2010年11月01日

勝利への脱出 (Victory)

監督 ジョン・ヒューストン 主演 シルヴェスター・スタローン
1981年 アメリカ映画 116分 ドラマ 採点★★★★

大作のほとんどが世界同時公開になってしまった弊害か、最近めっきり正月映画らしい正月映画ってのもなくなっちゃいましたねぇ。かつては正月気分に拍車を掛けるスケールのでかい作品がこぞって公開されてたんで、毎年その時期が楽しみでしょうがなかったんですが、最近はそんなイベント感も少なくなって、なんとも寂しい限りで。それにしても、思い出すと1981年ってのは、まさに正月映画らしい作品が集中した素晴らしい年だったなぁと。『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』に『キャノンボール』『勝利への脱出』、『タイタンの戦い』に『マッドマックス2』と、親に連れて行ってもらわない限りは映画が観れないんで、観れる本数に限りのあった子供の私にとって、どれを観るべきか真剣に悩んだもので。さすがに、ボー・デレクの裸見たさに「『類猿人ターザン』が観たい!」とはお願いできませんでしたが。

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【ストーリー】
第二次世界大戦最中のドイツ。捕虜収容所に収監されていた、サッカー選手として名を馳せる連合軍大尉コルビーのもとに、ドイツ軍選抜との試合の申し入れが入る。快諾したコルビーは選手の選抜を始めるが、一方収容所内では大がかりな脱走計画が練られていた。この試合を大々的なプロパガンダに利用したいドイツ軍、脱走計画を進める連合軍、試合に勝ちたい選手たち。それぞれの思惑を乗せたまま、ゲームが開始される。

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巨匠ジョン・ヒューストンによる、サッカーを題材にした戦争ドラマ。サッカーの神様ペレが出演していることも話題に。
当時この映画を観終わった浮かれ気分そのままに、この作品の基となったドイツ空軍対ディナモ・キエフの親善試合の物語を漫画で読み、スポーツマンの誇り高き生き様に感銘を受ける一方、あまりに救いのないその結末に、浮かれ気分も一気に吹き飛ぶ衝撃を覚えたもので。
で、本作。脱走物にしては収容所は思いのほか快適そうだし、途中で企てられる脱走計画も詳細がさっぱり分からないので、イマイチ盛り上がらず。ドラマとしても、選手とコーチ、思惑の異なるコーチと上官、連合軍とドイツ軍などなど、存分に厚みが出そうな組合せであるにも関わらず、ただ淡々と時系列順に出来事を描いているだけのようだし、登場人物もその表面しか伝わってこない感じも。まぁ、緻密に計画してグループで脱走しようとするイギリス人と、一人ワンパクに脱走するアメリカ人という、お馴染の構図は楽しかったですが。
しかしながら、いざ試合が始まると一変。ここに至る間さり気なく描かれていた“犠牲の精神”“チームの精神”も功を奏し、これが盛り上がる盛り上がる。ペレ自身が組み立てた試合展開の中、往年のスター選手が華麗な技を披露する様も見事なのだが、わかりきったベタな展開とはいえ、それまでにドイツ側による悪辣なプレーと、思惑そっちのけで選手として勝ちたいスポーツマン魂を見せつけてきた分、1点入る度に素直に拳を振り上げ喜んでしまう。実際、当時劇場で観た時は、観客が一斉に歓声を上げてましたし。確かに、どさくさにまぎれての脱走劇に、「手ぶらじゃなにかと大変だろうに」と思ってしまうこともあるが、そんな些細な疑問くらいじゃ消し去れない、勝利の(引き分けであっても)高揚感が堪らない。

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ペレを筆頭に、往年のスター選手が勢揃いした本作。というか、フィールドに立っている俳優は、スタローンとマイケル・ケインのみ。俳優にプロ並みのプレーをさせるくらいなら、選手に演技させた方がまだ楽だったんでしょうねぇ。
もちろん選手にずーっと演技をさせるわけにもいかないので、『エクスペンダブルズ』のシルヴェスター・スタローンと、『トゥモロー・ワールド』のマイケル・ケインを主演に。そういえば、『追撃者』もこの組合せ。ドイツ軍将校役で出演している、『シャッター アイランド』のマックス・フォン・シドーとスタローンといえば、もちろん『ジャッジ・ドレッド』ですねぇ。サッカーの神様ペレとは全く関係ないですけど、マックス・フォン・シドーといえば『ペレ』っていうどうにも荷が重い映画もありましたねぇ。
話を本作に戻すと、マイケル・ケイン自体は脱走したいのかしたくないのか良く分からない役柄でしたが、スタローンは良く頑張った方では。まずは脱走ありきながらも、徐々にチームプレーを学んでいく典型的アメリカ人を好演。慣れないサッカーに、指を骨折したとか脱臼したとか、スタローンに付きものの怪我武勇伝も、当時話題に。考えてみれば、今ではアメリカでもサッカーが盛んなので、アメリカ人がサッカーをやってても違和感ないんですが、当時はまだ“アメリカ人はボールを蹴るより持つ”ってのが定番だったんですよねぇ。ということは、今の若い世代や次の世代がこの映画を観ても、なんでスタローンがサッカーに馴染もうとしないのか理解できないんでしょうねぇ。時代って、こんな感じで変わっていくんですねぇ。
神業プレーはスローで何度もしっかりと見せる本作。中でも、やっぱりペレのバイシクル・シュートは圧巻。何度観ても、このシーンはゾクゾクする。あまりにこのシーンがカッコ良いんで、当時真似して後頭部を強打する小学生が続出したことを思い出しますねぇ。いやぁ、あれはホント痛かった

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演技しか出来ない人と、サッカーしか出来ない人との助け合い

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posted by たお at 02:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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