2008年 アメリカ映画 100分 アクション 採点★★★
アクション映画の主流が、なにかと悩める男が主人公ってのになって久しいですねぇ。今では、あのジェームズ・ボンドすらウジウジ悩んでますし。まぁ、そんな悩める姿がリアルで親近感も湧くんですが、別に映画に求めているのが“共感”のみじゃないんで、滅法強くてやたらモテモテという男の夢を描いた映画ってのも観たくなるもので。先日観た『マチェーテ』なんかまさにそれだったんですが、考えてみればセガールの映画って、常にそんな感じだなぁと。
【ストーリー】
酒とギャンブルに溺れ、家族も仕事も失った元刑事のマット。多額の借金に首が回らない彼の前に謎の老人が現れ、借金を全額肩代わりする代わりに、ある仕事を遂行するように命じる。その仕事とは、法が裁けぬ悪党を葬る闇の仕事人。已む無く仕事を請け負い続けるマットであったが、新たな標的として処刑を命じられたのが彼の親友であり娘の義理の父親で…。
似たようなタイトルとジャケットだらけなもんで、てっきりもう観たとばかり思ってたセガールアクション。監督は、セガールと初顔合わせとなるロエル・レイネ。
『沈黙の激突』やら『沈黙の追撃』やらと、出来が悪い以前に映画として形を成していない作品群を通過しているんで大分甘い評価ではあるが、アクション映画としてきちんと作りこまれた印象ある本作。どん底に落ちた主人公が暗殺者へと身を落とす経緯や、その組織の不透明さとそれに対する不信感、その不信感が基となる物語の捻りなど、下手に脇道に逸れずシンプルにまとめられたストーリーが心地いい。多少展開がまどろっこしいが、カッコ良い銃撃戦を描こうとした工夫が見えるクライマックスや、使い所を絞った結果凄味を増したセガール拳の迫力などもあり、ここ数年のセガール映画の中では上々の出来。本人は不満でしょうが、お気に入りの女性をはべらかす“セガールハッピータイム”がないのも良い。だって、いつも楽しいのはセガールだけなんですもの、アレは。
理解不能なほどモテモテで、下手に痛めつけようとすれば、ただ単に機嫌を損ねて三倍返しをしてくる傍若無人な強さはいつも通りのセガールなのだが、今回は珍しく酔いどれで借金まみれというあられもない姿を晒す。まぁ、借金取りに追われてるわけでもないですし、ただ怖い顔で酒瓶を持ってるだけなんで、いつもと大して変わらないんですが。デップリとした体型と、何を言ってるのか分からないモシャモシャ喋りもいつも通りではあるんですが、久々に日本語を披露したり、子役相手に素の笑顔を見せたりと、ファンとしては嬉しい瞬間も。「最後、死んじゃうんじゃないの?」って空気が漂っているのも、なんか新鮮。もちろん、漂ってるだけですけど。
いつもなら“主演セガール 以上!”で終わってしまうセガール映画なのだが、今回は『ニア・ダーク/月夜の出来事』『ハード・ターゲット』のランス・ヘンリクセン、タランティーノの『フォー・ルームス』でサミュエル・L・ジャクソンの代打的登板で注目を浴びたポール・カルデロンと、役者らしい役者が脇を固め、本作に映画っぽさを与えている。特にランス・ヘンリクセンの痺れるようなカッコ良さは相も変わらず健在で、少ない出番ながらも作品をビシリと締めてくれる。ただまぁ、セガール映画でランス・ヘンリクセンを見れた喜びもある半面、セガール映画でランス・ヘンリクセンを観ちゃった気まずさも、なきにしろあらず。
もう、老人扱いなんだなぁ…
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