エクスペンダブルズ (The Expendables)

監督　シルヴェスター・スタローン　主演　シルヴェスター・スタローン
2010年　アメリカ映画　103分　アクション　採点★★★★

スターってのにも色々いますが、特にアクションスターってのは独特の輝きを放っているなぁと。強さや正義の象徴としてスクリーン上で活躍するだけの説得力を、演技のみならず身体で表現し、スクリーンの外でもそのイメージを常に持たれ続けている感じ。なんか、本物のプロレスラーにも通じているような気も。もちろんスタローンやシュワルツェネッガーが、映画と同じように無敵の人間なんかじゃないのは頭では十分理解しているんですが、もし万が一とんでもない窮地に陥った時、近くにいる名優なんかよりもスタローンの方が圧倒的に「なんとかなるんじゃないのか？」という安心感を与えてくれるだろうし、下手すれば本物のレスキューなんかよりも、ずっと頼りになりそうな気にまでなってしまうんじゃないかなぁと。ホント、アクションスターってのは凄いなぁ。



【ストーリー】
いかなる戦場にも挑む、バーニー率いる少数精鋭の凄腕傭兵軍団“エクスペンダブルズ”。ソマリアの海賊だって、赤子の手を捻るようなもの。そんな彼らに舞い込んだ新たな依頼は、南米の島国ヴィレーナを牛耳る独裁者の抹殺。しかし、背後に見え隠れするＣＩＡの思惑に嫌気がさし仕事を断るバーニー。しかし、現地で一人圧政に反旗を翻す将軍の娘サンドラのことを放っておけず、一人でヴィレーナに向かおうとするバーニーだったのだが…。



新旧アクションスターを勢揃いさせただけではなく、スタローン、ブルース・ウィリス、アーノルド・シュワルツェネッガーという“プラネット・ハリウッド”出資者３名をワンフレームに収めた、筋肉映画ファンよだれだだ漏れの一本。早くも続編のプロジェクトが始動し始めたとか。
“オールスター映画”と謳いながらも、揃ったスターがなんとも小粒だった“オーシャンズ・シリーズ”とは違い、集結したスターが揃いも揃って大粒な本作。独裁者の圧政に苦しむ小国に乗り込んで大暴れするって物語は、それこそ筋肉映画全盛の８０年代に山ほど作られた内容であるし、その定番物語を豪華筋肉スター競演で作り直した、筋肉映画ファンに贈るちょっと早いお歳暮のような作品として楽しむのも全然構わない本作。これ程贅沢な映画は、こんな中途半端な時期ではなく、お正月映画として公開するべきだろうとも。ただ、やはりこの作品に見え隠れするのは、還暦を迎え見事な復活を遂げた『ロッキー・ザ・ファイナル』や『ランボー　最後の戦場』でも顕著だった、スタローンの筋肉説教。もちろん、見事なまでに敵兵が血みどろの木っ端微塵になる画面上ではそんな説教シーンはない。ひたすら走り、飛び、身体をぶつけ合うのみ。そう、今回は自身が先頭に立って身をもって見せる“無言の説教”。「アクション映画は身体を張って作れ！」「観客に強さと痛みを感じさせろ！」「観客が納得するだけの技と身体を見せろ！」「出来ない事は特訓しろ！」と、至極当たり前のことではあるが、当り前ではなくなりつつある昨今に向けたメッセージのような感じも。クライマックスの宮殿爆破のＣＧ処理がビックリするほどショボイのも、「ＣＧなんて俺の筋肉の敵じゃない！」というスタローンの主張なのではと。きっとそうだ。絶対そうだ。
そんなスタローンの筋肉説教を聞いていると、ふと先日ＴＶで某女優が「殴り合いのシーンで、人を殴ったことがないからパンチの出し方が分からなくてぇ」とか言ってたのを思い出したりも。事前にそんなシーンがある事も、人を殴ったことがないことも分かっているんだから、特訓してから現場に来い。映画に失礼だ。



