2009年 アメリカ映画 100分 コメディ 採点★★★★
「嘘をついちゃダメだよ!」って、子供の頃みっちり言い聞かされましたねぇ。嘘ばっかついてたんで。で、大人になった今は同じ事を自分の子供に言ってる。相変わらず嘘ばっかついてるのに。でもまぁ、実際のところ人間関係とかって、嘘をついてないと上手くいかないんですよねぇ。人間関係だけじゃなく、芸術にしろ文化にしろ宗教にしろ、人類のベースって嘘で出来てるようなもんですし。
【ストーリー】
嘘の存在しない世界。誰もが真実を口にする世界で、仕事も恋も上手くいかないマークは負け犬の烙印を押されどん底に。ところがある日、彼は人類で初めて嘘をつく能力を身に付ける。彼はその嘘を利用し富と名声を手に入れるが、想いを寄せるアンナの気持ちだけは手に入れる事が出来ず…。
『ナイト ミュージアム2』のリッキー・ジャーヴェイス監督・脚本・主演によるコメディ。
嘘が存在しない世界を舞台に描く本作。嘘が存在しないからお世辞や社交辞令、映画などの創作娯楽に宗教まで存在しない。誰もが見て思ったまんまを口にするので、恋愛も人間関係も見た目が最重要に。見た目が良ければ、道行く人々に「あらカッコ良い」「あら美人」と誉め讃えられるが、そうじゃなければ罵詈雑言を浴びせかけられる。そんな世界に嘘を放り込んだ時、どんな事が起こるのかをイギリス人らしいシニカルな笑いを込めて描いた本作。シニカルとは言っても冷笑のみに走るわけでもブラックに徹するわけでもなく、宗教が存在しないが為に死の恐怖に怯える母親に優しい嘘をつくように、全体に漂うのは人間的な優しさ。その優しさを引き立てるためのシニカルさでもある。
設定が設定だけに世界観が収拾つきづらいほど広がり過ぎてしまった感もあるし、笑いが“嘘がないから”の一辺倒になる単調さも否めないのだが、シニカルと優しさが共存するロマンチックコメディとして本来のテーマである“人間、見た目だけじゃないよ”に軟着陸する構成力とバランス感覚は見事。
“エキストラ:スターに近づけ!”や『オー!マイ・ゴースト』など、主演作のどれもが面白いというのに、本作に至っては日本最大手の某映画サイトにデータすら載っていないという冷遇を受けるリッキー・ジャーヴェイス。デヴィッド・ボウイに“哀れな小太り男〜♪”と歌わせた自虐ネタは本作でも健在で、劇中引っ切り無しに「ブタっ鼻の小太り」と罵倒されっ放し。そんな罵倒や不遇を、“ザ・イギリス人”的困惑と諦めの入り混じった薄笑いでやり過ごす、リッキー・ジャーヴェイスのお家芸をたっぷりと楽しめる本作。どの作品でも自分の見た目を笑い飛ばす役柄が多いんですけど、リッキー・ジャーヴェイスって良く見ると男前なんですよねぇ。それも、かなりの。確かに小太りですが、顔に大きく“X”と書いたように神経質そうにつり上がった眉と逆方向に下がる目じりに、八重歯が目立つ口元を持つその顔立ちは、若い頃のボウイそっくり。笑い方なんか瓜二つ。その辺も、お気に入り俳優の一人になっている要因なんですが。
ヒロイン役であるジェニファー・ガーナーが女装した男にしか見えないってのがちょっとアレだったものの、ゲスト的に顔を出す豪勢な面子がその辺を完全に帳消し。負け犬の代表格のように登場する『寝取られ男のラブ♂バカンス』のジョナ・ヒルを筆頭に、ハンサム代表としてロブ・ロウ、『ナイト ミュージアム2』のクリストファー・ゲストに、リッキーの相方でもある『妖精ファイター』のスティーヴン・マーチャント、仕舞いには『パイレーツ・ロック』のフィリップ・シーモア・ホフマンと『インクレディブル・ハルク』のエドワード・ノートンなどなど、大作でもなかなか揃わない顔ぶれ。まぁ、こんな顔ぶれでも内容に合ってないタイトルをつけられ、販売もせずにコソっとレンタル店の片隅に置かれてしまう冷遇っぷりなんですけど。
嘘も時として良薬に
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