シャッター アイランド (Shutter Island)

監督　マーティン・スコセッシ　主演　レオナルド・ディカプリオ
2010年　アメリカ映画　138分　サスペンス　採点★★★

“ショック死したらハワイにお墓を建ててあげます！”とか“戦慄のサーカム・サウンド！”とか、なんのことかサッパリ分かりませんが、やたらと魅惑的な謳い文句がその昔は溢れておりましたねぇ。大いに騙されました。まぁ、確かにやり過ぎっちゃぁやり過ぎですが、なんとかして売ろうって気概だけはヒシヒシと。



【ストーリー】
厳重な監視の下、精神病を患った犯罪者が収容されているシャッターアイランドから、一人の女性患者が忽然と姿を消す。調査に訪れた連邦保安官のテディとチャックは関係者から聞き込みを始めるが、その過程でこの病院に隠された秘密が見え始め…。



あっさりネタバレしてますよ。
『ディパーテッド』のマーティン・スコセッシによる、タイトルにもアナグラムが施されたサスペンス。
“誰も信じてはいけない”“目線、表情を見逃してはいけない”“あなたの脳を信じてはいけない”、これらの注意書きや謳い文句が全てを台無しにする本作。
「これがアリなら、もうなんでもアリじゃん！」と呆れ果てた『アイデンティティー』で痛い目に遭ってる身としては、こうも重ね重ね言われると主人公を端から疑ってしまうもので。これが“主人公の正体は!?”ってのがキモの作品ならばまぁアリなのだが、“精神病院”“トラウマ”“幻覚”“視覚の違和感”タイトルにも隠された“真実と嘘”など、事前に心の準備がしやすいトリックが施された本作のテーマは全く違う。この事前に敷かれたレールに乗って本作を観てしまうと、『チェンジリング』にもあった正常と異常の曖昧な境目を多数派に立つ第三者が決めてしまう恐怖や、本来ならここを議論せねばならない、“トラウマによって現実から逃れた患者を現実に引き戻すことは、果たして本人にとって良い事なのか？”って部分が見えなくなってしまう。なによりも、愛する者が発するサインをないがしろにした結果、愛する者全てを一気に失った主人公が、良かれと思って引き戻された現実に向き合い、そして取った選択の衝撃や悲しみが薄まってしまうのが痛い。まぁ欲を言えば、主人公が妻と子供たちをいかに愛していたかが痛感できる描写がもう少しあれば、余計なミスリーディングなんてものともしなかったんでしょうが。事前の断り書きが余計だった『シックス・センス』みたいに。



大物監督の間で大人の男になる修行をしている感もあるレオナルド・ディカプリオだが、その修業の甲斐あってか、そろそろ“渋み”ってのが見え隠れし始めたようにも。まぁ、作品の大半を渋った顔で過ごしてるせいもありますが。
『恋人はゴースト』『ゾディアック』のマーク・ラファロや、『ピンクパンサー２』のエミリー・モーティマー、『ラッシュアワー３』のマックス・フォン・シドーらが不自然なキャラクターを好演している中、圧巻の存在感を示すのが『ラッキーナンバー７』のベン・キングズレー。実直で強い信念を持ち、心根の優しい医師をその佇まいで見事に表現。その優しさの反面、やや強過ぎる信念によって患者の本当の幸せまで見通せない弱さまでも、見せてくれたようにも。
本編が終る１０分前に席を立っちゃったのか、「感動の涙！」ってのを乱発し過ぎて腕も感も鈍ったのか、手が込んでいる割にあまりに残念な宣伝をされてる感のある本作。よく考えてみれば、その注意書きのどれも、普段サスペンスを観る際に普通にやってることですし。もうちょっと気分良く宣伝に騙されたいなぁ、と本筋と関係のない愚痴で締めるのもアレだが、まぁいつも大半が愚痴みたいなもんだから、書いちゃお。


後ろの方で「やってるやってる」とか言ってたんでしょうねぇ

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
　　　

　　　　　　　　

　　　　　　　　

