2010年11月11日

狼よさらば (Death Wish)

監督 マイケル・ウィナー 主演 チャールズ・ブロンソン
1974年 アメリカ映画 94分 アクション 採点★★★★

当初はしっかりと目的があっての手段だったのが、いつのまにかその手段そのものが目的にすり替わってしまう事って、少なくないですよねぇ。“猫を飼う”って行為の中での餌やりが、あんまりにも猫が増え過ぎちゃったんで、餌をやり続ける行為自体が猫を飼うになったみたいな。なんか違う気もしますが、まぁそんな感じの何か。

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【ストーリー】
犯罪が多発するニューヨーク。設計技師であるポール・カージーの妻と娘は、自宅で暴漢に襲われ、妻は死亡、娘は廃人と化してしまう。警察の捜査の進展も望めない中で、ポールは自ら銃を手に、街にたむろする悪党どもを次々と葬り去っていき…。

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これ以降に製作される復讐物、自警物に多大な影響を与えた、後にシリーズ化もされるチャールズ・ブロンソンの代表作。ハービー・ハンコックによるサントラも、なかなか良い。
家族を失った男の復讐を描く本作。“復讐を描く”と言いつつも、主人公は肝心の犯人には手出しはしない。探しもしない。当初こそは『ライフ・アクアティック』『ザ・フライ』のジェフ・ゴールドブラムらが扮する犯人たちへの復讐だったはずが、その対象は街にはびこる犯罪全てと広がっていく。それだけを描いているのであれば、アメリカ人の心に根付く自衛精神に火が付くちょっとした痛快作で終わるのであるが、本作はチンピラを殺す行為そのものが目的となっていき、やがてその殺す行為に恍惚感すら覚えていく主人公の姿を丹念に描くことで、復讐の虚しさや法の不備、主人公が犯罪者であるにもかかわらず英雄として崇められ、考えもなしにその話題に飛び付く大衆の愚かさなど、社会全体に対する痛烈な皮肉を感じさせる一本となっている。
主人公の変貌だけではなく、『ナイト ミュージアム2』のクリストファー・ゲストもコッソリ出ている警察の描き方も面白い。決して手を抜いているわけではないのだが、あまりの犯罪の多さに手に負えなくなっている状況の中、犯罪者を殺しまくる男が登場。同じ犯罪者として逮捕せねばならないのだが、民衆は大歓迎だし、その影響で犯罪件数も激減。逮捕してもしなくても問題になるならば、いっそのことウヤムヤにして主人公に街を去ってもらおうと考え付く司法の姿が、妙に力強い説得力を持っている上に、昨今騒がれているビデオ流出問題にも似た何かを感じさせ、非常に興味深い。

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シリーズが進む毎に、拳銃持った老人が若者を追いまわす映画になってしまう本シリーズだが、一作目の本作では、ポール・カージーの複雑な内面もしっかりと描いている。
ガンマニアの父と殺生嫌いの母という、コインの裏表のような両親を持つポール。温厚で銃を持つことを嫌い、徴兵も拒否する表の姿は母親の影響が色濃く出ているが、「父親が大好きだった」と語られるように、その内面奥深くに暴力的な一面も潜んでいる。それらの性格が事件を切っ掛けに入れ変わっていく様が、銃を手にした途端に眼光が鋭くなるチャールズ・ブロンソンの迫力で巧みに描かれているとも。
確かに、肉体派のイメージも強いチャールズ・ブロンソンが銃を手にする姿に違和感がないのは、本作に於いてはマイナスの効果を与えてしまっているが、その真っ当なヒーローに見えなるブロンソンだからこそ、殺人行脚が波に乗り始めると同時にやたらと陽気になる姿に得も知れぬ違和感と不気味さを覚える結果となっているのでは。殺す喜びを完全に覚えたラストショットなんて、ちょっとしたホラー並みの不気味さでしたし。

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殺人者として順風満帆の老後を

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posted by たお at 01:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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