2010年08月24日

アンヴィル!夢を諦めきれない男たち (Anvil! The Story of Anvil)

監督 サーシャ・ガヴァシ 主演 アンヴィル
2008年 アメリカ映画 81分 ドキュメンタリー 採点★★★★

20年前も今も、聴いてる音楽がほとんど変わっていない私。傾向や好みが変わってないじゃなく、同じCDをいまだに繰り返し聴いております。最近のもざらっとは聴いてますが、すぐに飽きて結局いつものCDに戻っちゃう。そんなんだから、ランキングとベスト版とコンピレーションに埋め尽くされたCDショップに行っても欲しい物なんぞなく、音楽好きにとっては楽園のはずの店内で途方に暮れ、「あの時に買っておけばなぁ」と後悔することしばしば。

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80年代初頭に登場しある種の輝きを放つも、その後ほどなくシーンから消えていったメタルバンド“アンヴィル”の今を追ったドキュメンタリー。アンヴィルの熱狂的なファンで、かつてはツアーにローディーとして同行したこともあるサーシャ・ガヴァシが監督を。
如何せん当時はデュラン・デュランやらジャパンやらシンプル・マインズやらカジャ・グーグーばかり聴いていたので、メタルにはかなり疎い私。アンヴィルってバンドも、これで初めて知りましたし。彼ら同様ベテラン勢として劇中に登場する、マイケル・シェンカーやトゥイステッドシスターのジェイ・ジェイ・フレンチらとは明らかに違う、“負けオーラ”を全身にまとったアンヴィルの日常を追った本作。
50を過ぎ、家族との生活を支えるためにロックスターとは程遠い仕事に汗を流す彼ら。念願のツアーを実現するも、会場は閑古鳥が鳴き、ギャラも満足に貰えない。メンバー間に、不穏な空気まで流れてしまう。書いているだけでいたたまれない悲しい親父たちの物語でしかないような本作なのだが、画面から伝わってくる印象は全く違う。彼らは、アンヴィルとして注目を浴びた過去を誇りに思っているし心の支えにしているが、すがってはいない。彼らにとってアンヴィルは現在進行形であり、“過去のアンヴィル”“現在のアンヴィル”そして“これからのアンヴィル”をしかと見つめて、成功を願っているし足掻いている。世界一アンヴィルを愛しているのが、彼ら自身だ。だからこそ、前向き。どん底であろうが、前を見続けている。その前向きさに、メンバーも家族もファンも半ば呆れながらでも最後までついて行く。
ドキュメンタリーのみならず、作品には時折“神が降りてくる”瞬間がある。水曜どうでしょうのベトナムの旅もそうなのだが、次から次へと作り手の手を離れた奇跡的な出来事が起きる。本作も、そんな神が降りてきた一本。“ロブ・ライナー”“過去のロックスター”“ドキュメンタリー”“日本公演”と並ぶと、否応がなしに傑作フェイクドキュメンタリー『スパイナル・タップ』を思い出してしまうし、展開までも似てしまっているのだが、これが本当に作り手の意図しない偶然だとすれば、まさに神懸かり的な奇跡が起きたとしか言えない。まぁ、“ドキュメンタリー=真実”じゃないですし。なんであれ、そんな奇跡の瞬間を目の当たりにしたからこそ、ひとつの事柄をマニアックに愛し続ける事が出来る日本人特有の愛情に迎えられるエンディングに、素直に大きな感動を覚えることになったのであろう。

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ゴールが遠いから走り続けられる

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posted by たお at 02:16 | Comment(6) | TrackBack(16) | 前にも観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そうでしたね。
どこまでも前向きなのがいいですよね。
まだまだ道半ば!後ろの頭が寂しくなったあたりで、ギンギンにやってる姿は、マジに感動もんでした。
これをかけた映画館ですが、オーナーなんぞ、「こんな映画、一体誰が見るんだ!」と言いつつ、一番でっかいシアターで見たんですよ。
あれを超でっかいスクリーンで見れたあたしは、結構幸せ。
Posted by sakurai at 2010年08月24日 19:50
こんにちは!
過去の人ではなくて、現在進行形な彼らに感動しました。
諦めない、人生を楽しむこと、継続は力なりを教えてくれました!
素直な気持ちになれるいい映画でしたね〜
Posted by アイマック at 2010年08月25日 13:35
sakurai様、こんにちは!
>一番でっかいシアターで見た
いいですねぇ。羨ましいです。
映画館ももっと羽目を外してくれればいいんですけどねぇ。。。
Posted by たお at 2010年08月25日 15:27
アイマック様、こんにちは!
“諦める”ってことすら選択肢にない前向きさは、見習わないとなぁ。。。
Posted by たお at 2010年08月25日 15:31
地元レンタルショップで借りた「ANVIL!」のDVDをさっき見終えて書込みしてます。この映画にものすごく感動して沢山笑って沢山泣いてしまいました。
ちなみに、今年50になったうちの主人は「(ミッキー・ローク主演の)“ハスラー”とは違い、全部リアルでイタすぎて観てられない」と途中放棄しました。ロック好きな同年代の同性にとっては、そう感じてしまうんですね。
へヴィ・メタルとは縁遠き女性の目で観て、何が一番魅力的だったかといえば、リップスとボブの瞳が「永遠の14歳」だったことでしょう。
彼らは良くも悪くも楽器を手にした少年の頃のまま、50代になってしまった、とても幸運でちょっぴり切ないピーターパンなのだと、映画に思いきり引き込まれてる中で感じました。
日本での映画公開から1年たったようですが、にわかブームに留まらず、これからうんと売れて幸せになってほしいと強く思いました。観る人にそう思わせ、心から応援したくなる、ANVILってすごく不思議で素敵なバンドですね
Posted by みーたろー at 2010年09月27日 20:21
みーたろー様、こんばんは!
>リップスとボブの瞳が「永遠の14歳」
そう!
楽器を手にした瞬間から変わってない。音楽に対してもお互いに対しても、初対面から変わってないんですよねぇ。
イタイ姿もそこにあるのかも知れませんが、好きなものをしている男って常に男子なんで、すっごく親近感わきましたよ^^;
Posted by たお at 2010年09月28日 02:20
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