1994年 アメリカ映画 98分 ホラー 採点★★★★
どうにも“天使”っていうと、フランダースの犬に出てくるピラピラっと飛んでる軽やか奴を思い浮かべてしまうんですが、天使を演じた事のある俳優をざっと思い返してみると、ジョン・トラヴォルタにベン・アフレックと、ちっとも軽やかじゃない奴ばかり。なんか、煩悩が濃縮された感じ。それなら私も天使になれるような気がしてきましたが、それはきっといつもの勘違い。
【ストーリー】
牧師になるのを断念し刑事となったトーマスは、ある殺人事件を担当する。その被害者の死体は、見た目こそ人間であるが、医学的にはあり得ない生体であった。所持品から得た手掛かりを基に捜査を進めるトーマスはやがて、天使同士の壮絶な争いに巻き込まれていく。
『ハイランダー/悪魔の戦士』の脚本でも知られるグレゴリー・ワイデンの劇映画デビュー作。
天使同士の戦いといえば近作の『レギオン』を思い出す。設定もほとんど一緒ですし。ただ、『レギオン』にあったような派手なエフェクトや見せ場はない反面、『レギオン』には皆無だった面白さやカッコ良さはギューギューに詰まった本作。神の愛が人間にのみ注がれるのに嫉妬して戦争を起こす大天使ガブリエルに、その企みを阻止したい心優しき天使シモン、「地獄が2つになったらオレの立場はねぇべ!」と人間に加担する堕天使ルシファーと、きちんと描き分けされた天使たちがまず魅力的。その天使らの言動が、とにかくいちいちカッコ良い。流石『ハイランダー/悪魔の戦士』で、「ゆっくりと消え去るよりも燃え尽きる!」と座右の銘にしたい名言を吐かせたグレゴリー・ワイデンだけある。
確かに“第二次天国大戦”を描いている割には、やってる事が天使同士の騙し合いといささか画面が地味なのだが、小さな事件からどでかい出来事がジワジワと浮かび上がって来る展開の巧みさや、医学的見地に立った天使像やその生態などこだわったディテールが世界観を存分に広げ、見えない部分を充分脳内補完してくれる。何よりも、とてつもない出来事が末端でジワジワと起きているってのは、なんともワクワクするじゃないですか?『パラダイム』みたいで。なんでも見せりゃ良いってもんでもないですし。
主役の刑事に扮するのは、今では名バイプレイヤーとしての印象が強い『ディフェンドー 闇の仕事人』のイライアス・コティーズ。まだフッサフサの頃で、俗社会に染まり切っていない役柄のせいもあってか、クセのあるカイル・マクラクランみたいな感じ。
その他にも、ホタテマン化した兄を持つ『キャンディマン』のヴァージニア・マドセンや、アパムのせいでジワジワ死ぬことになった『プライベート・ライアン』のアダム・ゴールドバーグ、最近ちょっと見かけないアマンダ・プラマー等、曲者揃いのキャスティングが印象的な本作だが、やはり何よりも強烈なのは天使勢の顔ぶれであろう。
気まぐれで街一つ壊滅できる絶大な力を誇る割には、車の運転は出来ない大天使ガブリエルに『マクベイン』『もしも昨日が選べたら』のクリストファー・ウォーケン。両性具有の天使をイメージしてか、いつもよりメイク濃い目で登場。やる事なす事カッコ良いガブリエルを飄々と演じる彼は、本作最大の目玉の一つ。人間にばかり向けられる神さまの愛に嫉妬し、神さまの愛情を独り占めにしたいと願うも、最近神さまに口もきいてもらえない不憫さを、クリストファー・ウォーケンは全身からムンムンと漂わせる好演。一方、見方を変えればやってる事が犯罪者と変わらない気もするが、これまたやる事なす事カッコ良い天使シモンに扮するのが、『ザ・フライ2』のエリック・ストルツ。優しいんだが、目の奥が冷たく醒め切っている風貌がドハマり。これも、目玉の一つ。そして最後が、その強大な力ゆえに天界から追放された堕天使ルシファーに扮する、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のヴィゴ・モーテンセン。薔薇の花をモシャモシャしながら出てくる初登場シーンからして、もう悶絶もののカッコ良さ。出番こそ少ないが、それでもやる事なす事カッコ良い。もちろん、目玉の一つ。天使役ながらも、爬虫類的冷たさを持つ彼ら3人が、両性具有という設定から醸し出される危険な香りをシッカリ漂わせ、そのキャラクターを見事に自分の物とし、その上彼ら自身の持ち味を存分に出した事が本作成功の最大の要因だったのではと。
ところで、下に張り付けてあるアマゾンの『ゴッド・アーミー/復讐の天使』の海外版DVDのリンクなんですが、押してみるとなぜかアダルト・コンテンツ扱い。ずいぶん昔に観たきりなので覚えていないんですが、クリストファー・ウォーケンとエリック・ストルツがあんな事やこんな事をしちゃうシーンなんてなかった気がするんですが。なぜ?本作がほんのりエロいから?
誰がやっても似合わない役が似合う
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
およそ天使らしくない3人。
どこをどう切っても、素敵な天国には連れてってもらえ無さそうな3人。
この3人だから、ストーリーとは別次元での魅力をこの作品に感じるのかなと。
>誰がやっても似合わない役が似合う
さすが、たおさんの褒め言葉はいつも鋭い!
何を書いても書き足りない作品なんで、魅力が伝え切れず困った作品です^^;
まぁ、役者が作品の魅力を見事に体現したって部分だけは書きたいなぁとズラズラ書いてみましたが、「まぁ、観た方が早い」って一言で済みそうですねぇ。
ガブリエルの天国、シモンの天国、ルシファーの天国。連れて行かれるんだったら…ルシファーのかなぁ。オイタをするとルシファーに「フーッ!!」って怒られるオマケも付いてくるし。
まままま、祭り?祭り?
エエエエエエリック・ストルツ祭りっすかっ!?
(そんなワキャないか(^^ゞ)
にしても、嬉しいチョイスです。
エリックは前半しか出てませんが、
優しげでふわふわしてるのに(天使だからか?)
人を寄せ付けない孤独さをまとった不思議な存在感があって
ガブリエルとシモンの絡みは(いや、エロではなく)
凄絶なリンチであるにも関わらず哀愁さえ漂ってました。
妖怪化が著しいウォーケンの怪演も素晴らしく
続編が出来たのも納得です。出来に関してはノーコメントで。
思うにこの映画辺りから、天使=神の使い(善の象徴)
みたいな捕らえ方が映画の世界で崩れた気がします。
必ずしも人間の味方じゃないんだよ。天使は。みたいな。
エリック・ストルツ祭りじゃないですよ。落ち着いてw
まぁ、観たいのだけをピックアップしてたら続いたってだけなんですが、いっそ祭りでもいいですw
今エリック祭りを開催して、どのくらい盛り上がるのかは定かじゃないですが。そう言えば、むかーし別な場所で“Al Leong(画像検索でもすれば「あぁ!あの!」って)祭り”ってのもやった事あるんですが、いやぁ盛り上がらなかったですねぇ。
にしてもこの映画、役者の魅力が炸裂してるんですけど、設定も見事ですよねぇ。コンスタンティンにしろレギオンにしろ、この映画から設定を頂いてる作品も多いですし。