1987年 アメリカ映画 121分 アドベンチャー 採点★★★
やる事なす事大雑把で大胆なので、よく知らない人からは図太い神経の持ち主と思われがちですが、かなりの小心者である私。やる前も、やってる最中も、やった後しばらくもずーっとドキドキしっぱなし。そんなノミの心臓の持ち主なんで、人前で何かを発表したり、言いたくない事を誰かに言わなきゃならないって時は、相当自分を奮い立たせないと出来ない。そんな時うってつけなのが、音楽。会議前はえてして脳内で延々『Uボート』の“U96”か、P.I.L.の“Ease”が流れまくっております。若干危険なテンションになります。で、大失敗をやらかします。
【ストーリー】
アメリカ空軍のパイロットであるタックは物体縮小計画の特殊潜航艇に乗り込み、ミクロサイズになった後ウサギの体内に潜入する準備を行っていた。ミクロ化成功直後、そこへ突如産業スパイが襲撃。潜航艇の入った注射器と共に命からがら逃げ出した研究員は、気弱なスーパーの店員ジャックの体内に潜航艇を注入する。体内にタックがいる事を知ったジャックは、共に協力し、奪われてしまったミクロ化復元に必用なマイクロチップ奪還に向けて行動を開始するのだが…。
製作総指揮にスティーヴン・スピルバーグと、ハリウッドを引っかき回すだけかき回したジョン・ピーターズとピーター・グーバーの“ピーター・ピーターズ”、監督に『グレムリン』のジョー・ダンテを配して贈られたSFコメディアドベンチャー。
一見『ミクロの決死圏』の焼き直しのように見える本作だが、“体内にいる人”と文字通り内なる声の導きで自信を取り戻すスーパーの店員に主眼が置かれているので、いちいち比べる事自体御無体なことで。そんな情けないにも程がある気弱店員の活躍を、笑いありアクションありロマンスあり、そして結構見応えあるSFXを満載して描く本作。見せ場のバランスも非常に良く、難しい事を考えずに楽しむのにちょうどいい一本に仕上がっている。恋人の体内で自分の子供と対面するちょっと良いシーンなんかも挟んでますし。確かに、バックス・バニーとディック・ミラーが出ている以外にジョー・ダンテらしさを感じる事のない作品ではあるんですが、才気溢れる彼をメジャー監督の仲間入りにさせてやりたいというスピルバーグの親心が、いつもの暴走をセーブさせたのかと。放っておくと『グレムリン2/新・種・誕・生』みたいになっちゃいますし。まぁ、その暴走が魅力の監督なんですけど。
大冒険の末、明るい未来と新たなる冒険を匂わせて幕を閉じる本作。「一人前の男になれて良かったね、ジャック!」と観ているこちらも締め括りたいところなのだが、恋愛感情を宙ぶらりんにしたまま終わってしまうのは、ちょっと気になる所。おかげで私の中での脳内続編が、ドロドロの三角関係の末にタックとジャックが、血で血を洗う凄惨な戦いを繰り広げるバイオレンス巨編になっちゃってますし。ヒロインが赤子抱いてオロオロしてるの。で、最後は二人の墓の前に佇むヒロインの姿で終わるの。
主役の酔いどれパイロットのタックに扮するのは、『レギオン』『バンテージ・ポイント』のデニス・クエイド。その屈託のなさとタフっぽさは、アメリカ人男性のイメージが集結して形を成しちゃった感じ。肉体労働とか職人とか馬とかが似合う役者なんで、今回の空軍パイロットってのもハマる。逆に、病弱な芸術家とか猟奇殺人鬼とかはさっぱり似合いませんが。本作と翌年の『D.O.A.』での共演を経て、メグ・ライアンと結婚したのは有名な話。お似合いのカップルだったんですけどねぇ。
で、そのデニス・クエイドとの結婚後に絶頂期を迎え、離婚と共に転落を始めたメグ・ライアンだが、本作はその絶頂期の直前ということもあって強気ばかりが前面に出ている気配もあるが、ツンツンとはねる髪の毛と懐っこく愛くるしい笑顔がなんとも可愛い。なんというか、次世代型ゴールディ・ホーンのポジションをがっちりと手中に収めた感じもしたんですが、ここしばらくの迷走はなんともかんとも。どんな作品であっても、「とりあえずメグ・ライアンだけは可愛かったなぁ」と思えたもんですし、歳を取ってもダイアン・ウィーストみたいな存在になってくれたらなぁとも思ってただけに、この転落は残念。“可愛いおばちゃん”じゃぁやっぱりダメなんでしょうかねぇ。
また、実質主人公であるジャックに扮するのは、サタデーナイト・ライブのエドなど、ちょっと頭のアレなキャラを演じさせればピカイチであるマーティン・ショート。今回は頭こそとんがっていないが、お人好しながらも些細なことでいっぱいいっぱいになってパニックに陥る、お馴染のマーティン・ショートを披露。爆笑すると同時にイライラもするマーティン芸を堪能。
その他にも、今回はハミケツのモヒカンでもなければシュワに串刺しにもされないが、指から弾丸は飛び出てくる相変わらずのキャラ設定が光るヴァーノン・ウェルズや、黒づくめの二人組を追い掛けるわけでも怪しい隣人でもないヘンリー・ギブソンなど、曲者が脇を固めているのも楽しい。
これだったら、子供の顔を見ながら名前を考えられますねぇ
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