1981年 アメリカ映画 99分 アクション 採点★★★★★
映画におけるニューヨークのイメージって、今では随分と変わっちゃいましたねぇ。私なんかは真っ先に、バット片手にペイント顔のギャングらが跋扈する『ウォリアーズ』の世界を思い浮かべちゃうんですが、やり口の好みは別にして、前の市長が徹底的に街の浄化をしたせいか、今ではすっかり“セレブの街”ってイメージが定着しちゃっているようで。そんなイメージのギャップのせいか、「サラ・ジェシカ・パーカー主演の『セックス・アンド・ザ・シティ』!」って言われてもさっぱりピンとこない。どんな映画なのかも想像できない。「パム・グリア主演の『セックス・アンド・ザ・シティ 』!」と言われれば、どんな映画なのか手に取るように想像できるし、観たくて観たくてしょうがなくなるのに。
【ストーリー】
1997年。爆発的な犯罪発生率の増加により島全体が巨大な監獄となったニューヨークのマンハッタン島に、過激派に乗っ取られた大統領専用機が墜落。大統領は囚人の頭領デュークに捕えられてしまう。大統領の生命を案じ大々的な救出作戦が出来ない警察は、元特殊部隊出身の伝説的な犯罪者スネーク・プリスキンを恩赦と引き換えに救出に向かわせるが…。
男の子なら一度は通過しておきたい、『ゼイリブ』『遊星からの物体X』のジョン・カーペンターによる傑作SFアクション。
状況を説明するオープニングのハッタリからシビレまくる本作。“1997 NOW”のテロップの入るタイミングなんて、もう完璧すぎる。“街全体が監獄となった無政府状態の中に大統領専用機が墜落。救出に向かうのが筋金入りのアウトロー”ってプロットだけでも燃えるっていうのに、その燃える要素を全て的確に映像化しちゃってるんで、堪らない。最後までアウトローとして軸がぶれない主人公と、シャンデリア付きのピンプカーに乗るハイパーピンプと化した頭領らを筆頭とした個性溢れ過ぎるキャラクター達や、主人公の“スネーク”を始め“ロメロ”“クローネンバーグ”といかしたセンスを見せるネーミング、ジェームズ・キャメロンも参加していた想像力を刺激するマットペインティングやミニチュアワーク、体内爆弾によるタイムリミットが生み出すスリル、四角いジャングルで行われるデスマッチ、『クローバーフィールド/HAKAISHA』にも影響を与えたポスターデザインなどなど、どれもこれもが男の子心をいたく刺激し、まるで男の子魂を試すリトマス試験紙のような作品に仕上がっている。もう、反応しまくり。
ゾンビのように無言で襲いかかって来る暴徒の恐怖や、婦女子お断りのアウトロー美学、画面の手前か奥をサッと何かが横切るお馴染のアレなど、カーペンター作品独特のお楽しみも満載な本作。そしてもちろん、カーペンター作品でお馴染のお楽しみと言えば、自身の作曲によるカーペンター節溢れる音楽。「あのベンベンとこのベンベンの違いが分からない!」って不満もちらほら聞こえるカーペンター節ではありますが、本作のオープニングに流れるジワジワと盛り上がるベンベンは、数あるカーペンター節の中でも傑作の一曲。自分がプロレスラーだったら、是非とも入場曲に使用したい一曲で。
アイパッチというアイテム一つで本作の男の子度を一気に跳ね上げた主人公スネークに扮するのは、『デス・プルーフ in グラインドハウス』『ソルジャー』のカート・ラッセル。自らの命を掛けて救出した大統領が、本当にそれだけの価値ある男なのかを問うた答えに、ミエミエの落胆をするわけではなく黙って立ち去る男の中の男スネーク役に、トミー・リー・ジョーンズやチャールズ・ブロンソンを強く推すスタジオの意見を押しのけて、カーペンターが捻じ込んだカート・ラッセル。それまでの“ディズニー子役上がり”のイメージを見事に払拭するだけではなく、もうスネークにしか見えない素晴らしいハマりっぷり。
そんなカート・“スネーク”・ラッセルだけでも十分過ぎるほどカッコ良いのに、『黒いジャガー』の主題歌でも有名なアイザック・ヘイズに、マカロニウエスタン好きには堪らないリー・ヴァン・クリーフ、“イイ顔をした役者”で真っ先に思い付く『北国の帝王』のアーネスト・ボーグナイン、『ハロウィン』に続いての登板となるドナルド・プレザンス、『若き勇者たち』『沈黙の断崖』のハリー・ディーン・スタントンら、まさに男顔のキャストが集結。本作の骨太感を、強烈に印象付けている。紅一点が当時の嫁エイドリアン・バーボーってのも、その骨太感増強に。
一時期『ハロウィン』や『アサルト13 要塞警察』など、やたらとリメイクが続いたカーペンター作品。当然のように本作もリメイクが決定したようなんですが、きっとカーペンターならその予算でいつものカーペンター映画を5本は作ってくれるんだろうから、もうちょっと好きに映画を撮らせて欲しいなぁとも。まぁ、リメイクも面白ければ全く文句はないんですが、そのリメイクよりも、スネークがニュージャージーから抜け出せなくなるインディー映画、“Escape from New Jersey”の方に興味が。
会う人会う人みんなに「死んだはずじゃ?」と言われて初めて一人前
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