キック・アス (Kick-Ass)

監督　マシュー・ヴォーン　主演　アーロン・ジョンソン
2010年　イギリス／アメリカ映画　117分　アクション　採点★★★

とどのつまり殺人者であるヒーローを、どんな世界に置くかってのも作り手の悩みどころなんでしょうねぇ。たとえば、幸楽の出前に出ていた眞がゲルショッカーに捕まって改造されて帰ってきちゃう話なんて、ビックリこそするが物語としては成立しなさそうですし、ゴッサムシティ以外で見かけるバットマンは、きっとただの変人でしょうし。まぁ、試したくなる気持ちも分からなくはないですが。



【ストーリー】
冴えない学園生活を送るアメコミ好きのデイヴは、ネット通販で購入したヒーローコスチュームに身を包み、“キック・アス”として悪党退治に繰り出す。無論なんの力も持たないデイヴなので、街のチンピラのボコボコにされてしまうが、その模様を録画した動画がネットで話題を呼び、一躍時の人に。一方、地元マフィアのボスは、最近続いているトラブルの原因がキック・アスにあると勘違いし、抹殺指令を出す。しかし、そのマフィアを狙っていたのは、彼らに恨みを持つ“ビッグ・ダディ”と“ヒット・ガール”の父娘ヒーローで…。



同名コミックと同時進行で製作された、『レイヤー・ケーキ』のマシュー・ヴォーン製作・脚本・監督によるヒーローアクションコメディ。ずらずらと並ぶ製作者の中には、ブラッド・ピットの名前も。
コミックのページをめくるだけの側だった冴えない少年が、無力ながらも意を決しヒーローとなり、やがてコミックの世界さながらの殺戮の中に巻き込まれていく様を、脱童貞人生を邁進する模様と容赦ないバイオレンス描写で描いた本作。ヒーローになり切ることで自信を取り戻していく物語は定番ならではの面白さだし、世間からズレまくったビッグ・ダディのキャラも良い。なにやら世間で物議を醸したらしいヒット・ガールの活躍も、低年齢化と過激化が進むコミックヒロインの象徴云々以前に、単純に「ヒャッハーイ！」となるカッコ良さと可愛らしさを堪能。現実社会に近い位置にヒーローを置いてみた世界観自体も、なかなか興味深い出来となっている。
ただ、主人公であるキック・アスの立ち位置がどうにもシックリこない。『ディフェンドー　闇の仕事人』のディフェンドー同様、意志の力でヒーローとなる事を選んだ主人公だが、最終的に銃器を手に取る所に大きな違和感が。もちろん、銃を持つ相手に銃を取るのは当然のことなのだが、“何もできない”のがキック・アス最大の能力なんじゃないのかなぁと。なんと言うか、ヒーロー世界と現実社会の狭間に立つ存在みたいな。頑なに銃を手にすることを拒み、己のヒーロー像を貫いたディフェンドーのスタイルの方が個人的に好みって問題もあるのだが、銃を手に殺人者として向こう側へ行っちゃったら、ただの弱いヒーローじゃんって不満が。犯罪や暴力を前に“見ているだけ”である大衆に対する怒りが原動力の一つであるにもかかわらず、その大衆によって時の人に祭り上げられることに対するリアクションがないなど、最終的にどこに向かいたいのか分からない構成のアヤフヤさも辛い。まぁ、『ウォンテッド』と同様に、強いヒロインを前に主人公が右往左往するだけってのが、この作家の作風なのかも知れませんが。



キック・アスに扮するのは、『シャンハイ・ナイト』でチャップリンに扮していたアーロン・ジョンソン。基本的には男前。『オフロでGO!!!!!　タイムマシンはジェット式』のクラーク・デュークや、インクレディボーイ並みの理屈のズレ具合に至らなかったのが不満の一つでもあったレッド・ミストに扮した、『紀元１年が、こんなんだったら!?』『スーパーバッド　童貞ウォーズ』のクリストファー・ミンツ＝プラッセなど本物が揃っているので、やっぱり冴えないオタクに扮した男前って感じが。
その他に、『シャーロック・ホームズ』のマーク・ストロングや、久しく劇映画では見ていなかったが『タイタンの戦い』に続いて映画復帰したエリザベス・マクガヴァン、これまた久しぶりである『ドロップ・ゾーン』のヤンシー・バトラーに、チョロリと顔を出す『トランスポーター２』のジェイソン・フレミングなど、なかなか目を離せない顔ぶれが揃った本作だが、見所はやっぱりヒット・ガールに扮した、『グレッグのダメ日記』『（500）日のサマー』のクロエ・モレッツ。リメイク版『ぼくのエリ　２００歳の少女』も控えているほど近年引っ張りだこの彼女だが、その人気ぶりも納得の大活躍。作品によっては大人びた色気すら発する事がある彼女だが、本作では扮装と内斜視具合もあってか、非常に幼い感じが。その幼さが残った少女が、『ウォンテッド』の“フォックス・ザ・ビギニング”ばりにバンバカ人を殺すってんで問題視もされたらしいが、なんかもう、そんな色んな事を考える余裕を与えないほどカッコ良いし可愛いし、そんなこんなで彼女ばっかり観ていた印象も。オジサンだから良く分からないんですが、これがあの“萌え”ってやつですかい？それとも、オジサンまた勘違いをしちゃいましたかい？
そんなクロエ・モレッツと、念願だったバットマンっぽいアメコミヒーローコスチュームに身に纏って、非常にご満悦そうだった『魔法使いの弟子』のニコラス・ケイジが結構良かったので、★ひとつオマケで。まぁ、ニコケイは『ゴーストライダー』でヒーローを演じてましたが、あれはヒーローの間は顔が映らない代物でしたので。


