2003年 アメリカ/カナダ映画 119分 SF 採点★★
フィリップ・K・ディックの小説って未来を舞台にしてるのが多いんで、映画化の際もそのまんま未来を舞台にしてたりするんですが、スピルバーグやリドリー・スコットのように現在の延長線上にある未来像をしっかり描ける監督ならまだいいんですが、大抵の場合は絵空事の未来像を作っちゃうんで、ディック特有のユーモアや不条理さが台無しになっちゃうんですよねぇ。だったら下手に未来にしないで、いっそのこと50〜60年代の風景に存在しえないテクノロジー(ポンコツの)を融合させた方がマシだと思ったりも。
【ストーリー】
高額の報酬と引き換えに、極秘プロジェクトでの3年間の記憶を消去されたエンジニアのジェニングス。しかし、契約終了時に彼が手にした報酬は金ではなく、記憶を消される前の彼自身が望んだ19個のガラクタだった。しかも、そのプロジェクトを巡りFBIに捕らえられてしまう。手元のガラクタが役立ち命からがら逃げだせたジェニングスは、それらのガラクタが重要な意味を持つことを知り…。
フィリップ・K・ディックの短編“報酬”を、『M:I-2』のジョン・ウーが映像化したSFアクション。
あれこれ設定が違うので原作と比べてなんやかんや言うつもりはありませんが、過去の自分も自分であることに違いがないのに、記憶がないので過去の自分を他人のように扱う、ディック特有のパラノイア風味がゴッソリと抜け落ちてしまってるために、ただただ「ガラクタが役立って良かったね!」ってだけの緊張感皆無の一本に。公開当時を振り返っても前時代的な未来デザインもアレですが、白鳩に前転銃弾避けと、無理やり詰め込まれたウー風味も全くハマってない残念な作品。ヒロインとは記憶を消される起点の前に出会ってるのに主人公はそれすら忘れているなど、設定の雑さも気になるところ。
まぁ、無駄に長いアクションシーンや、監督もキャストも合ってないなど不満も多い作品ではあるんですけど、平和だロマンだと偉そうなことを言っておきながら最後は「やっぱ金だね!」で終わる心の無さや、ケツ顎の主人公にケツ顎の悪役、ケツ顎の偽ヒロインが三分割のスプリットスクリーンで並ぶケツ顎アンサンブルの強烈さもあって、嫌いにはなれない一本で。
ジェニングスに扮したのは、次世代スター候補として大作に起用され続けるも、作品の話題よりも交際絡みの話題の方が目立ってた、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のベン・アフレック。最近は脂も抜け良い感じの顔になってきましたが、当時はまだ見てるだけで厭な気分になるニヘラ笑いといじめっ子風貌が際立ってた時期なので、天才的なエンジニアにだけはどうやっても見えないミスキャスト。
一方、相手役の『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』のユマ・サーマンも、若干アホっぽい自然派の可愛い子にだけは見えず。そんなキャラに扮するユマは、似合う/似合わないを通り越してなんか不気味。私がユマ・サーマンを苦手にしてるってのも大きいんですが、出る度に「うわぁ…」ってなる。
その他、物凄い機械を作り上げた天才エンジニアを契約満了と同時に殺そうとする、未来が見える機械を作ってる会社の社長とは思えぬ先の見えなさが驚いた『エンド・オブ・キングダム』のアーロン・エッカートや、『カリフォルニア・ダウン』のポール・シアマッティ、『エグゼクティブ・デシジョン』のジョー・モートンに、『マイノリティ・リポート』に続いてのディック作品出演となったキャスリン・モリスらがキャスティング。
社長とエンジニアが喧嘩するだけの映画でも
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