1998年 アメリカ映画 103分 SF 採点★★★★
昔の思い出や若い頃の自分が出てくる夢を見て目を覚まし、若干寝ぼけたまま洗面台の鏡を見ると、愕然としますよねぇ。「なんだ?何十年も昏睡してたのか!?」って思うほど。まぁ、完全に覚醒すれば現状を受け入れ「あぁ、いつもの私だ」となるんですが、年々その受け入れるまでの時間が長くなってきたような気も。
【ストーリー】
バクー人の住む惑星を調査していたアンドロイドのデータ少佐が、突如共に調査をしていた地球連邦とソーナ人に向け攻撃を開始する。報告を受けたピカード艦長らはエンタープライズ号で現地を訪れ調査を開始、その中でこの惑星は不老不死の効果をもたらす特殊な放射線に包まれている事が判明する。やがて、ソーナ人がバクー人を強制移送し、この惑星そのものを壊滅しようとしている事を突き止めたピカード艦長らは、地球連邦の命令に背き、この惑星を守る決意を固める。
いまだカルト的な人気を誇るTVシリーズ“宇宙大作戦”の新シリーズというプレッシャーの中、魅力的なキャラクター達とクォリティの高い物語の数々で新たなファンの獲得に成功した“新スタートレック”の劇場版第3弾。前作『ファースト・コンタクト/STAR TREK』でもメガホンを握ったライカー副長役のジョナサン・フレイクスが、今回もメガホンを握る。
不老不死の惑星をめぐって、“多数の為なら少数を犠牲にしていいのか?”を問う本作。とは言っても、そんな大それたキレイ事を押しつける嫌味な感じは全くなく、“そういうことを考えてみるのもいいよね”って感じのいつものスター・トレックで安心。印象が前後編に分けられたTV長編みたいでもあるが、下手に劇的に変化をさせて別物になるよりは、これくらいがちょうどいい。完璧な善人として描かれるエンタープライズのクルーやバクー人の描写も、嫌味がないこともあり、逆に観ていて心地が良い。私がTVシリーズのファンだからってのもあるかも知れないが、主人公らが善悪の狭間で揺らがれてしまうと、そもそもの世界観まで揺らいでしまうので、その辺はご容赦して頂きたい。強いて不満を言えば、エンタープライズ号の造形美を堪能できる描写の少なさだが、まぁ大した問題でも。
ピカードやデータを始めとしたキャラクターが熟成し切ったこともあり、キャラ遊びが豊富なのも本作の魅力。ピカードにカツラをかぶせてみたり、ラフォージの視力は回復するのにピカードの髪は生えなかったりと、若干ピカードの頭に遊びが集中している気もしないでもないが、そこで遊びたい気も分かる。私のようなファンが喜ぶのは当然のことだが、一見さんお断りのような敷居の高さは全くなく、技術の進歩を突き詰め過ぎて一周し中世の様な生活を送るバクー人ら魅力的なキャラクターが多く登場する、アクションありロマンスありの、クラシカルな味わいもある宇宙活劇として誰でも楽しめる内容となっている。ファンとしては、本作を足がかりにこの前後の作品を観てもらえたら嬉しいなぁとも。
エンタープライズ号艦長のジャン=リュック・ピカードに扮しているのは、若い映画ファンらには『X-MEN:ファイナル ディシジョン』などのプロフェッサーX役として有名なのであろうが、私にとってはやっぱり女声で迫って来たかと思えば、突然口から鼻から大量の血を噴射して驚かした『スペースバンパイア』が真っ先に浮かんでしまう、パトリック・スチュワート。もうピカード役はすっかりお手の物で、細かいユーモアを挟みつつも芯のブレない、信念の男ジャン=リュック・ピカードを好演。ただ、やっぱり気になるのは“不老不死と若がえりの力をもってしても、なぜ髪が生えないのか?”ってところ。色々考えてみたんですが、“@そんな力じゃどうすることも出来ないほどに毛根が死滅”、“Aもともと毛根がない”、“Bパトリック・スチュワートが頑なにカツラを拒んだ”のいずれかじゃないかと。その辺は誰か会う機会があったら聞いてみてください。
その他にも、監督業の忙しさもあってか見せ場の少ないものの、攻撃を受けると必ずメインブリッジで吹き飛んでいたり、目を離すとすぐにカウンセラーといちゃついたりと、お約束だけはきっちりと守るライカー副長役のジョナサン・フレイクスや、元々はスポックに代わるイロモノながらも、日々人間に近づくために努力するピノキオ的キャラ設定と、その努力に全く悲壮感が伺えない前向きさで一躍人気者となるデータ少佐役のブレント・スピナーなど、お馴染の顔ぶれが期待通りの活躍をし、大いに楽しませてくれる。
また、お馴染のキャラクターだけではなく、「ゴメンなさい」の一言が何百年も言えないアンチエイジングに忙しい悪役のソーナ人に扮した『薔薇の名前』のF・マーレイ・エイブラハムや、『ペイバック』のグレッグ・ヘンリーも分厚いメイクながらも印象的。こういう役は、やっぱり上手い人じゃないと成り立たないなぁと。
200歳以上の歳の差なんてものともしない、男の中の男
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