あらゆる意味で、親バカ

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
　　　

　　　　　　　　

　　　　　　　　

Comments

主人公の存在感があまりないんですよね。作り手もヒットガール溺愛って感じがしまして結構脚本の次点で適当に扱われちゃってる気がしました笑
主人公の発想とかは嫌いじゃないのでヒットガールとデイブ別々の作品でしっかり作ってくれたら良かったのになと思います。
今作の感じだとどうしても主人公に（アーロンにともいえるかも）同情してしまって最終的に素直に楽しめず。ラストに向かってのヒットガールの活躍でだいぶ盛り上がりはしますけど、作品として腑に落ちないというか。

確かにニコラスケイジは嬉々として演じていましたね!

Posted by ソク at 2011年03月05日 03:07

ソク様、こんにちは！
「結局キック・アス自体はどこに行きたいんだろー？」って疑問もちらほらと＾＾；
テーマ自体は決して悪くないんですが、どうもいまいちシックリこなかったってのが正直な感想で。

Posted by たお at 2011年03月05日 15:19

うんうん。私も全く似たような感想でしたお。
ただですねえ、こないだハロウィンの時に仮装パーティ行ったんですけど、私の連れが、ビッグ・ダディそっくりのバットマン・コスプレだったんですよ。
おかげで★2つオマケしたくなっちゃいました！
来年は私、ヒットガールの格好しようかな〜♪
見たいべ？

Posted by とらねこ at 2011年03月05日 20:13

TB ありがとうございます

たしかに キックアスよりも、ヒットガールのほうが
キャラ的に 大きかったですね

とはいえ かなり楽しめた映画でした

Posted by リバー at 2011年03月06日 11:39

途中から、キック・アスちゃんは、すっかり存在感をなくしてしまいましたが、それをすなり受け止めてるに十分な、クロエちゃんでした。
アーロン・ジョンソン君、チャップリンの役をしてたんですか。似合いそう。
これのちょっと前に、「ノーウェアボーイ」の見事なジョン・レノンを見たんで、そっちの印象が強いのですが、実在の人物づいてますね。
キック・アスは違います！はい。

Posted by sakurai at 2011年03月06日 14:34

とらねこ様、こんにちは！
やっぱりその「見たいべ？」には、「見とうございます！」とお答えするのが大人の対応ってやつでしょうか？ｗ

Posted by たお at 2011年03月06日 14:44

リバー様、こんにちは！
コミック自体は読んでいないので元からそういう扱いなのか、映画にする際に存在がでかくなったのか不明ですが、まぁヒットガールありきのような作品にも＾＾；

Posted by たお at 2011年03月06日 14:48

sakurai様、こんにちは！
一般社会との接点として、もうちょっとキック・アスには葛藤してもらいたかったなぁと思いつつ、一般社会とかけ離れたヒットガールにホレボレする作品で。
確かに、アーロン・ジョンソンって実在の人物で印象を残す若手ですねぇ。

Posted by たお at 2011年03月06日 14:50

>“何もできない”のがキック・アス最大の能力
これがアパトー組が作ってたら、何にも出来ない彼がドジって自滅する事で、逆に意表を突いた攻撃になるという、ギャク・コメディでお約束の演出で見せるところなんだろうな、と思っちゃいました。

次回作では、クリストファー・ミンツ＝プラッセのレッド・ミストが大活躍してくれる事を期待してます♪

Posted by 哀生龍 at 2011年03月06日 23:20

哀生龍さま、こんばんは〜♪
何も出来ないんだけど足掻きぬく、そんな姿を期待しちゃったんですが、結局ヒットガール任せに＾＾；
亡き父の復讐を誓う新悪役という、コミックの王道を次回作でどういじるのか楽しみではあります。

Posted by たお at 2011年03月07日 02:32

そうそう、キックアスが銃を持った時点でなんか違う、と思いました〜。　
でもまあ、そのおかげで最後にはヒット・ガールを助けられたから、文句はいえないかな、と思ったり。。。
いずれにしても、彼の存在は微妙でした〜(^^;)

Posted by りら at 2011年03月07日 21:53

りら様、こんばんは〜♪
たぶん、キック・アスが頑張ろうとどうであろうと、ヒットガールは自分で何とかできたんじゃないのかなぁとも＾＾；

Posted by たお at 2011年03月08日 17:40