Comments

>注意書きや謳い文句が全てを台無しにする
>手が込んでいる割にあまりに残念な宣伝をされてる

余計な錯視まで入れ込んだ勘違いの宣伝が
本編をダメにしてしまいました。

いやひっょとしたら、的外れは重々承知、
話題になればいいという確信犯かもしれません。

Posted by KGR at 2010年09月18日 11:55

こんにちは♪
熱演で眉間の縦皺が印象的なレオさんでした。
私の頭では見落としがいっぱいある気がして、もう一度観たい映画です。
＞後ろの方で「やってるやってる」とか言ってたんでしょうねぇ
思わずコメディだったか（ゴメン）と思っちゃうほど鋭く楽しい第三者視点！(^^)

Posted by りどる at 2010年09月18日 12:02

KGR様、こんにちは！
もちろん話題になればいいやって姿勢でしょうし、話題にするのが仕事なんですが、ドラマやラブロマンスなら“感動の涙！”、サスペンスなら“衝撃の結末！”と非常に仕事が安易。
てか、ふんわり着地するサスペンスの方が観てみたい気も。

Posted by たお at 2010年09月18日 12:05

りどる様、こんにちはー
まぁ結局みんなして「やってるやってる♪」ってのが、“目線、表情を見逃してはいけない”ってことなんでしょうけどねぇ。観る所はそこじゃないだろうと＾＾；

Posted by たお at 2010年09月18日 12:08

ほんとに見事に宣伝で映画を駄目にした寂しい作品でした・・・。
これ、ほとんど忘れてました。
その後、しわ寄せデカ君は。「インセプション」で、超再浮上したもんで。
「インセプ」４回見てしまったほど、はまりました。最高でした。

Posted by sakurai at 2010年09月18日 21:39

sakurai様、こんばんはー！
ある意味記憶に留まる宣伝ですねぇ。ネガティブな意味でｗ
『インセプション』、みなさんハマってるようで。発売日も決まったようですから、楽しみに待ってみます。

Posted by たお at 2010年09月19日 02:56

TB ありがとうございます。

たしかに あの宣伝は見に行きたくなる巧いやり方でしたが、どうも真相、オチは新鮮味がなくて・・・

とはいえ スコセッシの演出と助演の演技派ぞろいだったのが救いですかね

Posted by リバー at 2010年09月19日 17:05

リバー様、こんばんは！
観には行きたくなるけど、観たらガッカリする宣伝の典型でしたねぇ。。。
スコセッシ自身は、もうちょっとパラノイアな部分を濃くしたかったんですかねぇ？

Posted by たお at 2010年09月20日 01:31

＞主人公が妻と子供たちをいかに愛していたかが痛感できる描写がもう少しあれば

そうそう、そこ、もうちょっと欲しかったです。
悲劇のラブストーリーとして、好きなお話だったので。

キャストはよかったですね。あやしげな人が揃ってて。
かわいかった頃のディカプリオより、おじさんになりつつある最近のディカプリオの方が好きです。

Posted by kenko at 2010年09月20日 18:35

kenko様、こんばんはー！
敢えてそこを深く描かなかったのかも知れませんが、描いてれば随分と印象が変わったのになぁと。
正直まだ「デカプーたばこなんて吸ってるー」って感じから抜けてない私なんですが＾＾；

Posted by たお at 2010年09月21日 02:18

こんにちは。

TBありがとうございました。

ラスト、全てが嘘なのか、一人だけが嘘なのか、む〜ん。。。と考え、どっちにとるかによって、映画に対するイメージも変わってくるのかなぁ。。。と思いました。

レオ様、あの縦皺を伸ばしたいと思う昨今の作品達。
アイドル然とした雰囲気からは脱皮して、いい感じの渋さのある彼の事、好きです(^^)。
これから、どんな作品にでてくれるのか！期待中です☆。

Posted by みぃみ at 2010年09月21日 09:19

みぃみ様、こんにちは！
深読みしちゃうと色々と考えちゃうけど、案外真相は文字通りなのかなぁと。
一所懸命大人になろうとしている印象もあるデカプ。バカやっててもシリアスやってても年相応に見えるってのは、結構難しいんでしょうねぇ。

Posted by たお at 2010年09月21日 14:32

こんばんは(^^)
宣伝文句がすべて裏目にでてましたね〜。　あれほど大げさな宣伝がなければ、もっと素直に楽しめたのに。。。と、残念でした〜(--;)

Posted by りら at 2010年09月21日 23:36

りら様、こんばんはー！
“衝撃的な結末！”ってのを売りにしたかったんでしょうけど、衝撃的じゃない結末のサスペンスって、どんなだ？

Posted by たお at 2010年09月22日 01:37