2006年04月26日

ドリームキャッチャー (Dreamcatcher)

監督 ローレンス・カスダン 主演 トーマス・ジェーン
2003年 アメリカ/オーストラリア映画 135分 ホラー 採点★★★★

“クローゼットに潜む怪物”“幽霊屋敷”“宇宙人の地球侵略”など、昔からある怪談話を膨大な情報量と緻密な人物描写で一級エンタテイメントに仕上げる作家、スティーヴン・キング。映画化も数多くされるが、膨大な量の情報故に抽出し間違えると瞬く間に二流ホラー映画以下となってしまう。それはそれで楽しいんだが。抽出場所さえ間違えなければ、『デッドゾーン』『ミザリー』や本作のように傑作にもなりうる。たとえゲップとオナラと共にやって来る宇宙からの侵略者の話でさえも。

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【ストーリー】
ボク、ダディッツ。かれこれ20年以上も前から“チキュー”と現地人が呼ぶ星に住んでます。悪い奴らがそろそろこの“チキュー”へ来る頃だけども、準備万端です。昔、気のいい子供達に力を分け与えてましたから。

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“少年時代の出来事が現代に影響を与える”という、『イット』以降キングが延々書き続けているいつものキング節。この決して面白いとも目新しいとも言えない原作をこれほどまでに素晴らしい作品に仕上げたのは、キング自身“作家と映画脚本家の二足ワラジ”の稀有な成功例として著作にも名前を挙げる、ウィリアム・ゴールドマンの功績であろう。緩急の効いた丁寧な描写かつ大胆な展開、そして“とてつもない下品さ”を忘れない。
また、『再会の時』など監督作としては人間ドラマが多いものの、“スター・ウォーズ”シリーズや『シルバラード』『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』などでも分かるように、根っこは娯楽映画人間のローレンス・カスダンらしい、捉えるべき場所をよく理解したツボをわきまえた演出と共同脚本もまた本作を超一級のB級映画という稀有な作品に仕上げた要因なのでは。
なにかと評判の悪い本作。まぁ、そもそもオナラと共に肛門を突き破って現れる宇宙人の話の映画がショーシャンクになるワケがないんだから、「くだらない」って言われても困るってもので。その目立つ及び「ブビビビビィ」と耳に残る部分ばかりが注目されがちな作品ではありますが、特殊能力が決して人生を豊かなものにしていない主人公らの描写や、親子関係の描写に定評のあるキングだけある、ダディッツと母親の永遠の別れを描いた胸を打つシーンなど素晴らしい描写も多い本作。もちろん、ぴらぴら〜と逃げ惑う宇宙人を『地獄の黙示録』ばりに攻撃するシーンや、ミスター・グレイの中途半端な大きさの厭らしさ、そしてオナラといった所謂“下品”なシーンも素晴らしいですし。
「こんな映画好きなんだ?見損なったわ」とか言われる危険性大の本作ですが、隠していてもいずれバレますので、隠れファンの皆様はこの際カミングアウトしましょう。そして、この映画を好きになってくれる彼女でも見つけましょう。まず、いませんが……。

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熱烈なキングファンである母親の「出ろ!」の一言で出演を決めたらしい『ミスト』『パニッシャー』のトーマス・ジェーンを筆頭に、整理整頓が自由自在な“記憶倉庫”という、物忘れが激しい私にとっては羨ましい限りの能力を持つジョンジーに扮した『DATSUGOKU -脱獄-』のダミアン・ルイス、指をクルクルする仕草を物探しの際にちょいと真似させてもらってた『アイ・アム・ナンバー4』のティモシー・オリファント、何かが起こるのは分かるがそれが何なのか分からないという微妙な能力を与えられてしまった、ケヴィン・スミス組筆頭『コップ・アウト 刑事(デカ)した奴ら』のジェイソン・リーと、好きな顔触ればかりが中心に据えられた本作。
それだけではなく、最近では出た途端に善人扱いが多いものの、今回は男気満載の眉毛で役作りした『オブリビオン』のモーガン・フリーマンや、プロの軍人役者と化した『ロックアップ』のトム・サイズモアといった、サイドにまで充実したキャスティングが施されているのも嬉しい。
そして、なんと言ってもダディッツが可愛い。いや、『Mr.ズーキーパーの婚活動物園』のドニー・ウォールバーグの方じゃなく、子供の頃の方ね。もちろん、死を間近に迎えながらも子供の頃から変わらない純粋さと強さを表現した兄ウォールバーグも見事。「アイム・ダディッツ!」のシーンは何回観ても泣けますし。でも、それ以上にピュア丸出しの髪型と笑顔で登場するアンドリュー・ロブが扮したダディッツの愛らしさは絶品。そんなダディッツをいじめっ子から救い出したのが主人公らだったから、結果的に人類を救うことになるが、本来は彼らのためだけに自らを犠牲にしたんだろうなぁと。短い時間ながらも、そんな男の子の友情物語の巧みさにも唸らされた一本で。
(2015年3月16日 ちょいと加筆)


