2011年01月28日

レバノン (Lebanon)

監督 サミュエル・マオズ 主演 ヨアヴ・ドナット
2009年 イスラエル/フランス/レバノン/ドイツ映画 90分 戦争 採点★★★

戦争がなんで恐ろしいのかってのを端的に言えば、人が死ぬから。殺さなきゃならないから。今ここでサブタレ書いてる私でさえ、戦争になれば軍服を着させられ銃を持たされ戦地へポイ。外見どころか中身も何にも変わってない、いつもの私なのに、敵に向かって銃を構えて撃たなきゃならない。全然知らない人なのに。じゃないと、こっちが殺される。全然知らない人から。理由も理屈も通用しない状況下で、いつもの自分が人を殺さなきゃならない。それが怖い。

leba4.jpg

【ストーリー】
レバノン領内へと侵攻する、イスラエル軍の一台の戦車。中には4人の兵士。初の実戦の為、引き金を引けない砲撃手や、状況を把握できない指揮官など、戦闘に不慣れな彼らをしり目に状況は悪化の一途をたどり続ける。極限状態の中、肉体的にも精神的にも限界に近付いていく彼らは…。

leba2.jpg

背景が分かりづらいので、物凄くかい摘んで整理してみようかと。自分用にも。
元々中東では珍しくキリスト教徒が中心の国家だったレバノンを、第一次世界大戦後実質的な宗主国となったフランスが「ここまでがレバノンでござい!」とでかめに国境線を作成。結果、キリスト教、イスラム教共に複数の宗派が混在する国家に。50年代以降、周辺諸国の情勢不安や内乱などもあり、いつ爆発してもおかしくない状態となる。
で、1975年。ベイルートのキリスト教会で集会を行っていたキリスト教マロン派のファランヘ党に向け、イスラム教徒への軍事支援を行うPLO支持者らが発砲。これをきっかけに、内乱が本格化。警察はこの事態に対しさっぱり役に立たず、国軍も機能を喪失。当初は静観の構えを見せていたシリアだったが、PLOらが推し進める革命がイスラエルを刺激し、イスラエルによるシリア・レバノン攻撃を誘発しかねないと恐れ、レバノン政府の要請もあって侵攻。一時的に内戦は沈静化する。しかし、和平に失敗。シリア・マロン派・PLOは対立を激化させ、マロン派が“反シリア・パレスチナ”を旗印に結成したレバノン軍団とシリア軍との衝突を散発する。
そんな中、劣勢を強いられていたレバノン軍団はイスラエルの支援と介入を画策。シリアとイスラエルが結んでいた“レッドライン協定”をシリア側が破るよう誘導し、協定違反を名目にイスラエルが軍事介入。レバノン軍団の支援という形で、シリア対イスラエルの戦いが繰り広げられることに。
えらくザックリとした状況整理ですので、詳しくは各々で

leba3.jpg

で、そんなイスラエル軍が介入を始めた1982年を舞台に、監督自身の体験を基に描かれた本作。“戦車の中から見つめる戦争”という着眼点が新鮮。その限定された視点が、状況を把握できない混乱を観客が共有できる結果に。密閉された緊迫状態下というと『Uボート』を思い出してしまうが、あそこまでドラマチックな展開をするわけではない。国家の為でも信念の為でもなく、ただ戦場に駆り出されてしまった一般人が殺すか殺されるかの状況下において、恐怖し困惑し混乱する様をストレートに描き出している。声高らかに戦争の無常さを訴えているというよりも、引き金を引けないが故に同胞が死に、引いたら引いたで民間人を殺してしまう、そんな戦争のさっぱりスマートじゃない無様さをさらけ出しているようなナチュラルさが、逆に功を奏している。死が劇的なものではなく、そこらにゴロゴロと転がっている状況描写も上手い。
ただ、命を預けるのは遠慮したいグズグズな4人組を中心に、グダグダな指令系統と作戦という無様さを描くことでリアルさや観客と同様の視点を保ちたい意図は分かるのだが、その為にはもう少し過度な演出をしても良かったのかなぁと思う一面も。鉄に囲まれた密室であることが活かされていたとは然程思えず、温度や湿度、臭いなどの描写も控えめなため、緊迫感や圧迫感も控えめな感じを。この、微妙な肩透かし感も狙いであったのなら、まぁ成功したと言えるんですが。

leba1.jpg
ここのひまわり畑も、死体がゴロゴロ埋まってるんですかねぇ

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
blogram投票ボタン   人気ブログランキングへ

        

        

タグ:★★★ 戦争
posted by たお at 02:25 | Comment(0) | TrackBack(7) | 前にも観たアレ■ら行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/182798360

この記事へのトラックバック

スコープ越しの戦場 サミュエル・マオス 『レバノン』
Excerpt: ♪れっばっの〜ん れっばっの〜ん(『戦場でワルツを』より) 暮れに見た映画の紹介
Weblog: SGA屋物語紹介所
Tracked: 2011-01-28 20:00

レバノン
Excerpt: Comment: レバノン戦争、第一日目の惨状。 その年のヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したサミュエル・マオズ監督の作品です。 イスラエルのアリ・フォルマン監督が実体験を基に..
Weblog: ひでの徒然『映画』日記
Tracked: 2011-01-29 12:36

レバノン LEBANON
Excerpt: レバノン戦争に従軍したイスラエルの戦車兵4人を描く、09年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作。画面は狭い戦車内部と、砲撃手のスコープから見た映像のみで構成される。イスラエル...
Weblog: まてぃの徒然映画+雑記
Tracked: 2011-01-29 22:43

レバノン/LEBANON
Excerpt: これはレバノン戦争の、最初の一日を描いた物語。 カメラは、戦車内から外に出ず、物語は4人の戦車兵と、 彼らがスコープ越しに見る外部の光景のみで展開される。 狭狭苦しい戦車の中が、息苦..
Weblog: 映画通信みるみる
Tracked: 2011-01-30 14:43

mini review 11528「レバノン」★★★★★★★☆☆☆
Excerpt: 1982年のレバノン戦争を舞台に、極限状況に置かれた4人のイスラエル軍兵士の壮絶な体験を描き、第66回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した戦争映画。同戦争に従軍したサミュエル・マオズ監督の実体験を基..
Weblog: サーカスな日々
Tracked: 2011-06-17 13:18

レバノン
Excerpt: 1982年のレバノン戦争を舞台に、極限状況に置かれた4人のイスラエル軍 兵士の壮絶な体験を描き、第66回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した 戦争映画。同戦争に従軍したサミュエル・マオズ監督の実..
Weblog: だらだら無気力ブログ
Tracked: 2011-06-26 01:59

レバノン : リアルガチな…(出川先生的表現)
Excerpt:  オスプレイの沖縄配備に向けてのレールが着々と引かれております。広島市在住の私ですが、オスプレイの配備は個人的に賛成です(中国があれですから)。アメリカのキャンベル次
Weblog: こんな映画観たよ!-あらすじと感想-
Tracked: 2012-09-27 19:09