1978年 アメリカ映画 115分 コメディ 採点★★★
まぁ、至極当たり前の事なんですが、映画の種類ってのも、その観方も、楽しみ方も、楽しむ人も様々。畏まって観るのも、ビール片手にソファーで寝そべりながら観るのも、どちらも正しいですし、当人が楽しんでいるなら、その作品がその人にとって一番。なんか、肉体労働を終えビール飲みながらハル・ニーダムの映画でも観ようとしている人に向かって、「そんな下品なもの観ないで、このイングマール・ベルイマンを観なさい!これぞ映画なんです!」みたいな、映画に格を付けてしまうのは何か嫌だなぁと。
【ストーリー】
滅法腕っ節の強いトラックドライバーのファイロは、バーで出会ったカントリー歌手のリンに一目惚れ。しかしリンと良い仲になったのもつかの間、彼女は突然去ってしまう。彼女を忘れられないファイロは、相棒のオーヴィルとオランウータンを連れ、道中賭け喧嘩で日銭を稼ぎながらリンを追う。
まったりとしたギャグとアクションが楽しめる、カントリーウエスタンの楽曲に彩られた一本。監督は、『ダーティハリー3』のジェームズ・ファーゴ。
元々はバート・レイノルズを念頭に置かれて書かれた作品だとか。確かに、ハル・ニーダムとのコンビで作ったらハマりそうな内容で。アクションコメディというか、もしそういうジャンルがあるのならば“カントリーウエスタン映画”ってのが一番似合いそう。
芸達者なオランウータンや、強面で登場するも片っ端にバイクもろとも打ちのめされ、映画が進むとともに相乗り率も高くなるバイカー集団などユーモラスなキャラクターも多く登場し、それらを絡めた珍道中をのんびりと楽しむことができる。その“のんびり”を、“間延び”と感じるか“カントリーのリズムに同調”と感じるかで評価は変わると思いますが、本作を楽しむなら、是非後者で。
『ガントレット』と『アルカトラズからの脱出』に挟まれた作品と言う事もあってか、そのマッタリ感と気楽な内容に、なにかと評判が悪い本作。ただ、提供しようとした客層も趣旨も何もかも違う作品同士を比べてもどうかと。
この時期のイーストウッド映画には、もれなくソンドラ・ロックが。それも、大体いつも同じような役で。今回も、そう。ただ、確かに気が強くて自己中心的で、まぁまぁ嫌な女役ってのがピッタリくる女優ではあるので、本作の役柄もピッタリ。イーストウッドが振り回されたい女性の理想像なんでしょうねぇ。若干少女っぽいところなんかも含め。
で、イーストウッド。そもそも、周囲の大反対を押し切って本作の主役を演じたイーストウッド。彼がカントリーとジャズという、相反してはいるがどちらもアメリカ発祥である音楽を両方こよなく愛しているのは有名な話。作品毎にそれらの間を行ったり来たりしているのだが、今回の振り子はカントリーに。それも、『センチメンタル・アドベンチャー』のように音楽そのものにではなく、カントリーをこよなく愛する人たちが好むであろう作品スタイルとして。細かい珍エピソードの数々をゆったりとしたテンポで描き、ほんのちょっとだけ心に残すほろ苦い結末で締める本作は、まさに過酷な仕事を終えた彼らに対するとっておきの贈り物のような作品。
この頃のイーストウッド作品の常連であった、『荒野のストレンジャー』『誘拐犯』のジェフリー・ルイスや、『アウトロー』のビル・マッキーニーらの好演も印象深いが、やっぱり品作でずば抜けた存在感を示すのが、オランウータンのマニス。内容をすっかり忘れきった人でも、「イーストウッドと猿が出てたやつ!」と、観た事だけは覚えてるほどの強烈さ。てっきり続編の『ダーティファイター/燃えよ鉄拳』も同じ猿かと思いきや、別の猿だったんですねぇ。続編までの2年間で、大きく育ち過ぎちゃったんですって。
これも、イーストウッドがこよなく愛するアメリカそのものの一面
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