もちろん、そんな“正しいアクション映画の作り方”を説く無言の筋肉説教抜きにしても、あり得ないほど豪華な筋肉スターの競演を存分に楽しむことが出来る本作。スタローンにジェイソン・ステイサム、ジェット・リーにミッキー・ロークと、この顔ぶれがただダラダラ９０分喋っているだけでもお金を払って観に行きたいと言うのに、ちゃんとしたアクション映画での共演だっていうんだから、もう堪らない。その顔合わせの中でも、やはり目玉となるのはスタローンとシュワルツェネッガーの初共演。ブルース・ウィリスもそこに入れたい所だが、なんか猪木と馬場の間に鶴田が入ったような感じなので、ここでは敢えて除外。
その猪木と馬場が同じリングに立った時と同じような興奮が味わえる２人の共演シーン。『デモリションマン』でも構想はされたがあっさり却下された、筋肉映画ファンが２０年以上待ち続けた夢のシーンでもある。シュワルツェネッガー自体はフラっとやって来てフラッと帰っていく、スペシャルゲストスター扱いだし、物語にも絡まない。もちろんスタローンとも対決しない。精々ジャングルで走り回るランボーにチクリと皮肉を言うシュワに対し、政界進出についてスタローンが皮肉を言い返すだけ。分かっていながらもガッカリしてしまうものだが、夢の対決はやはり夢のままであった方が良い。もしあの時、同じリングに立った猪木と馬場が実際に戦っていたら、今ほどのカリスマ性を持ってなかったようにも思えますし。今後も夢を持たせ続けながら、筋肉映画界の両極に君臨し続けて頂きたいなぁと。



圧倒的なまでに身体を作り上げ、アクション映画の主役として見事な説得力を持たせたスタローンを筆頭に、『追撃者』でスタローンと殴り合ったミッキー・ローク、『ロッキー４／炎の友情』でこれまたスタローンと殴り合ったドルフ・ラングレン、殴り合ったかどうか記憶が定かではないが『スペシャリスト』で共演済みである『ＤＯＡ／デッド・オア・アライブ』のエリック・ロバーツと、過去に殴り合った顔ぶれが集結。なんでしょう？殴り合った後に、肩でも組みながら夕陽でも見てたんでしょうか？青春ですねぇ。
そんなスタローン共演済み組以外にも、ドルフ・ラングレンとの対決が、その体格差もあって『ユニバーサル・ソルジャー』以上の興奮だった『ローグ　アサシン』のジェット・リー、その４０過ぎても若造扱いだったジェット・リーとの共演が三度目となる、『アドレナリン』の初代ハゲ王ジェイソン・ステイサムらと、もう誰の何処のどの組み合わせから書いたらいいのか迷ってしまうほど、新旧アクションスターの素晴らしい顔ぶれが筋肉の佃煮の如く勢揃い。ただ揃えただけではなく、きちんとキャラ設定も役割分担も作品中に消化されているのだから見事。まぁ、“新旧”とは言っても、“新”が３０代後半ってのにアクションスター不在の昨今を感じるんですが。



これだけでもうトンカツで腹いっぱいご飯を食べたかのような満腹感だというのに、スタナー抜きでスタローンを病院送りにしたＷＷＥ殿堂入りレスラーであるスティーヴ・オースティンと、元ＵＦＣ世界ヘビー級王者のランディ・クートゥアが戦うっていう、食後のデザートに豚の角煮が出てきたかのような尽きる事のないサービス精神も見事。ある意味頭の中から消えてくれない映画である『北斗の拳』のゲイリー・ダニエルズに、『ロンゲスト・ヤード』のテリー・クルーズ、こっそりノゲイラ兄弟と、食後に頼んだお茶が肉汁だったかのような、ダメ押しのサービスまで。
完成までの間、様々なアクションスターの名前が挙がっては消えた本作。ある意味自分のシマがしっかり出来ているスティーヴン・セガールや、未だ諸問題が解決していないウェズリー・スナイプスが断るのも分からなくはないのですが、ヴァン・ダムはなんだ？断れる状況にいないだろうに。続編にも名前は挙がっているようなので、ちょっと注目。
思春期にこの映画を観ていたら、どんなに興奮しただろうと。まぁ、２回目の思春期である現在でも充分興奮しているんですが。しかしながら、本作はＲ１５指定。『３００』でも思ったんですが、こういうのを男子中学生に見せないでどうする。今年のもう一つの目玉作品である『マチェーテ』に至っては１８禁だ。ＡＶと同じ扱い。さて、全国の男子中学生がどうアノ手コノ手で劇場に忍び込むのか楽しみで。
因みにこの評価、エンディングで流れる変な歌は除外しての評価。どうせ、ソフト化の際になかったことにしてオリジナルに差し替えられるんでしょうし。