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考えようでは『ウルトラマン』の第一話とおんなじ話

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posted by たお at 03:12 | Comment(9) | TrackBack(13) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おはよーございます。
この映画、実に楽しかったですね(笑)
ただ、「スクワーム」以降 み○ずに異常に恐怖心を抱いておりまして、あの巨大み○ず状のものを体内から排出するという時点でのけぞってしまいました。←恐怖のとりこ(^o^;
きゃーーーーーーーー!やぁめぇてぇ!!!!!
と叫びながらも指の間から見てしまう感じ?(笑)
ゲップとオナラには要注意ですね(苦笑

こちらからもTBさせていただきました
Posted by chibisaru at 2006年04月26日 10:30
chibisaru様こんにちは!
コメント&TBありがとうございます!!
胸を張って言い切ります。傑作です。キング映画史上まれに見る傑作です♪
下品極まりないですけどね^^;
『スクワーム』ですかぁ。ミミズに食われながらも、必死に夜這いをかける哀しい男の物語でしたねぇ^^
Posted by たお at 2006年04月26日 16:37
はじめまして。TBありがとうございます。
私も大のキングファンです。
でも・・・映画になるとどうして・・・
確かにあの膨大な情報を2時間弱の枠に収めるのは無理なんですよね。
それにどの映画でも幽霊が出た、モンスターが出たという部分ばかりで、深い愛情物語の部分がどうしても割愛されてしまって、本当に残念な限りです。
私的には、キングは本だけに留めようかなぁと思っていますが、たおさんのように絶賛してくださるファンの方がいらっしゃるのは、ものすごく嬉しいことだと思っています^^
これからもよろしくお願いいたしますm(_ _)m ペコリ
Posted by ベル at 2006年04月27日 12:44
ベル様こんばんは!
コメント&TB、ありがとうございます!!
小説と映画は切り離して考える方で、思い入れの強い原作物は観ないようにしてます^^;
キングは『キャリー』から『ニードフル・シングス』くらいまでを短編長編問わず読み狂ってましたが、最近はあんまり読まなく……。ほとんどの映画化が失敗に終わっている中、コレと『デッドゾーン』は何回観ても好きな映画です♪
傑作中篇『霧』までもが映画化されるとの話もありますが、アレだけは勘弁して欲しいものです^^;
これからもよろしくお願いします。
Posted by たお at 2006年04月28日 02:28
たお様、TB返しありがとうございます。
私はキング氏の小説は全く読みませんが、映画はよく観ます。そしてB級でもそれ以下でも好きです。ドリームキャッチャーではエイリアンが出てくるとき「痛そう」としみじみ思いました。モーガンのステキ眉毛(引っ張ってみたい)も印象に残っています。カミングアウトしますよ。私。
Posted by Lance at 2006年05月07日 03:46
Lance様こんばんは!
いつもお世話になります♪
私は小説と映画は別物(極端に言えばまるっきり別の作品)と考えてるので、キングの映画はホラーとして単純に好きですよ^^
地下室にでっかい小動物がいようが、プレス機が追っかけて来ようが、大好きで♪
この映画のエイリアン出現シーンは、出産を経験できない男にとっては、想像しうる最悪の激痛かも><
カミングアウトしてくれる同胞がいてくれて嬉しいですw
Posted by たお at 2006年05月07日 20:37
TBありがとうございました。
予備知識がなかったのでまさかエイリアンが出てくるとは思いませんでしたが、けっこう好きです。
Posted by maimai at 2007年08月18日 00:50
maimai様こんばんは!
当時やたらと劇場で予告編が流れてましたが、宇宙人の宇の字も出さない徹底振り。出すのが恥ずかしかったんでしょうかねぇ?
Posted by たお at 2007年08月20日 00:35
僕はダメでした。

予告編のキャッチフレーズどおりでした。

「見せてあげよう。
  見たことを後悔するものを」
Posted by まさmasa at 2008年11月06日 01:47
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