1996年 日本映画 99分 特撮 採点★★★★★
なんだかここ数年ずいぶんと増えてはきましたが、かつては滅多なことではロケ地になることがなかった仙台。松島なんかはワイド劇場とかでちょくちょくロケされてたけど、有名ホテルの食事風景やら観光地巡りなんかをされても、地元民にとっては大して身近でもなく。やっぱり、見慣れた生活圏の風景に、“映画”っていうのが混じりこんでくるのが“地元が舞台”の醍醐味なんですよねぇ。
【ストーリー】
突如、北海道支笏湖付近に墜落した隕石。しかし、その墜落したはずの隕石は忽然と姿を消していた。その頃、墜落地点から札幌方面へと延びる光ファイバーが消失する事件が発生。やがて札幌市内に、多数の昆虫型生命体とビルをも破壊する巨大な植物が発生。人々が混乱に陥る中、ガメラが飛来して…。
「こんな怪獣映画を待っていたんだ!」とファンを唸らせた『ガメラ 大怪獣空中決戦』に続く、平成ガメラ第2弾。監督の金子修介と特撮監督の樋口真嗣が、前作に続いて登板。
ゾンビが人をむしゃむしゃ頂いているシーンは怖い。じゃぁ、そんなむしゃむしゃしているシーンだけを90分続けたら、すげぇ怖いゾンビ映画になるかといえば、もちろん否。怪獣映画も然り。延々と怪獣プロレスを観させられても、面白い怪獣映画にはならない。そもそも映画は、どんな題材であっても、どんなにリアルであっても現実ではない。だからと言って、怪獣という荒唐無稽な存在が登場しているから、映画内のもの全てが荒唐無稽でいいかといえば、それも否。観ている側の現実と映画内の現実にどう折り合いをつけるかのブレンド具合や、人物描写であったり非現実のものに対するディテール描写などで、如何に映画内の現実に説得力を持たせるかが重要であり、それが映画に深みと面白みを与えているのではと。
こんな当たり前の話からダラダラと始めたのも、本作、その辺がほぼ完璧だから。
巨大生物の襲来が、現実社会にどのような影響を与えるのか?その時、自衛隊はどう動くのか?そんな一度は頭をよぎる疑問を、綿密にシュミレーションしながら進んでいくような緻密さを持つ本作。もちろん、ただシュミレーションを映像化しただけのような短絡的かつ興味本位の面白さだけではない。巨大生物と自衛隊との熾烈な争いを描く、良く出来た戦争アクション映画としての迫力と醍醐味をも併せ持つ面白さだ。それもやはり、“その時自衛隊はどう動く?”を緻密に徹底的に描いたからのこと。
もちろん、政府の動きやら、世界的な視点など物足りない部分もあるにはあるが、下手に視点を増やし散漫にするより、視点を自衛隊中心に絞ったことで作品自体にスピード感と緊張感を与えたその選択は正しい。なによりも、これだけの題材を限られた予算と、決して長くないランニングタイムに収めた手腕は、アッパレ。
「ワレワレは宇宙人だぁ」と遥々やって来たはいいが、侵略者の容姿以外の特徴がさっぱり分からなかったり、侵略の動機やその後どうするつもりなのかが分からなかったりするのも多い侵略映画。しまいには、水が弱点のくせに水だらけの地球にやって来ちゃう、その根性だけは認めたくなる宇宙人まで現れる始末。
しかし、本作。侵略者となる、レギオンと巨大草体の生物としてのディテールの細かさと、侵略理由の明確さも、映画的リアリティと面白さを与えている要素の一つ。レギオンと草体はあくまで外来種。外来種が既存の生態系を破壊していく、身近のどこでも起きている現象。レギオンは本能に従って、それを地球の生態系全般に対して行おうとしている。人様にとっては大層困った存在だが、その行動には一切の悪意はなく、あるのは本能以上でも以下でもないが故に容赦なく、説得も妥協も出来ない緊迫感を本作に滲ませている。
