1995年 日本映画 特撮 95分 採点★★★★
私が未だに好きなせいか、男の子ってのは元々そうなのか、親子共々ウルトラマンが大好きな我が家。ただ、私の場合はウルトラマンももちろん好きですが、出てくる怪獣の方がもっと好きって感じで。たぶん、この世代は概ねそうなんじゃないかと。子供の頃、怪獣消しゴムのガチャポンでウルトラ兄弟が出ちゃうと、えらくガッカリしたもんですし。まぁ、トントン相撲をしようにも、レッドキングら安産型の怪獣相手に、ウルトラ兄弟は立つことすら出来ないので話にならないって理由もあるんですけど。ところが、うちの息子は怪獣そっちのけでウルトラ兄弟が好き。怪獣が怖い。友達もみんなそうだと。デザインとかの問題もあるかも知れませんが、怪獣が輝いてこその特撮なのになぁとも。

【ストーリー】
五島列島の姫神島で、住民からの連絡が途絶えるという異常事態が発生。調査に訪れた鳥類学者の長峰は、謎の巨大怪鳥を目撃する。政府は希少生物としてその怪鳥の捕獲を決定。福岡ドームでの捕獲作戦が開始される。そこへ、海から突如巨大怪獣ガメラが来襲。怪鳥ギャオスと死闘を繰り広げる。やがてその舞台は東京へと移り…。

1980年の『宇宙怪獣ガメラ』から15年ぶりに復活した、監督・金子修介、特撮監督・樋口真嗣、脚本・伊藤和典チームによる『ガメラ2 レギオン襲来』『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』と続く“平成ガメラシリーズ”の第一弾。
全3作通してそうなのだが、「怪獣映画なんだから、こんなもんでいーでしょー」的な甘えも妥協も一切ない本作。怪獣という非現実的存在をそれが登場しても何ら違和感のない世界に立たせるわけではなく、怪獣という異物に見舞われた現実社会の動きを徹底的に描く、これぞ空想科学と言える一本。一度決定した方針は現状がどうであろうと自ら変更することを頑なに拒み、引き返すこともままならないドン詰まりの状況に陥ってから手の平を返す身勝手な政府、冷静沈着に命令をこなし続ける自衛隊、緊急事態時のメディアの動き、市民生活への影響など、怪獣登場による社会状況を細かく書き込むだけに収まらず、人物関係図とそのドラマ、怪獣のバックグランドと膨大な情報を取り入れながらも、この短い時間内に収めた脚本はもう見事。もちろん、それだけの脚本をドラマ部と特撮部とのバランスを崩すことなく映像化した、監督の手腕も素晴らしいの一言。そして、その映像を盛り上げる緊迫感溢れる音楽もまた素晴らしい。今となっては、ずーっと“水曜どうでしょう”を見ているような気になってしまう音楽ではあるが、それはそれで良い。

確か“ぼのぼの”に載ってたと思うんですが、それこそ山より大きい怪獣が目の前に現れても、ビックリこそするが然程恐怖は感じない。しかし、それがちょっと離れた山の向こう側という微妙な距離感と、その山々の間にちょっと見えるくらいの微妙な大きさとなると、ジワジワくる恐怖感を味わえると。本作の特撮は、まさにそれ。
ガメラにしろギャオスにしろ、クロースアップに全然耐えうるクォリティの高いスーツながらもアップは多様せず、怪獣が本来持つ怖さや大きさを強調する低いアングルでの“被災者目線”と、安全圏ギリギリの絶妙な距離感が生み出すスリルを描く“傍観者目線”を巧みに用い、見事なまでの迫力と臨場感を生み出している。確かに空中戦に関しては技術的な限界も垣間見えてしまうのだが、いざ地上戦となると自然光を用いたオープンセットの効果も相まって、まるでその場で目撃をしているかのような凄まじいリアリティを生み出している。本作の特撮は、スーツとミニチュアを用いた特撮として一つの到達点にあるのでは。

怪獣映画に於いて、添え物的というか状況説明をする副音声的役割でしかないことが多い人間キャラクターも、しっかりとドラマに食い込んでいる本作。彼らが居ないとドラマが動かないし、本作のリアリティも生まれない。そんな役割をしっかりと与えられたキャラクター達を、小野寺昭や中山忍、伊原剛志に長谷川初範といった新旧混合の実力派が演じることで充分な肉付けがされている。特筆すべきは、本シリーズのレギュラーである“娘セガール”こと藤谷文子。ナチュラル過ぎる語り口とボンヤリとした佇まいは演者としてはどうかと思う反面、“ガメラとシンクロする不思議少女”という役柄には、その不思議感がピッタリ。そんじゃそこらにいなそうな不思議オーラ放出少女を演じていたのならば大したものだが、そのナチュラルっぷりはパパ・セガールにも随分似ているので、たぶん素なのでは。
そんな役者陣の仕事振りも見事ではあるが、やはり本作の主役はガメラとギャオス。
初代ギャオスのスネ夫っぽい顔立ちを残しつつも、捕食獣としての獰猛さと狡猾さを前面に押し出した今回のギャオス。どうやっても懐きそうにないその顔立ちに、“人間を食べる”怖さを感じさせてくれる。一方、その殺戮機械のようなギャオスと死闘を繰り広げるのが、体高80メートルの巨体を持つガメラ。ガメラと言えば“どんな強敵に対しても満身創痍で立ち向かう男の中の男”ってイメージがあるのだが、本作でもそう。まだ丸みを帯びた輪郭に愛嬌のある垂れ目という藤谷文子っぽい顔立ちではあるが、その戦いっぷりは戦士そのもので惚れ惚れする。ガンマン同士の決闘を彷彿させるクライマックスなんて、そのあまりのカッコ良さに痺れるほど。
“子供の味方”という昭和ガメラのイメージを一新させた本作のガメラ。シリーズを通してガメラが守るのは、人間ではなく地球そのもの。本作でも明確に人間を守るシーンがある一方、ガメラの活躍で多数の死者が出ていることも明らかに。そんな人間の振る舞い次第で最高の救世主にも最悪の破壊者にもなり得るガメラの立ち位置を確立したことが、本シリーズ成功の最大の要因なのではと。

背中で語る男
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怪獣出現への反応に「ぼのぼの」を持ち出すあたり、たお様の博識の程が覗われ感服いたしました。今回も下記TBの更新にて、こちらの視聴記をご紹介させて頂いております。ご高覧頂ければ幸いです。
長文ご無礼致しました。それではこれにて。
またまたこんな文を紹介して頂き、ありがとーございます!
ぼのぼのを持ちだしたのは、博識も何も、ぼのぼのしか思い浮かばなかったからなんですが^^;