2007年 香港映画 129分 アクション 採点★★★★
世代交代ってのはどんな世界でも起こっているんですが、実際映画を観ていたり音楽を聴いていたりしてる分には、あんまり私自身は感じないことも。「ランボーはいいなぁ、ランボーは!」「やっぱ、カジャと言ったらグーグーだよなぁ」と、相変わらず同じ映画や音楽ばかり楽しんでいる。んー…受け手である私ごと世代交代がとっくに進んじゃってるようですねぇ。
【ストーリー】
強盗事件の巻き添えになり婚約者を失ったチャン刑事、同じ犯罪グループの襲撃に遭い大きな屈辱を味わったフォン警部補、行方不明の兄がその犯罪グループの一員であると疑われるワイ巡査。それぞれ同じ犯罪グループを追う3人は、やがて協力し合い犯人を追うのだが…。
『香港国際警察/NEW POLICE STORY』『コネクテッド』のベニー・チャンによる、香港アクション映画の底力をまざまざと見せつける快作。
「ジャッキー・チェンがいなくなったら、香港アクションはどうなっちゃうんだろう…」と、ファンなら誰もが思う不安を一気に払拭する本作。下手に次世代ぶって過剰な映像処理などに頼らず、「面白い物語と、身体を張った息をのむアクションをきちんとまとめ上げれば観客は満足する!」と言わんばかりに、基本に忠実な姿勢で作り上げられている。アクションと笑いと涙のブレンド具合も非常に良く、これまでの香港映画の集大成を観ているような感じも。それ故にか、世代交代による“新しい流れ”といった類はあまり感じられないのだが、しっかりと土台を固めたうえで出発しようとする意気込みが感じられる。
主役3人のそれぞれの物語から始まり、それらが融合し事件の全体像が見えてくるという盛り込まれたストーリー数は多く、その為かランニングタイムもアクション映画としてはやや長めの2時間越えとなっているのだが、先に挙げたアクション・笑い・涙のブレンド具合と、ラストでほっこりさせる全体バランスが良いため緩急が生まれ、ストーリーも停滞することなく矢継ぎ早に進むため、全く飽きる事がない。それはもちろん題材をきちんと消化したベニー・チャンの手腕によるものも大きいのだが、容赦のないアクションの数々を全速力で演じる役者が生み出すスピードが、作品にスピード感を与えた結果であるとも言える。
主役の3人に扮するのは、『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』で赤ドニーと緑ドニーを演じたニコラス・ツェーとショーン・ユーに、ジャッキー・チェンの御曹司ジェイシー・チェン。それぞれが“ハンサム・坊主・良い子”と分かり易いキャラ分担と、“怒り・笑い・涙”とこれまた分かり易い見せ場分担をしているので、グループ主人公ものでありがちな「コイツ、正直いらないんじゃね?」って問題が起こらない。また、役者としての仕事振りを知らなかった分、観る前は正直不安だったジェイシーも、自然と醸し出されるボンボン臭と父親譲りのワタワタ演技が功を奏し、役柄としっかりマッチ。顔を真っ赤にして戦う顔は父親ソックリで、そんなジェイシーを中心に観ると、他の二人がだんだんサモ・ハンとユン・ピョウに見えてくるから不思議。もちろん顔がじゃなくて、キャラがですけど。
一方、そんな3人が束になっても敵わない絶対的な強さを誇る悪役に扮するのが、『SPL/狼よ静かに死ね』でドニー・イェンを相手に一歩も引かない見事な戦いを見せたウー・ジン。自身に満ち溢れたそのふてぶてしい面構えになるのも納得してしまう、強烈な足技を披露。まさに本物のカンフースターの凄味で、その圧倒的な強さが本作をビシリと引き締めている。
ニコラス・ツェー、ショーン・ユー、ウー・ジンというドニー道場経験者3人に、ジャッキー遺伝子を持つジェイシーを含めた4人が見せるアクションの数々は、どれも息を飲むレベル。合間合間に挟まれる本人らによるスタントも、安全第一の限界線に挑むハイレベルな代物。アイドルだろうが御曹司だろうが、アクション映画に出る限りはしっかりと身体を作り上げ、鍛錬を重ねる、まさに“基本に忠実”な本作。先ごろ「壁走ったりするやつとか全部、自分でやりましたー」とあちこちで宣伝しまくる邦画があったが、そこは売りにする場所じゃないんじゃないのかなと。スタント使おうが使わまいが、ワイヤーだろうがCGだろうが、それは面白い映画を作るための手段の一つでしかないんだし、その手段が面白さの大部分を占めるなら、それだけのものを見せてくれと。
唯一足りないお色気は、これでなんとかカバー
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