2007年 アメリカ映画 133分 コメディ 採点★★★★
昔の彼女とか、ちょっとだけあんな事やこんな事があった女性から急に連絡が来ると、やましい事が何にもなくてもドキっとしますよねぇ。いやいや、やましい事はないんですよ。ほんのコンマ何秒かの間に、あらゆるパターンに対する返答を考えちゃいますし。街でバッタリ会っても、ドキっとしますよねぇ。やましい事はないにしても。しますよね?子供なんて連れてると、とっさに見た感じの年齢と、最後に会った時を逆算しちゃったりもしますよね?ね?
【ストーリー】
TV局で働くアリソンは、番組のレポーターに抜擢されたお祝いにクラブに繰り出す。そこで出会った無職のベンと意気投合、二人は一夜を過ごす。翌朝、我に返った気まずさから別れた二人だったが、8週間後アリソンの妊娠が発覚する。突然の出来事に動揺する二人だったが、互いに協力し合い出産に向けた努力を始めるが…。
『40歳の童貞男』のジャド・アパトー自身の経験を基に描く傑作コメディ。タイトルだけを見ると一方的に男目線のような感じもするが、実の所そうではない。
男女の本音を描いたとされる作品は数多くあるが、実際観てみると本音は本音だが事前に準備をしていた「わかるわかるー」と、気軽に楽しめる本音だなぁと感じることも少なくないもので。しかしながら、本作で描かれる本音はふいに出てしまった一言的なものばかりで、「わかるわかるー」を通り越して「あ…それを言っちゃぁ」とハラハラすることも多々。そんな根っこに隠れた本音が次々と出てくる作品だけに、結婚観や妊娠に対する考えのみならず、全てに対しての男女間の考え方、受け取り方の違いをこれでもかってほど明確に描き分けているのが見事。ちょっとしたエロコメとして捉えられがちな本作だが、男女それぞれ混じり合うことのない主張をどちらも真正面から捉え、「違って当たり前なんだ」と否定を一切せずそのまんま受け止める姿勢が素晴らしい。もちろん、双方が相当な努力をしてまでも理解し合うことは大切だし、それだけの価値があるんだってのも忘れていない。
アパトー作品でお馴染の、ダラダラとした男同士のじゃれ合いの楽しさも存分に描かれる本作。家庭を持ったらもう味わうことのできない楽しさに対し、懐かしみを感じているかのような視線も。劇中に描かれる、幸せな家庭を持ちながらも妻に嘘をついてまで男友達と遊び呆ける夫。その夫の不審な行動に浮気を疑うも、真実を知り浮気以上に怒る妻。男としてはそこまでして男同士と遊びたい気持ちも充分理解できる半面、浮気じゃないのにそこまで怒る妻が理解できない。でも、きっとそんなもんなんだろうなぁと。その逆も然りなんだろうなぁと。
その、ダラダラしているだけに見えて男にとっては掛け替えのないほどに楽しい時間も、いつかは卒業しなければならない事を、『40歳の童貞男』や『スーパーバッド 童貞ウォーズ』同様に本作でも告げている。家庭を持ち、愛する妻や子供たちを幸せにするために、愛する者たちと一緒にいる幸せを得るために。もちろん、男同士で過ごす時間に対して一切否定的な視線はない。「それはそれで素晴らしいんだけど、さらに素晴らしいものの為に卒業するんだ。まぁ、たとえそんなに素晴らしい事が待ち受けてなくても、そろそろ卒業しとこうか」っていう決して肩を張り過ぎてはいない主張があったからこそ、新たな一歩を踏み出した主人公らの未来に一抹の不安と、努力し合ってきたからこその希望を漂わせる事が出来たんだろうなぁと。そんな希望と不安と、ちょっとした寂しさを感じさせる締めも、好印象。
キャストのほとんどが、とても演技をしているとは思えぬ自然体でいるのも魅力のアパトー作品。『恋するポルノ・グラフィティ』のセス・ローゲンも、役名こそ“ベン”だが、そこに立っているのはだらしなさと優しさが同居するセス・ローゲンそのもの。結婚相手としては、ちょっとドラフト1位にはなりづらい。もう、親近感湧きまくり。彼女の何もかにもが自分の上を行ってるだけに、一緒に居る喜び以上に不安と劣等感を感じている様も、とても他人事には思えず。
また、ポジティブなオーラを全身にまとった美人女優ながらもNGが少なく、コメディ作品でも目覚ましい活躍を見せる『男と女の不都合な真実』『リンガー! 替え玉★選手権』のキャサリン・ハイグルも、その性格を存分に活かした魅力的なキャラクターを演じているが、やはり本作での注目は、勢揃いしたアパトーギャング。もう、今となっては“コメディ版『エクスペンダブルズ』”と言っても良いほどの顔ぶれ。
“普通の人”を演じさせたら右に出る者はいないポール・ラッドと、アパトーギャングの脱ぎ担当ジェイソン・シーゲルの『40男のバージンロード』コンビに、『ファンボーイズ』のジェイ・バルシェルと『アドベンチャーランドへようこそ』のマーティン・スター、『ナイト ミュージアム2』のジョナ・ヒルと勢揃い。ポール・ラッドを除いて、みな役名と実名が一緒。ほとんど、素のまま。その他にも、アパトーの妻である『ファニー・ピープル』のレスリー・マンと娘ら二人のアパトー一家に、『紀元1年が、こんなんだったら!?』のビル・ヘイダー、監督仲間のハロルド・ライミスにスティーヴン・ブリルと、もう書き切れないほど勢揃い。まぁ、そんなアパトー勢や本人役で登場するジェシカ・アルバやスティーヴ・カレル以上に強烈な存在感を放っているのが、『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』のケン・チョンでしたが。登場時間が短いのに、何あの強烈さ?ホント、アダム・サンドラー作品におけるロブ・シュナイダーの域に達しているな、ケン・チョンは。
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コメディ映画には案外反応の悪い日本ですが、ジャド・アパトー組に大きく門戸を開いてくれたことに拍手(笑)
この作品の魅力は、全部たおさんが語ってくれているので、友人にこの作品をお薦めする時は、この記事を併せて紹介したいと思います!
アパトー組作品がまとめて出ましたからねぇ。去年はDVDに関してはコメディ当たり年でした。
面白過ぎる作品を観ると、レビューに何を書いたらいいか分かんなくなって、結局取りとめのないものに。。。
コメディのレビューなのに“どんだけ笑えるか”を書いてないですし^^;