2017年 アメリカ/中国/オーストラリア/カナダ映画 118分 アドベンチャー 採点★★★
映画好き人生の幕開けをギラーミンの『キングコング』で迎えちゃっただけに、コングにはある種の思い入れを持っている私。ただまぁ、キングコングを愛してやまないっていう思い入れではないんですよねぇ。なんかこう、“思い出の人”みたいな感じ。“キングコング”と聞いて真っ先に浮かぶのが、いまだに子門真人ですし。たぶん、女好き人生の幕開けとなった最初の彼女のことを否定はしないけど、別に引きずってるわけじゃないみたいな感じ?
【ストーリー】
アメリカがベトナム戦争からの撤退を宣言した1973年。米政府の特務機関モナークは、南太平洋上に発見された未知の島“髑髏島”を探索するための調査団を結成する。護衛の米軍のヘリで島へ到着した彼らであったが、そこへ島の守護神キングコングが現れヘリを次々と破壊する。壊滅状態に陥った調査団は島からの脱出を図るが、彼らの前に次々と恐ろしい巨大生物が現れ…。
『GODZILLA ゴジラ』と世界観を共有し、2020年にはゴジラとの直接対決も予定されているアメリカを代表する巨大モンスター“キングコング”を、迫力ある見せ場たっぷりに描き出したアクション・アドベンチャー。メガホンを握ったのは、作品にもその影響を垣間見せるほど日本のアニメとゲームが大好きという、新鋭のジョーダン・ヴォート=ロバーツ。
『地獄の黙示録』を彷彿させるロックをガンガン鳴らした編隊飛行するヘリの前に、太陽をバックに立ちはだかる巨大コングの雄姿。もう、そのビジュアル一発で心を鷲掴みにされちゃった本作。ゴジラとのバランス調整のため更に巨大化したコングがヘリを蹴散らす登場シークエンスもそうだが、廃船のスクリューを武器とし『片腕カンフー対空とぶギロチン』ばりに敵対モンスターをぶちのめしたり、襲い掛かってきた巨大タコイカを返り討ちにし、その足をモシャモシャむさぼりながらその場を後にするなど昭和的男気描写も満載。
前のコングが作り手の思い入れと愛情が強すぎて観る側としては少々荷が重かっただけに、単純に「すげー!」と驚き楽しめるシーンが矢継ぎ早に出てくるってのが嬉しかった一本でも。
ただまぁ、その見どころのほぼほぼ全てが既に予告編で確認済みで、それ以上の驚きがないってのも事実。
独立した一本の作品から対決路線へ企画中に変更されたせいか、登場人物ごとにバラバラなストーリーが交じり合って大きな物語を作り上げるわけでもなく、各々が巨大なコングを背景に平行線のまま箇条書きをなぞった様な盛り上がりのない物語を展開してたのは、少々残念だなぁと。
主人公であるはずの『アベンジャーズ』のトム・ヒドルストン扮するコンラッドはガイド以上でも以下でもないし、『キングスマン』のサミュエル・L・ジャクソン扮するパッカードも、戦いを終えたくないってバックグラウンドと部下の敵討ちってのは分かるが、あまりに闇雲。『10 クローバーフィールド・レーン』のジョン・グッドマン扮するランダの、髑髏島に巨大生物がいるって確信に説得力はないし、『ドン・ジョン』のブリー・ラーソンはタンクトップの胸元以外はもう記憶になし。まぁ、それはそれで大変満足しましたが。
“闇の奥”の作家と同じ名前を持つコンラッドが現地人の集落に行くと、そこで待ってるのは“闇の奥”の主人公と同名のマーロウだっていう小ネタと、出てくるのがマーロン・ブランドと対極にいる『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のジョン・C・ライリーだってのは非常に楽しめましたけど、出オチで終わっちゃってたのも残念。怪獣映画ってのは怪獣そのものの魅力も大切だけど、現実世界に非現実が混じりこむ醍醐味を形成するためにも、現実部分を担う人間描写ってのが大切なんだよなぁと、あらためて感じさせられた一本で。怪獣がいっぱい出てくるのは嬉しいですけど、髑髏島の魔境っぷりが乏しいってのも寂しかったですし。
ただまぁ、そもそもが東西横綱対決になるゴジラとの決戦を大前提としたコングの煽りVTRのような本作なので、キングコング単品としては少々首をかしげる部分もありますが、対決に期待を持たせるって意味では成功を収めている一本でも。エンドクレジット中にゴジラやキングギドラらのコピーライト表記が現れ大いにネタバレしてましたが、エンドクレジット後のオマケ映像も今後のシリーズに期待を寄せずにはいられないものでしたし。
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