1988年 アメリカ映画 101分 ファンタジー 採点★★★
概ねおうど色と黒で事足りるハロウィンをしり目に、ヒタヒタとクリスマスが近づいておりますねぇ。街中そこかしこから、問答無用でワムとマライヤと山下が流れだしますよ。全然“サイレント・ナイト”なんかじゃないですよ。
【ストーリー】
傲慢で優しさの欠片もないTV局の若手社長フランクは、クリスマスイブでさえもスタッフを家に早く帰すことなく生放送特番を組むので、誰からも好かれていなかった。そんなフランクのもとに3人のゴーストが現れ、彼の過去・現在・未来の姿を見せつけ…。
『16ブロック』のリチャード・ドナーによる、ディケンズの“クリスマス・キャロル”をベースにしたファンタジーコメディ。
クリスマスが近づいてくると、なんとなく毎年観たくなる定番の一本。“クリスマス・キャロル”の製作中に、その物語と同様の目に見舞われる主人公を描く本作。20年以上前の作品とはいえ、過激化の一途を辿るメディア界の内幕も垣間見え、なかなか興味深い。ちらっとマイルス・デイヴィスやデヴィッド・サンボーンが顔を出す豪華感や、歌って踊って無理やり締める強制的な高揚感に、クリスマス気分を味わうことも出来ますし。真夏に観れば印象も違うでしょうが、なにかとタガが外れるクリスマスの時期に観るには丁度良い。
肝心の未来のゴーストが見せる光景に、傲慢男を悔い改めさせるまでのパワーがないのが若干痛いが、ユニークなキャラクターたちと、仏頂面から繰り出されるビル・マーレイ独特の笑いがその辺を帳消しに。笑いに走り過ぎず、ファンタジーに走り過ぎずと、その絶妙なバランス感覚は、どんな題材であっても最低限及第点までは持って行くリチャード・ドナーの手堅さが出た結果かと。
最後に流れる、アニー・レノックスとアル・グリーンによる“Put a Little Love in Your Heart”も、良い感じ。ユーリズミックスが低迷し始めていた時期だっただけに、劇場でこの歌を聴いた時は「あぁ、やっぱりアニー・レノックスの声はいいなぁ」と、改めて実感したもので。
主役のフランクを演じるのは、『チャーリーズ・エンジェル』『ブロークン・フラワーズ』のビル・マーレイ。最近では仏頂面でただ立っているだけなのに、ジワジワ笑わせる芸風の印象が強まって来ているが、この頃はまだまだ身体も使って笑わせに来る。顔は仏頂面のままですが。ただ、その表情の切り返しのキレの良さは、さすが。
そのビル・マーレイを中心に、色々観ているはずなのに受ける印象が常に“永遠のマリオン”であるカレン・アレン、ケラケラ笑いながら殴りつけて来る様が痛快かつ恐怖だった『キャプテン・ウルフ』のキャロル・ケイン、ジャンル的にはベニチオ・デル・トロと同じ顔の『のるかそるか』のデヴィッド・ヨハンセンらと、芸達者揃い。せっかくのクリスマスだってんで、大御所のロバート・ミッチャムや、“600万ドルの男”リー・メジャースなども登場。個人的には、“バイオニック・ジェミー”の方が好きだったんで、リンゼイ・ワグナーに出て欲しかったんですが。
そんな中心組以外にも、マーレイ兄弟やら、マータフさんちの長男やら、リチャード・ドナー絡みで必ずと言っていいほど顔を出すスティーヴ・カーンやらと、隅々目を離せない顔ぶれが揃った本作。基本的に『俺たちに明日はない』から変わっていないマイケル・J・ポラードや、『デッドリー・フレンド』で顔を破裂させてたアン・ラムジー&その夫なんかも出てますし。
「お前も歌え!」と強要してくる
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