のマイケル・ケインもそんな感じがちらほら。まぁ、役柄がそんな感じにさせてしまってるんでしょうし、最近は『インセプション』や『プレステージ』なんかの“頼りになる執事”的役柄ばっかり観てたような気もするんで、本作のように“戦える男”に扮したマイケル・ケインを久々に観れた嬉しさから尚更そんな感じを受けたんだろうなぁと。どんよりと曇った目をした老人から、一気に殺し屋の目に豹変するマイケル・ケインは、やっぱり問答無用に痺れるほどカッコ良い。あまりにカッコ良かったんで、今これを書きながらマッドネスの“マイケル・ケイン”聴いてます。
『シャッター アイランド』のエミリー・モーティマーや、『バイオハザード II アポカリプス』のイアン・グレン、『必殺処刑人』のショーン・ハリスなど曲者が揃った本作だが、ワケアリのバーテンダーに扮した『センチュリオン』のリーアム・カニンガムの存在感は、そこから頭一つ抜きん出た感じが。犯罪者視点で描く作品であれば、相当頼れるキャラになったのかも。
老後の楽しみとして、チェスのほかに“殺し”が加わりました
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