2010年 アメリカ映画 102分 コメディ 採点★★★
妖精って響きだけで考えれば、何か羽根の生えたちっちゃいのが「アハハハハー♪」って飛んでいる、可愛い半面ちょい鬱陶しいイメージがあるんですが、映画なんかに出てくる歯の妖精だけに絞ってみると、『黒の怨』のマチルダ婆さんやら、「チュチュ着た黒人が夜中に子供部屋に立ってるから、家の人にいきなり撃たれたりして大変なんだよ、歯の妖精も」とボヤくチュチュ着たエディ・マーフィやらと、おおよそ妖精のイメージからほど遠い物ばかり。で、今度の歯の妖精は、ロック殿下。もうきっと、歯の妖精ってそんな人ばっかなんだ、本当は。そんな、一般的な妖精のイメージからほど遠い人たちが、根もとにちょっと血が付いた乳歯でみっちみちになった袋を背負って、夜な夜な徘徊してるんだ、絶対。

【ストーリー】
かつてはスター選手だったが、今では落ちぶれ夢も希望も信じない男となった、ホッケー選手のデレク。そんな彼のもとに、突然妖精の世界から召喚状が届き、背中から羽根まで生えてくる。何事が起きたのか理解できないまま妖精の世界に飛んで行ったデレクに対し、妖精の長が子供の夢と希望を破った罰として、歯の妖精になることを命じるのだったのだが…。

「あのロックが妖精に!」と話題になったが、日本では映画祭に於いて、およそ良いとは言えない状態で一度上映されただけに終わったコメディファンタジー。
内容的には非常に他愛のない本作。夢のない男が夢の世界に触れることで周囲との関係に変化を与え、自分もまた幸せを掴むって物語は、それこそ山ほどある。また、シュワルツェネッガーが子供に翻弄されたり、スタローンが婆さんに翻弄されたりする、マッチョ系の俳優がそのイメージを逆手にとって笑いを生むギャップコメディってのも、同様に珍しくはない。本作もそれらの定型から一歩も踏み外さない無難な内容なのだが、どうにも嫌いになれない。どっちかと言えば、好きな方。いや、全然好き。
ロック殿下が羽根生やしたチュチュ姿で立ってる時点で、もうほとんどこの映画は完結したようなものなのだが、その強烈過ぎるインパクトに頼るだけではなく、細かい笑いを随所に挟みながらしっかり物語を全て丸く収めていく手際の良さは、観ていて気持ちが良い。「バカバカしい」って言われればそれまでだが、こっちも別に重厚なドラマを期待して観ているわけではないので、ジャケットを見た時に想像し期待する内容を、ネタの持ち味を存分に活かして作り上げているって点は、評価したい。

ホッケー選手の傍ら、副業で歯の妖精もやってる主人公に扮するのは、『ギャングスターズ 明日へのタッチダウン』のドウェイン・ジョンソン。抜けた歯はおろか、生えてる歯まで根こそぎ持っていきそうな彼の妖精姿が大いに笑わせてくれるが、考えてみれば『Be Cool/ビー・クール』でも類稀なるコメディセンスを見せてたんで、違和感がないどころか、似合ってさえいる。まぁ、似合っているからと言って、あんなのが夜中に子供の部屋に立ってたら、恐怖のあまりきっと見なかったことにするんでしょうが。元々筋肉だけに頼らない、役者として器用な所を持ってた彼だけに、コメディ部分とドラマ部分をちゃんと演じ分けているし、周囲を固める芸達者な顔ぶれとの絡みにも見事に対応していたようにも。
共演には、色々と考えているようで、実のところ何にも考えてなさそうなシングルマザーの恋人役で、かつては出てくる度に「美人だなぁ、綺麗だなぁ」と見惚れてしまったアシュレイ・ジャッド。まだそんな歳じゃないのに、しっかりと刻まれた年輪に驚いたりも。
その他にも、オスカーではよく見ていたのでそんな印象はなかったのだが、映画出演は8年ぶりだったりするビリー・クリスタルや、扱いが大物宝塚スターのようだったジュリー・アンドリュースと、錚々たる顔ぶれ。中でも、“エキストラ:スターに近づけ!”においても強烈な印象を残したスティーヴン・マーチャントは絶品。その歩く爪楊枝のような風貌もさることながら、絶妙な間の取り方で相手も自分も活かす笑いの取り方は見事。本作の面白さは、こういう達者な役者が間に立ってたからこそなんだなぁと。

やっつけなのは邦題だけ
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そうか・・・
物忘れの粉で記憶を消されて妖精の可愛いイメージだけが残っていたけど、実はある意味ホラーなビジュアルのおっちゃん妖精たちだったのか・・・
ありきたりの内容でも、キャスティングがいいと満足感が違いますよね。
ザ・ロックとマーチャントのコンビ・プレーはかなりキマシタ!
ありきたりでも、丁寧にしっかりと作られていれば全然面白いんですよねぇ。面白いから何度も作られて“ありきたり”になるんですし。