2011年01月04日

ペット・セメタリー (Pet Sematary)

監督 メアリー・ランバート 主演 デイル・ミッドキフ
1989年 アメリカ映画 103分 ホラー 採点★★★★

初めてホラー小説に触れたのって、多分小学校の頃に親が買ってくれた子供向けに編集された短編集だったかと。エッシャーのだまし絵なんかも載ってたやつ。タイトルは忘れちゃったけど、サーカスの曲乗り師に訪れる悲劇の物語や、ドラキュラの息子、ラブクラフトの“冷気”“アウトサイダー”、ディケンズの“信号手”と、とても子供向けとは思えぬ濃い作品ばかりが収録されていたんですが、中でも震え上がったのがW・W・ジェイコブズの“猿の手”。子供心に「欲をかいちゃいけないなぁ」と思ったもので。それにしても、ハワイ旅行の土産にファンゴリアを買ってきたり、クリスマスのプレゼントにこの本を買ったりと、うちの親は私の事をどんな子供だと思ってたんでしょうねぇ

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【ストーリー】
メイン州の田舎町に越してきたルイス一家。広い庭には小道が続いており、その先には子供らが作ったペット霊園があった。とある日、ペットのネコが車に轢かれて死んでしまう。幼い娘への説明に頭を悩ますルイスに、隣人のジャドがペット霊園の奥に広がるとある場所に埋める事を提案する。すると翌日、そのネコが生きて戻ってくる。しかしそのネコは、姿こそ同じだが腐臭を発するなにか別な物に変わっていた。そしてある日、最愛の末息子ゲイジが事故で死亡してしまう。悲しみに暮れるルイスは、あの場所に息子を埋葬する事を考え…。

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数あるスティーヴン・キングの作品の中でも、その悲劇の度合いでは他を寄せ付けない“ペット・セマタリー”を自身が脚本を担当し、女流監督メアリー・ランバートが映像化したホラー。
子を持つ者にとって最大の恐怖である“我が子の死”を描いた本作。“猿の手”を巧みにブレンドした物語には、悲しみと絶望ばかりが描かれており、決して後味爽やかな作品ではない。テーマがテーマである以上、後味の良さを求める方が筋違いでもある。冷静な判断が出来る状況であれば、蘇ってくるのは自分の子ではないことは分かり切っている事であるし、ろくなことにならないのも十分予測できる。しかし、子供の死というこれ以上ない恐怖と哀しみに晒され、目の前にわずかな希望と誘惑をつり下げられている状況下にいる主人公が、そんな冷静さを保つわけもない。観客はそんな主人公の心情は充分過ぎるほど理解できるが、取る行動が更なる悲劇しか生まないことも分かっている。その観客と劇中の主人公との間の理性の絶妙なズレが、作品との一体感を生み、悲しさと恐怖を共有できる結果になっている。「気持ちはよーく分かる。でも、それはやっちゃダメだ!」と心の中で叫びながら本作を観賞してしまう感覚は、ある意味「志村ー!後ろ!後ろー!」と同じ感覚である。
劇中何一つ良い事が起きず、唯一のコミックリリーフが頭の半壊した亡霊というユーモアのなさは確かに陰鬱な気持ちにさせるが、子供のちょっとした仕草も逃さない女性らしい細やかさは後の転落をより強調しているし、アメリカ映画には珍しい幽霊譚らしい湿度を感じる演出の効果も相まって、非常に出来の良いホラー映画となっている。エンドロールと同時に突如流れるラモーンズの“Pet Sematary”が余韻の全てをぶち壊しにしてはいるが、それはきっとキングからの「滅入らせてゴメンねぇ。これでも聴いて気分転換して!」っていう気遣いだと思うので、文句は言わないようにしておこうと。せっかくですし。まぁ正直、余計なお世話でしたけど

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ストーリー自体が前面に出ているだけに、主演のデイル・ミッドキフにしろ、“新スター・トレック”でお馴染のビング・クロスビーの孫娘デニース・クロスビーらメインキャストは然程印象に残らない本作。まぁ、ゲスト出演のキングは目立ってましたが。その中でも、ちょっとした優しさが招いてしまった顛末に後悔する隣人役に扮した、『いとこのビニー』のフレッド・グウィンのその風貌から染み出る歴史と背景の重みが、作品の背景に重みを与える好演で。
そして、なんと言ってもやはり当時3歳だった『マーキュリー・ライジング』のミコ・ヒューズの存在が、本作に与えた影響はデカイ。愛くるしいにも程があるその顔立ちは、後の悲しさを強烈に増大させ、怪物と化した姿はその可愛らしい顔立ちもあって、より一層恐怖を増させた結果に。怪物のまま果てるなら救いがあるのだが、最後の最後に幼子らしい顔を見せちゃうんだから、後味の悪さまで増大させる強烈な印象を残す。あまりに本作のミコ・ヒューズが強烈だったので、原作を読んで既に頭の中で出来上がっていたゲイジ像が、全てミコ・ヒューズに入れ替わってしまったほど。それにしても、『マーキュリー・ライジング』でも思ったのだが、ミコの両親は何を基準に我が子の出演作を選んでいるんだろう?
当初は、“監督 ジョージ・A・ロメロ 主演 ブルース・キャンベル”でプロジェクトが進んでいた本作。このジットリとした怪談話をロメロがどう撮るのかもそうですが、ブルース・キャンベルのオーバーアクションがどう活かされていたのかも興味深いところで。

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すがりたい気持ちもよく分かる

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posted by たお at 02:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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