身体を張るのがアクション映画の最低限の基本

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
　　　

　　　　　　　　

　　　　　　　　

Comments

これだけのアクションスターが勢ぞろいしたっていうだけで興奮しますよね〜(^^)　ベテラン揃いということもあって、アクションシーンは見応えがありながら、何故か不思議な安心感までありました（笑）まだまだ現役で活躍し続けてほしいものです♪

Posted by at 2010年10月20日 19:41

>ＣＧ処理がビックリするほどショボイ
そうそう、何度か出てくるＣＧのショボさは、目を見張るばかり（笑）
俺たちの筋肉の前では、ＣＧなんてペラッペラだぜ！
な筋肉アクション祭が、暑苦しくも爽快でした♪

>ソフト化の際になかったことにしてオリジナルに差し替えられるんでしょうし
知らなかったのでビックリでした。
是非、オリジナルに戻してもらって、最後まで気持ち良く･･

Posted by 哀生龍 at 2010年10月20日 23:36

多分りら様かとは思うんですが、こんばんはー♪
違かったら、ごめんなさーい。
これだけの顔ぶれが揃って、皆に見せ場があって、もちろん豪勢だけど、しっかりと一本にまとまってるんですよねぇ。その辺が、俳優の持ち味と相まった安心感なんでしょうねぇ。
＞まだまだ現役で活躍し続けてほしいものです♪
引退する気もなさそうですけどｗ

Posted by たお at 2010年10月21日 01:11

哀生龍さま、こんばんはー♪
「ＣＧなんか邪道だ！俺の筋肉こそ王道だ！」なんでしょうねぇｗ
絶対わざとショボくしてるに違いありません！
あの歌を聴かされるのは分かってたんで、終わるや否や、スタローン顔負けのダッシュで劇場を後にしました。久々のダッシュだったので、吐きそうでした。

Posted by たお at 2010年10月21日 01:13

確かに。

20年前だったら、
これは完全にお正月映画。
で、大ヒット。
なんでもかんでも、
世界同時公開すればいいというものじゃないですよね。

お正月のタマにすれば
格も上がったのに…。

残念！

Posted by えい at 2010年10月21日 21:54

えい様、こんばんは！
ホント、これは正月までジラすべき作品ですよねぇ。格段とヒットしたでしょうし。

Posted by たお at 2010年10月22日 02:56

こんばんは。
ＴＢ及びご来訪ありがとうございます。
おっしゃるとおり、誰の何処のどの組み合わせから書いたらいいのか迷ってしまう贅沢な映画でしたね。
誰から書いたらいいのかウチも随分悩みましたよ（苦笑）
で、ゲイリー・ダニエルズがどこに現れたのか見逃してしまいました。『北斗の拳』実写版好きだったんで、気になります。

アクションスター不在・・ですよね・・
そうなると、説教染みたおっさんの
映画だったなと思います。

Posted by たまさん at 2010年10月22日 22:19

たまさん様、こんばんは！
＞ゲイリー・ダニエルズがどこに現れたのか見逃してしまいました
敵方の青シャツ男で、クライマックスの地下でのシークエンスでジェイソン・ステイサムとジェット・リーに二人がかりでボコボコにされる奴が、ゲイリーです。
それにしても、本当にアクションスターと胸を張って断言できる若手が居ないですよねぇ。。。

Posted by たお at 2010年10月23日 02:24

こんにちは♪

わざとショボクしてるのかどうか、
「十三人の刺客」の時と同様に、
男たちのアクションに魅入ってしまって、全く気になりませんでした。
CGに重点を置かない潔さも好きですが、やはりそう思わせるだけの勢いがありました！

