2007年 アメリカ映画 109分 ホラー 採点★★★
クリスマス前のセールとしては定着しつつあるものの、後付け外来イベントの先輩格であるクリスマスやバレンタインと比べると、まだまだ定着しているとは言い難いハロウィン。恋愛と消費が上手く絡まないと一般的には定着しないんですかねぇ。まぁ、下手に定着して知らん子が「なんかくれ!」と玄関先に来られても困りますし、なんもくれないからとイタズラされても気分を著しく害するだけなんで、今のままでいいんですが。
【ストーリー】
かつてハロウィンの夜に一家惨殺事件を起こした少年マイケル・マイヤーズは、厳重警備の精神病院に収容されていた。事件から17年後、巨漢の青年に成長したマイケルは看守らを虐殺し、病院を脱走。生き別れの妹ローリーを追って、自分が育った街へと向かう。
言わずと知れたジョン・カーペンターによるスラッシャーホラーの原典とも言える傑作『ハロウィン』を、『デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2〜』のロブ・ゾンビがリメイクした一本。乾き切ったざらつきとケバケバしい色使いにトビー・フーパーを彷彿させるロブ・ゾンビだけに、独特の湿気を持つカーペンター作品を撮るのもどうかと思いきや、なかなか面白い味わいの一本に仕上がっている。
殺人鬼としてその場には確かに存在している一方で、亡霊のようなおぼろげさも感じられたオリジナル版のマイケル・マイヤーズ。無表情のマスク(スタートレックのカーク艦長を模した物)を被った顔のない殺人鬼の見た目は、男性に奥手なローリーのセックスその物に対する恐怖感が投影されているようにも思えた。本作は、そのマイケル・マイヤーズの生い立ちを徹底的に描き、肉付けすることで、闇に支配された人間マイケル・マイヤーズを作り出そうとした意欲作である。この肉付けされた巨漢のマイケル・マイヤーズが登場した時点でオリジナルとはまるっきり意味が違う作品になるので、とやかく比較するのは無意味かなと。
いつ聴いてもすこぶるカッコ良いジョン・カーペンターによるテーマ曲をバックに、マイケル・マイヤーズが物語の中心となる本作。生まれ持った闇を抱えつつも、それ以外はそこらにいる少年と変わりないマイケルが、過酷な家庭環境や社会環境の中で残虐性を増していき、顔のない殺人鬼になるまでを緻密に描く前半のパワーは見事。非行少年の闇を描くドラマとしても、立派な完成度を持つ。母親の大きな愛を一身に浴びながらも凶行に走る様も、外れ者の愛を描くのが上手いロブ・ゾンビだけに、その悲痛さもヒシヒシと伝わってくる。しかしながら、殺人鬼マイケル・マイヤーズが完成してからの後半が弱い。もちろん暴力描写は凄まじいし、マイケルの怖さは減少することはないのだが、物語が動かなくなってしまう。生き別れの妹ローリーを見つけ、愛する母親の墓石を前にマイケルの行動の原動力であったであろう家族の再会を果たしてしまうと、途端にマイケルの物語もローリーの物語も止まってしまい、ただの仮面の殺人鬼と普通の少女との暴力にまみれた鬼ごっことなってしまうのが痛い。
後半だけを切り取ればスラッシャー映画として充分及第点に達する出来ではあるのだが、なまじ前半がパワーも含め一時流行った“○○ビギニング”に成り下がっていない面白さがあっただけに、なんとももったいないなぁという印象が。
キャスト順的にはルーミス医師に扮した『ブルーサンダー』『イン・グッド・カンパニー』のマルコム・マクダウェルが主演となるのだが、本作の顔となるのは、やはりその巨体でパワーファイター系マイケルとしての説得力を持たせたタイラー・メインであろう。オリジナルにもあった死体を見ながら首をかしげる様で、邪悪な心と無邪気な子供の心を巨大な身体に閉じ込めた、とっても性質の悪い存在であることを見事に表現。
『デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2〜』のロブ・ゾンビ作品だけに、ビル・モーズリイ、シド・ヘイグ、レスリー・イースターブルックらファイアフライ一家が勢揃いした本作。『アウト・フォー・ジャスティス』のウィリアム・フォーサイスやケン・フォーリー、ダニー・トレホらお馴染の顔ぶれも集結。その他にも、『サスペリア・テルザ 最後の魔女』のウド・キアや、『クジョー』のディー・ウォーレス、クリント・ハワードにシビル・ダニングといった、非常にらしい顔ぶれが嬉しい本作であるが、一際輝いていたのは、やはりシェリ・ムーン・ゾンビであろう。学もなく口が悪い典型的なホワイトトラッシュながらも、夜はストリッパーとして家計を必死に支え、子供達には惜しみのない愛情を注ぐ母親を見事に演じ切っている。見たまんまハマっているだけなのかも知れないが、母親としての強さ、そしてその強さが挫けてしまう瞬間を見事に表現しているだけに、役者としてのポテンシャルは思っている以上に高いのかも。
本来なら主役のポジションにいなければならないローリー役のスカウト・テイラー=コンプトンですが、まぁ普通に可愛い子でしたよ。
親の心、子知らず。その逆もまた然り。
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