1977年 アメリカ映画 115分 アクション 採点★★★★
“ガントレット − 鞭や棍棒などを持った2列に並んだ兵士の間を通り抜ける、中世ヨーロッパの軍の刑罰。その間を通り抜けられれば、過ちは償われ、軍に戻れる場合もあった。(詳しくはコチラを)”
へぇ、そうだったんだぁ。てっきり、100円玉を大量に握り締めた4人組が、キャッキャキャッキャと遊ぶゲームの事だとばかり思ってましたら。

【ストーリー】
ある裁判の証人である若い娼婦マリーを、ラスベガスからフェニックスまで護送する任務を任された、酔いどれ刑事ベン。簡単そうに思えた任務だったが、マリーを連れ出すや否や次々と命を狙われ始め…。

英雄コナンシリーズの挿絵でも知られるイラストレーター、フランク・フラゼッタによるポスター(ブルーレイ版ではジャケットに使用)がすこぶるカッコ良い、クリント・イーストウッド監督・主演によるアクション。
8000発の銃弾が一台のバスに降り注ぐクライマックスが有名な本作だが、そこに至るまでの逃避行が面白い。法を守るという理想に燃えて警察に入ったベンと、大卒の娼婦マリー。共に夢と理想を持って社会に出たはずが挫かれ、身を落としてしまった二人。そんな二人が否応がなしに巨大な陰謀に巻き込まれ、やがて心を通わせていく過程が見事。これ見よがしのロマンスではなく、二人の性格をしっかりと書き込んだ上でロマンスに転じるターニングポイントのさり気なさ&タイミングも良い。ここが効いてるからこそ、クライマックスの迫力が倍増。ネバダとアリゾナの、乾き切っていながらも独特の美しさを持つ荒野の風景も見応え充分。この頃のイーストウッド映画は、ロケ地の選び方が非常に上手い。
因みに、スティーヴ・マックィーンとバーブラ・ストライサンドの組合せで、映画化が想定されてたらしい本作。ウォルター・ヒルとサム・ペキンパーもこの作品に興味を示し、ペキンパーは主演にクリス・クリストファーソンとアリ・マッグローを考えてたとか。それはそれで、観てみたかったですねぇ。まぁ、結局ペキンパーはこの組合せで『コンボイ』を作るんですが。どうしても大型車を出したかったんですねぇ。

脂の乗りまくっていた時期とはいえ、“結局はダーティハリー”のイメージが付きまとっていた、この頃のクリント・イーストウッド。さすがにいつもハリーばっかりやってらんないとばかりに、当然の如くハリー系キャラを期待する観客をいなすような、非ハリー系キャラを好演。自分は8000発の銃弾に晒されながらも人っ子一人殺さず、銃こそ撃つが、撃つのはドアとかバイクとかの物ばかりだし、夢と理想は砕け散って、今では酒に溺れるヤサグレ刑事役が見事にハマっている。
今回ももちろん『ダーティファイター』のソンドラ・ロックが付いてくるのだが、本作のソンドラ・ロックは良い。何気にイーストウッドの変態性が垣間見える淫語責めやヌードシーンにも挑んでいる彼女だが、一見清楚な少女風に見えながらも、同時に醸し出す年季の入った卑猥さのアンバランスさが、今回の役柄にぴったり。放っておいたらいつまでも止めどなく喋り続けてそうなやかましさも、いつも通りっちゃぁいつも通りなのだが、今回は全く気にならない。
ビル・マッキーニーやパット・ヒングルといった、イーストウッド映画馴染の顔ぶれが揃ってるのも嬉しい本作。今回は字幕版だけではなく、山田康雄による吹替え版も観賞したのだが、ところどころキャラクターの性格や舞台状況までも変えてしまうようなセリフの変更点が。ところが、それらが改悪ではなく、物語により弾みをつける見事な改善に。あの女王様も、こういう映画愛を感じるちゃんとした仕事をしてくれればなぁ。

まぁこれも、ハネムーンみたいなもん
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