そのレギオンとガメラの対立構図が、単純な“善と悪の戦い”ではないのも良い。
一見ガメラは人間のために戦っているように見えるが、ガメラが守っているのは人間ではない。カメでもない。この世界に、カメはいない。あくまで地球の生態系を守るため太古に作られた生物兵器である。人間目線で見れば“善と悪との戦い”に見えるが、実際に繰り広げられているのは、善意も悪意もない“種としての戦い”。
その凄惨とも言える戦いを、何の違和感をも感じさせず迫力十分に見せきった特撮は見事の一言。
永島敏行、水野美紀ら主演勢の活躍、どうバカにとっては堪らない鈴井貴之、大泉洋、安田顕の登場、そして娘セガール藤谷文子のボンヤリ具合など、俳優勢も素晴らしいのだが、やはり主役はガメラ。ガメラが魅せに魅せまくる。
あくまで地球生態系の守護神であるガメラなのだが、本作ではとことん人間を守る。苦境に陥った人間を背に、満身創痍でレギオンに立ちはだかるガメラなんて、男の中の男だ。守るべきものの為に血を流し、無口で、誰にも媚びない。こんなハードボイルドな男、最近ではめっきりと見ない。もう、漢(おとこ)の見本だ。しかも、時折愛嬌ある仕草や表情をしたりもする。憎めない。彼女が「わたし、やっぱりガメラみたいな人が好き」とか言い出しても、止められない。
そんな人間的魅力すら感じさせる程キャラクターが完成されているガメラだからこそ、先に徹底的に描かれた自衛隊がガメラと共に戦う選択をする事に、何ら違和感を感じさせないどころか、戦士同士の阿吽の呼吸のようなものさえ感じさせる事となっている。これはもう、監督の金子修介と特撮監督の樋口真嗣のそれぞれの仕事が、見事に融合した結果であろう。だからこそ、飛び去るガメラに対し、自衛官全員ではなく、共に闘いその中で何かを感じた数名が敬礼で送るラストシーンに、大きな感動が生まれたのでは。
怪獣云々抜きにして「こんな映画を観たかった!」と、十分な満足感を得られた本作。歩き慣れた仙台の街が一瞬にして消失する、個人的にここ数十年でもトップクラスに入る驚愕のシーンも未だその衝撃が薄れていないので、無論この評価で。
思い出全滅
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たお様、こんにちは
私は、下記のTB(No.2)を致しました「ガメラ医師のBlog」管理人のガメラ医師と申します。06年11月の「小さき勇者たちDVD視聴記」にお邪魔しております。今回もこちらの記事には「ガメラ」の検索から参りました。
拙Blogでは4年前と変わらず、ガメラ作品に付いての鑑賞記事をまとめておりまして、この度7月21日付けの下記TBの更新中にて、こちらの「GU視聴記」を紹介させて頂きましたので、ご挨拶に参上した次第です。お時間のある折にでもご高覧頂ければ幸いです。
長文ご無礼致しました。それではこれにて失礼します。
ご丁寧に、ありがとうございます。
こんな所まで紹介してもらって、なんともまぁ恥ずかしいような^^;
噂では、普通科部隊VS小型レギオン群のガチバトルシーンも予定されていたのが、予算の都合でバッサリ切られたとの話もありますが、ほんとなら是非見てみたかった気もします
師団長の台詞とか、『たまに撃つ、弾が無いのが玉に傷』なんて川柳に吟われちゃう自衛隊のお台所事情が如実に描かれてるあたり、米軍顔負けの大火力を発揮してるゴジラシリーズの自衛隊とは一線をかくすものがありますね
長文失礼しました
“怪獣”というファンタジーを前に、現実社会も足並み揃えてファンタジーと化したのがゴジラシリーズだと思うんですけど、平成ガメラシリーズって、徹底的にファンタジーとリアルの融合を試みてましたよねぇ。こと自衛隊の描写に関しては見事としか。