>“新旧”とは言っても、“新”が３０代後半ってのにアクションスター不在の昨今を感じる
育たない原因の一つは深刻な脚本家不足じゃないんでしょうかね〜。
スタローンが自分で書いて撮っていくのも、そこに彼なりの説教をいつも感じます。

Posted by kira at 2010年10月24日 09:28

たおさん、こんにちは！

ほんと豪華な顔ぶれ、満漢全席っていう感じでした。
８０年代のアクション大好き世代としては、大満足でした。
スタローンとシュワちゃんとブルースのシーンは感動ものでした。
しかしスタローン、還暦過ぎてるとは思えない・・・。
平均年齢何歳のチームなんだろう？

Posted by はらやん at 2010年10月24日 09:55

kira様、こんばんは！
“アクションもやるスター”ってのは今も多いですが、それはアクションスターではないんですよねぇ。
脚本家不足やネタ不足もありますが、力＝正義ってのがなんとも作りづらい世の中になったのかも知れませんねぇ。。。

Posted by たお at 2010年10月25日 01:51

はらやん様、こんばんは！
あのシーンは堪りませんねぇ。
映画ファンやってて良かったなぁと、つくづく思ったものです。
還暦過ぎてから、更にパワーアップしたスタローン。その身体もさることながら、説教もパワーアップしましたねぇｗ

Posted by たお at 2010年10月25日 01:53

ブルース・ウィリスはたしかにちょっと違う、というかフツーのおっさんがしぶとさだけで頑張る『ダイハード』で筋肉映画に引導を渡した張本人でもあるわけで、役柄もそれを踏まえたような、３ショットだけどよきライバル２人と敵（は言い過ぎですが）という感じで、そのへんも巧さを感じました。
一応、エンドクレジット後に映像があるか確認するため我慢がならねえ歌も我慢をしましたが、次観に行くときはいい気分で劇場をあとにしたいと思います、笑。

Posted by Cardhu at 2010年10月26日 13:26

Cardhu様、こんにちは！
これだけの顔を揃えておきながら、きちんと描き分けをしているんですよねぇ。ただのオールスター顔見せ映画じゃない。各人に配慮しながら、バランスを保っているのには、正直驚きました。
あの歌はもう・・・
なんで、最後に辛い思いをしなきゃならないんだろ？映画観に行っただけなのに。

Posted by たお at 2010年10月27日 12:42

>この顔ぶれがただダラダラ９０分喋っているだけでもお金を払って観に行きたい

確かに（笑）
結局ミッキー・ロークの店で、みんながダラダラしてるシーンがいちばん好きでした。
レスラーの人とかヘビー級チャンピオンとか？そのへんの出演者は正直よく知らないので
この映画の醍醐味をほんとうには味わえてないのかもだけど、
スタローンとシュワちゃんとブルースウィリスが３人揃った
映画史に残る奇跡をこの目で観られただけでしあわせです。

今はマチェーテさんを一刻も早く観たいです。

Posted by kenko at 2010年11月08日 22:40

kenko様、こんにちはー♪
要所要所でダラダラ喋る。
作り手がよく分かってるんですよねぇ、何が面白いのか。
で、マチェーテさん。
いやぁ、もう・・・
マチェーテフォーエバー！
でございます。

Posted by たお at 2010年11月09日 16:39

ミッキーロークの途中のセリフ

にスタローンらしさを感じまして

しかし技のスピード感

何も考えなくて観れる

いや〜お腹いっぱい　いい映画でした

ラスト前のスタローンとステイサムのやり取りで

スッキリした気分になりました

Posted by もる at 2011年08月24日 16:45

ＴＢ＆コメントさせてもらっちゃいますね〜。
　あかん！ヨダレが止まらない（爆
いや〜、このメンツを強いて言うなら、
嫁さんが腕によりをかけて弁当を作ったというので、
お昼を楽しみにして、弁当箱を開けたら
日の丸弁当だった
位感動モンでしたｗ（実話）

角煮？肉汁？大いに結構！全部完食して見せますぞｗ

Posted by oguogu at 2011年09月30日 00:24

oguogu様、こんにちはー！
腕によりを掛けたのが日の丸弁当。
これはなんか、触れちゃいけない暗部なんでしょうかｗ

Posted by たお at 2011年09月30日 07:13