９６時間 (Taken)

監督　ピエール・モレル　主演　リーアム・ニーソン
2008年　フランス／アメリカ／イギリス映画　93分　アクション　採点★★★★

地元であっても嫌なのに、見知らぬ土地、ましてや外国なんかで警察や病院のお世話になりたくはないですねぇ。ただでさえ人見知りの私なのに、警察のお世話になるような状況に陥ってるってことは、敵に囲まれているようなものです。逆に、にこやかに近づいてきたりしたら、即詐欺師認定です。まぁ、失礼極まりない話なんですが。



【ストーリー】
パリ旅行中だった愛娘キムが、何者かに誘拐される。その一部始終を電話越しに聞いていたキムの父親で元凄腕秘密工作員のブライアンは、パリへ直行。事件発生から96時間が救出可能のデッドラインである中、これまで培った全てのスキルを使い、キムの捜索を始める。やがて事件の背後に巨大人身売買組織の存在が浮かび上がり…。



ベッソン軍団の一人、『パリより愛をこめて』のピエール・モレルによる、愛娘を奪還するためには手段を選ばぬ問答無用パパ大活躍の痛快アクション。製作と脚本は、もちろんリュック・ベッソン。
“オレ、実は元○○”という、いつものベッソン設定が光る本作。一応脚本にベッソンがクレジットされているが、きっといつものように「んでなー、んでなー、コイツは元凄腕のスパイでな、悪党をパパパパーってやっつけんねん！」と熱く語りながら走り書きした“ベッソン夢ノート”を、『キス・オブ・ザ・ドラゴン』などのロバート・マーク・ケイメンが必死に脚本としてまとめたのではと。
ストーリー自体は“家族に害を加えた悪党を主人公が鬼の形相で追い回す”という、ジャンルで言えば概ねセガール。これをセガールが演じていれば、いつものセガール映画で終わってしまう所なのだが、それをリーアム・ニーソンが演じているのがポイント。温厚な父親の顔と、冷徹な殺し屋の顔を使い分けられる彼だからこそ、娘を想う父親の強い愛情が表に出てくる結果に。また、ニック・ノルティとエディ・マーフィ達の倍あるんだからなんか余裕っぽい時間設定ながらも、電話越しに娘の誘拐を知る短いシーンの中で主人公の実力や性格を簡潔かつ完璧に説明したように、作品全体が無駄なくコンパクトに仕上がっており、そこに主人公の決断力の早さと技の凄味が加わることで、ダレ場の全くないスピード感が生まれることに。まぁ、タイトルになるほどタイムリミット感は元々ないんですが。
スピーディな展開と切れ味の良いアクション、そしてウェットになり過ぎず程良くブレンドされた親子愛の物語が一体となった本作は、数あるベッソン作品の中でも上出来の部類に入るのではないかと。



主人公である娘溺愛気味の元凄腕秘密工作員に扮するのは、『特攻野郎Ａチーム THE MOVIE』『愛についてのキンゼイ・レポート』のリーアム・ニーソン。娘を前にデレデレした姿から一変、ダークマンに変身してしまうんじゃないのかとハラハラしてしまうほど鬼の形相で怒る二面性を持つ主人公を好演。元々なんかの達人なり師匠なりが似合う役者だけに、柔術と合気道をミックスしたナガスドーとやらの武術を使いこなす姿も、特殊なスキルの持ち主であるという設定も非常に様になる。また、娘だろうと元妻だろうと、女性を前にすると口下手になる役柄にもハマっており、それが逆に口に出した言葉の裏側には、いかなる手段を使おうとも、自らの命を投げ打ってでもその言葉は守り通すという強い決意が見え、それだけにセガールでは表現しきれないであろう大人の男の生き様ってのを感じられたりも。まぁ、セガールはセガールで、傍若無人な生き様が感じられて好きなんですが。
一方、どんな状況であっても主人公を責め立てないと気が済まない元妻役に、『サウンド・オブ・サイレンス』『００７／ゴールデンアイ』のファムケ・ヤンセン。お楽しみである大人の色気ってのを堪能できないのは設定上仕方がないにしても、今回はストレスを与えるだけの役柄に終わってしまっているのは残念。何があって別れたかは知りませんが、あんだけの大金持ちと再婚出来たんだから、もうちょっと心に余裕をもって前の旦那に接してやればいいのにと。
また、娘役のマギー・グレイスに罪はないのだが、そのパーツが全て中心に集まった顔立ちと、何かとすぐ飛び跳ねる振る舞いは、幼いを通り越してイライラする。結構大変な目には遭っているものの、最終的に全てが思い通りになっているのもまた、イライラする。これで、憧れの歌手を前に酷い歌声を披露し、周囲がドン引きするエンディングだったら多少溜飲が下がったのにと。まぁ、そんな不満はさて置き、無事救い出されて主人公に感謝する二人ですけど、まずは一度ちゃんと謝った方がいいんじゃないのかなぁと。


理想の父親像のハードルが、一気に上げられた感じが

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
　　　

　　　　　　　　

　　　　　　　　

Comments

年頃の娘にとっては、ウザったい駄目パパ。
でもいざとなったら、そん所そこらの悪人よりももっと･･･
リーアム、どちらの顔も違和感無くはまっていて良かったです。

>理想の父親像
“父親スクール”でトレーニングを積んで“理想の父親”資格を取って来ないと･･･

Posted by 哀生龍 at 2011年01月12日 06:23

哀生龍さま、こんばんは〜♪
哀生龍さまん所の“諸外国におけるアメリカの押し付け正義”って論点も興味深かったですねぇ。確かにそう見える作品ですが、如何せんセガールしか浮かばない私の頭脳。単純に「すげぇパパだなぁ…」と＾＾；

Posted by たお at 2011年01月12日 17:57

すんごいオヤジでした。
一応「２」の企画はまだ死んでないようですが、どうなったんでしょうか。

「Ｕｎｋｎｏｗｎ」は続編ではないですが、ずっとおもしろそうです。

Posted by KGR at 2011年01月13日 00:11

KGR様、こんばんは！
どうなったんでしょうねぇ？
シリーズとして続けるとなると、毎回家族の誰かが大変な目に遭うってことなんで、それはそれで嫌な一家ですねぇ。

Posted by たお at 2011年01月13日 01:17

たおさん、こんばんは〜(^^)
娘が無防備すぎましたよね〜。
こんなスーパーお父さんがいなかったら、どれだけ酷い目にあってたことか。。。
でもまあ、このあとは前よりも娘と会えるようになって、お父さんは幸せになったんでしょうね〜(^^;)　

Posted by りら at 2011年01月13日 20:57

りら様、こんにちは〜♪
娘も元妻も、おとーさんの助言聞かな過ぎ。それでも小言も言わず身体を張るおとーさん。やっぱり、娘らは一回ちゃんと謝った方がいいですねぇ。

Posted by たお at 2011年01月14日 14:17