2010年11月16日

ロボコップ (RoboCop)

監督 ポール・ヴァーホーヴェン 主演 ピーター・ウェラー
1987年 アメリカ映画 104分 アクション 採点★★★★★

映画の製作費がとんでもない額にまで膨れ上がった80年代って、才能ある監督が少なくなったからか、スタジオの言う事を素直に聞く有能な監督が少なくなったからか、ちょいと話題になったヨーロッパの監督をハリウッドに引っ張り込んで、「なんでそれを?」とミスマッチな映画を作らせる風潮が流行った時期がありましたねぇ。『貴族の巣』のアンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキーに『デッドフォール』を撮らせてみたり、『ルトガー・ハウアー/危険な愛』のポール・ヴァーホーヴェンに本作を撮らせてみたりと。日本で言えば、市川崑に『グーニーズ』を任せるみたいな感じ?まぁ、本国の人もビックリしたことでしょうに。

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【ストーリー】
犯罪発生件数が増加の一途をたどる、近未来のデトロイト。巨大企業オムニ社によって運営されるこの街の警察署に、一人の警官マーフィが配属される。だが、配属早々彼は凶悪犯罪者クラレンスらに惨殺されてしまう。しかし彼の遺体はオムニ社に回収され、極秘裏に計画されていたサイボーグ警官製造プログラムによりロボコップとして復活。街の治安を守るため立ち上がるのだが…。

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ちょっぴり血糊増量中のディレクターズカット版で観賞。
プロットだけを見る限りでは、ロボット警官がドキューンバキューンと活躍する、およそ大人の鑑賞に堪えるとは到底思えない作品。お子様向けの夏休み映画。当時誰もがそう思ってたに違いない本作だが、ふたを開けてみてビックリ。毒々しいまでの社会風刺と、さっきまでピンピンしてた人間が一瞬にして肉塊と化す、ホラー映画顔負けの血みどろ描写で彩られた、お子様お断りのSFアクション映画に。
購買意欲を増させるために過激化が進むCMと、どんなに沈痛な面持ちで悲惨なニュースを伝えていても、次に明るい話題が来ればさっさと笑顔に戻るニュースキャスター、視聴率の為ならなんでもやるTV番組。痛烈なメディア批判から幕を開ける本作。もう初っ端から毒々しい。富が一部の巨大企業に集中する、中世の貴族と貧民の関係となんら変わらない現代のアメリカの姿も、ヴァーホーヴェンは外からやってきた人間らしい冷め切った視線で映し出している。社会を動かしているのが、巨大な野心と野望を持つ人間ならまだしも、ちょっとしたエゴと出世欲に駆られたサラリーマンに過ぎないってのも、生々しいまでにリアル。
生々しいのは、『遊星からの物体X』のロブ・ボッティンによる過激なゴア描写も然り。どんな人間でも、中を開ければ血とモツの詰まった肉袋だと言わんばかりの強烈な死が、随所随所に描かれている。死のダンスを踊りながらボロ雑巾のような肉塊となるオムニ社員、苦痛の叫びを延々上げ続ける主人公、ドロドロに溶けながら「ヒョーヒョー」叫び、右往左往した揚句木っ端微塵となるチンピラ。どれもこれも強烈。“人間、死んだら終わりなんだ”という、当たり前なんだが何となく目を背けてる事実を突き付けられているようにも。「大丈夫!俺みたいに直してくれるよ!」と、瀕死の相棒にロボコップが言う全く励ましになってないと言うか、そのロボコップ自体が瓦礫に埋もれてヒーヒー言ってるのに何を言うかって希望のなさにも、それが感じられたりも。

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もちろん毒々しさだけでは、こんなにも面白い映画にはならない。『スターシップ・トゥルーパーズ』同様、ロッカールームは男女一緒で裸だらけで「ヤッホーイ!」とはなるが、無論それだけでも面白い映画にはならない。しかしながら本作は、決して喉ごしスッキリ爽やかって映画ではないが、アクション映画として痛快。アクションシーンの歯切れの良さや、ビシリと締めるしびれるラストも功を奏しているからだが、やはりなんと言ってもロボコップがカッコ良いからの一言。
壮絶な死を遂げた揚句、記憶を消され、勝手にロボットに改造された元マーフィのロボコップ。記憶がないまま活動している分には良かったのだが、なまじ色々と思い出しちゃったんで大いに悩むロボコップ。さっきまでチヤホヤされてたのに、親会社の幹部に盾突いた途端、仲間に一斉射撃を食らうロボコップ。そんなフランケンシュタインのような哀愁を漂わせるロボコップ。初めて観た時は、そのデザインに正直一瞬戸惑いを覚えたものだが、いざ活躍し始めると、堪らなくカッコ良い。バックに流れるテーマ曲とセットじゃないとイマイチ締まらないが、カッコ良いものはカッコ良い。いかにもロボット然とした動きのトロさも、良いじゃないですか。頭から最初に動き、身体が後からついてくる“ロボコップ動き”を、当時は誰もが真似したものです。少なくても、私のクラスでは。真横に銃を伸ばし、そこから上を見ずに銃だけ身体の前をクロスして上に向ける仕草なんて、真似の上手い奴はちょっとした人気者になれましたし。「その時、口を少し歪ませるのがコツだよ」と、友達の成澤くんも言ってましたし。

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で、そのロボコップに扮するのは『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー』『スクリーマーズ』のピーター・ウェラー。すぐにでも歌いだしそうなロック屋っぽい面構えと、役名のマーフィってのも相まって、いつもピーター・マーフィを思い出しちゃいますが、今となってはそのどちらも思い出す人は少なくなっちゃったのかなぁと。そのピーター・ウェラーだが、役者としてはあまり嬉しくない上に難易度も高い、顔のほとんどが見えないロボコップ役を、単調になり易いロボットの動きにアクセントを加えたり、口の形をオーバーに変えるなどし、その感情までをも見事に表現。あまりに見事なので、顔が出ちゃう後半はなんとも肩透かしな感じもありましたが。
また、当時はまだデ・パルマ作品でのちょい足りないヒロイン役が印象深かったナンシー・アレンや、ビルから落下すると腕が伸びるトータル・リコール』『キャノンズ』のロニー・コックス、凄味のある顔と裏腹に声が甲高いカートウッド・スミス、何年経っても見る度に“ツイン・ピークス”の口が悪いアルバートを思い出しちゃうミゲル・ファーラー、同様に何年経ってもキラーボブにしか見えないヒューマン・キャッチャー/JEEPERS CREEPERS 2』『消えた天使』のレイ・ワイズらと、凄まじい顔ぶれが出演している本作だが、なんと言っても一番の注目株は、やはり『スターシップ・トゥルーパーズ2』のフィル・ティペットによるED‐209
ロボット警官計画としては、コストパフォーマンスも機能性も倫理面の問題も、それこそ見た目の迫力も、何処をどう考えてもロボコップよりも優れているとしか思えないのに、うっかりオムニ社の社員を一人殺しちゃったんで不採用となってしまった、とっても不憫なED‐209。階段を前に躊躇する様が可愛い、ED‐209。転んだら起き上がれず、駄々をこねる子供のように暴れる様が可愛い、ED‐209。そのあまりの可愛さに、ED萌え続出。本当に続出したかどうかは分かりませんが、私の周りで2人はいるので、もう続出だと。
そんなこんなで、何度観ても面白い作品であるのには変わりないので、問答無用にこの評価。

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MGMと共に、新作の話も消えちゃうんですかねぇ

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posted by たお at 00:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■ら行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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