2010年12月27日

ア・フュー・グッドメン (A Few Good Men)

監督 ロブ・ライナー 主演 トム・クルーズ
1992年 アメリカ映画 137分 サスペンス 採点★★★★

“出来ない子”ってのは職場でも学校でも、それこそ集団で行動すると必ず一人二人いるもので。それが足並みを乱す原因となってしまったり、連帯で責任を取らなければならなくなる原因になったりもするんですが、別に命が掛かっているわけでもないんで口頭で優しく根気よく指導し続けるか、まぁ時折怒鳴り散らすかくらいで済んでますが、これが自分だけではなく大勢の命が掛かっている状況だったら、そんなもんでは済まないでしょうねぇ。

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【ストーリー】
グアンタナモ海軍基地で殺人事件が発生する。容疑者二名の弁護を担当する若き弁護人キャフィ中尉は、その事件は落ちこぼれ兵に対する暴力制裁“コード・レッド”遂行を命じられた結果起きた事を知る。

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同名の舞台劇を映画化した、『ミザリー』のロブ・ライナーによる法廷サスペンス。
命令と階級が絶対的である軍隊内での裁判劇という、検事と弁護人の丁々発止を堪能できる通常の裁判映画とは一味違った面白さを味わえる本作。基が舞台だけに会話を中心とした舞台劇の流れを持ちながらも、映像で見せるトリックや動きのある早い展開など映画ならではの醍醐味も存分に味わえる見事な一本に仕上がっている。
俗に言う“かわいがり”をテーマに描く本作。通常の状況下であれば陰湿な悪として描き、それを暴く弁護士による勧善懲悪の物語になるところなのだが、軍隊内、しかも敵対国と睨み合う緊張状態にあるグアンタナモで発生という特殊な状況設定が見事に効いており、観賞後に「よかったよかった。さぁ、寝よ!」とならない塊を胸に残す。一人の落後者の存在が、部隊や基地全体のみならず、彼らが守っている国民全員の生命を脅かすことにもなり得る状況の中、犠牲者に対して行った行為は道徳的にも法的にも間違っている事はもちろん理解できるが、彼らの主張や理屈も充分理解できる。一方、犠牲者が行ってきた行為は、身体的な問題を差し引いても状況を考えると首を傾げたくなるのも事実。その緊張状況を浮き彫りにする、平和なワシントンとの対比も上手い。
そんな単純な善悪の概念だけでは消化できない面白い物語を、適材適所に配置された豪華キャストと会話劇の醍醐味を増させるオーバー気味の演出、畳みかけるような展開で映像化したロブ・ライナーの手腕の勝利。

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“○○という職業に就く××と言う人”を演じると言うよりは、“○○のトム”って方が当てはまる気がする『M:i:III』のトム・クルーズ。“ハンサムスパイ・トム”とか“殺し屋トム”とか“侍トム”とか。私なんかはメゾットにのめり込むトムちんなんぞ見たくはないわけで、トムちんによるハンサム職業コスプレを観たいからこそ劇場に足を運んでいるんですが、本作のトムちんは“弁護士トム+軍服”。ハンサム弁護士のトムが軍服を着ているんだから、カッコ良いに決まっており、そこだけでも存分に満足できる作品なのだが、もちろんそれだけではない。
この当時のトムちんと言えば、ハンサムで行こうか演技派で行こうかと迷っていた頃で、30歳にもなり大人っぽくなろうと背伸びをしていた時期でもある。背伸びはいまだにしてますが、その辺は余り触れちゃいけない所。そんな時期ということもあって、本作の役柄と見事に合致。偉大なる父を持つサラブレッドながらも大人になり切れず、平和ボケしたワシントンで腰かけ程度の甘えた考えで軍の弁護人をやっていたキャフィが、最前線での規律の重さと絶対的な指令系統に揉まれ翻弄されながらも一人前となっていく姿を、トムちんは見事に演じ切った。この役柄を演じ切った事が演技力の自信となり、迷いが吹っ切れたかのように邁進する後のハンサム道追求に繋がったのではと。
ただまぁ、『宇宙戦争』の時の女投げでもそうだったんですが、どうにもトムちんは野球が苦手なようで、本作でもノックに果敢に挑戦しておりますが、そのスイングはあまりにカッコ悪い。腕だけで振ろうとする、典型的な“出来ない人”スイング。打ってるボールがソフトボールなのも、野球のボールじゃあんまりにも当たらないから変えられてしまったんじゃないのかと邪推してしまうほど。出来ない事は華麗にスルーするのもハンサム道だと思いますので、今後は是非とも野球にだけは近づかないでいただきたい。

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主演のトムちんを筆頭に、豪勢なキャストが揃った本作。
トムちん同様に背伸びの時期に入っていた『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』のデミ・ムーアに関しては、“童顔・ハスキーボイス・むっちむち”の魅惑の三拍子以外特に印象に残らないキャラクターであったのだが、主人公との友情関係&ライバル関係を巧みに表現し、人間関係図に深みを持たせた『狼の死刑宣告』のケヴィン・ベーコンや、中間管理悪役としての憎々しさ満点だった『ザ・センチネル/陰謀の星条旗』のキーファー・サザーランド、温厚な相棒役がハマる『ホステージ』のケヴィン・ポラックらが、与えられたキャラクターを見事に演じてみせた。
その他にも、“ツイン・ピークス”でバイクで出かけたまま帰ってこなかった『ダウン』のジェームズ・マーシャルや、ゲスト的にちょろっと顔を出す『ナイト ミュージアム2』のクリストファー・ゲストやキューバ・グッディング・Jrなど、脇もガッチリと固められた本作だが、そんな若手と中堅の頑張りも丸飲みしてしまいそうな迫力で登場するのが、『ディパーテッド』『シャイニング』のジャック・ニコルソン。クライマックスはニコルソン無双と言える独壇場で、彼のオーバーなアクションと迫力に引っ張られる形でトムちんに勢いが生まれ、法廷での名シーンが作り上げられたのであろう。ただ憎たらしいだけの悪役であれば凡百の裁判映画になり兼ねない本作をここまで仕上げたのも、狂気を孕みつつも抗う事の出来ない魅力を発するジャック・ニコルソンの存在があったからこそではと。

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若輩者は、ただただ立ち尽くし

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posted by たお at 03:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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