1984年 アメリカ映画 114分 戦争 採点★★★★
いっつもこんな話ばかり書いてる気もしますが、床に入り眠りに落ちるまでの妄想タイムって、ホント楽しいですよねぇ。世界中にゾンビが溢れだしたり、突如戦争が勃発したりして「さぁ、どうやって生き延びるか!?」みたいな、中学生の頃から全く変わらない妄想ではありますが。なにせ妄想なんで、ライフラインの心配もなければ死ぬ心配もない都合の良い展開しかしないんですが、もう一人でワクワクしております。ワクワクし過ぎて眠れない、本末転倒な目に遭うこともしばしばですが。
【ストーリー】
アメリカ中西部の静かな田舎町。そこに突如ソ連・キューバ連合軍が空から侵攻、住人に攻撃を仕掛けてくる。辛うじてその難を逃れたエッカート兄弟ら若者たちは山中へ逃げ込み、パルチザンとなり強大な敵に戦いを挑むのだが…。
『レッドブル』然り『レッド・スコルピオン』然り、“レッド=共産主義”が共通認識だった、冷戦の緊張がピーク時のアメリカらしいタイトルの青春戦争アクション。この後ケヴィン・コスナーに振り回されることになる『ファンダンゴ』のケヴィン・レイノルズ原案・脚本を、極右と言うよりは口だけタカ派の印象もあるジョン・ミリアスが監督した一本。
侵攻方法として空から落下傘で降って来るってのには大いに首を傾げてしまうが、要は平和の中に漫然と生きていた若者たちを戦場という極限状態に追い込むための手段でしかないので、その辺を気にしてもしょうがないし、何よりもこの設定にワクワク出来るか否かで本作を楽しめるかどうかが決まってしまうとも。
とどのつまり、“十五少年漂流記”というか“蝿の王”というか“ガンダム”みたいな本作。自分たちの高校のフットボールチームの名前“ウルヴァリンズ”をそのまんま名乗ってしまうような、時折観ているこっちが赤面してしまうほど青臭い若者たちの姿もリアルで、そんな彼らのサバイバル生活の様子や、戦い様のファンタジーに終わっていないディテールの細かさも魅力。肉親や仲間の死だけではなく、自分らと然程世代の変わらない敵兵の死も丹念に描かれており、それらが本作に能天気さの欠片もない重いトーンを与えている。調子に乗り過ぎた結果、大人が本腰を入れた途端に手痛い目に遭う、青臭い若者ならではのストーリー展開や、ほろ苦い結末も含め作品全体的には重苦しいのではあるが、その重苦しささえ魅力になってしまう男の子心を存分にくすぐる状況設定が、やっぱり堪らなく好き。“戦争の無常さ”云々のテーマよりも、床下にリー・トンプソンとジェニファー・グレイが居るみたいな堪らない設定が圧勝。“近所で戦争”“近所の山でサバイバル”“連れはリー・トンプソン”。ほら、圧勝。
“ウルヴァリンズ”のリーダー役には、昨年惜しくも亡くなってしまった『11:14』のパトリック・スウェイジ。若い衆の兄貴分的印象が強い彼らしく、本作でも若者を束ねる頼れるリーダーを好演。中西部の風景が見事にハマる、男っぷりの良い面構えも魅力。また、パトリック・スウェイジの弟役には、本作が劇場映画デビューとなる『処刑ライダー』『ザ・チェイス』のチャーリー・シーン。父親のマーティン・シーンを彷彿させるというか、「ここまで似てしまうのか!?」と思わせる全てに力が入った演技と、一字一句力ずくのセリフ回しに驚かされる。エミリオといいチャーリーといい、エステヴェス家恐るべし。
そのパトリック・スウェイジとは『ダーティ・ダンシング』で踊り狂い、チャーリー・シーンには『フェリスはある朝突然に』で警察署で口説かれる、個性的なのっぺりとした鼻が可愛らしいジェニファー・グレイや、『タップス』のトム・クルーズばりのキラー・マシーン振りが目を引いた『ヒッチャー』のC・トーマス・ハウエルら、後にブレイクを果たす当時新鋭の魅力溢れる若手と、『フレイルティー/妄執』『ダブルボーダー』のパワーズ・ブース、『沈黙の断崖』のハリー・ディーン・スタントン、ペキンパー作品での強烈な印象が忘れ難いベン・ジョンソンなど、ゴツゴツしたベテラン勢のコントラストも効いてた本作だが、やはり一番の魅力を放っていたのは、『わんぱくデニス』のリー・トンプソン。
とても戦場が似合わない愛くるしい顔立ちのギャップもさることながら、普段は無口ながらも気に入った男性には花を持って追いかけまわす、ちょっとアホちゃんな可愛らしさが重苦しい本作の救いに。当時は「こんな可愛い子と一緒に居れたら良いなぁ」と妄想しちゃってたが、今は「こんな可愛い子に追い回されたいなぁ」と、似て非なる妄想を。やぁねぇ、歳を取るって。
都合の良い夢は楽しい
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