2017年03月21日

ザ・ギフト (The Gift)

監督 ジョエル・エドガートン 主演 ジェイソン・ベイトマン
2015年 アメリカ/オーストラリア/中国映画 108分 サスペンス 採点★★★★

転職を繰り返してるせいか、お中元やお歳暮といった贈り物を贈る習慣が身に付かないまま大人になっちゃった私。なもんで、不意に贈り物が届くと、ビックリする前に「なに?誰?」と不気味に感じたりも。ま、「誰だろうねぇ?気味悪いねぇ?」とか言いながら、その銘菓をモリモリ食べてるんですけど。そう言えば、注文した覚えのない荷物がAmazonから届くことがありますが、大抵の場合は送り主の名前が送り状なり納品書に記載されるギフト設定をしてないがために謎の荷物になってるのがほとんど。そんな時はAmazonに連絡すれば万事解決。「気味悪い!誰からだ?」と聞いても「個人情報だ!教えん!」と言われちゃいますが、ちゃんと送り主にAmazonが連絡してくれるんで、送り主から「ゴメン、ゴメン!それ、俺ちゃん!」と連絡きますよ。

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【ストーリー】
仕事の関係で、シカゴからロサンゼルス郊外へ越してきたサイモンとロビンの夫妻。新生活のための準備を進めていたある日、街でばったりサイモンの高校時代の同級生ゴードに出会う。その日を境に、ゴードから連日贈り物が届けられるようになり、次第に困惑していく夫婦。その贈り物には、サイモンとゴードの過去にまつわる意味が隠されていて…。

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もう全然ふつうにネタバレしますからね。お断りしときましたからね!
ウォーリアー』のジョエル・エドガートンが製作・脚本・出演を兼ね、監督として長編デビューも果たした、お届け物スリラー。
贈り物と同時に送り主の行動もエスカレートしていく、ストーカーのサイコスリラーかと思いきや、サイモンとゴードの過去か明らかになっていく中盤以降、“笑ゥせぇるすまん”や“魔太郎がくる!!”など藤子不二雄Ⓐ風味すら感じられる自業自得系物語へと変貌していく、そのストーリー構成と練りっぷりに感嘆させられた本作。
ゴードが贈り物に込めた真意や最後の贈り物の映像の意味を読み違えると、単なるいじめられっ子の復讐譚と捉えてしまい、なんとも後味の悪い一本になってしまうが、ゴードの意図はそんなところにあらず。他者を陥れ続けてきたサイモンに対し、自身の言動が相手にどれだけの影響を与えてしまったのかを理解し、心を入れ替える最後のチャンスそのものがゴードの贈り物。そして、そのチャンスを自ら台無しにしてしまうサイモンが受ける罰が、かつてサイモンがゴードに対して行ったのと同じ“無からのでっち上げ”による苦しみ。理不尽のように思えて、実はすべて理にかなっているこの物語には、圧迫感のある重い全体のトーンとは裏腹に一種の爽快さすら感じられた一本で。
ジョエル・エドガートンが原案を手掛けた『奪還者』同様、過去の出来事が人物に与えた影響や、本当に大切なことが物語の進行と同時にジワジワと滲み出てくる本作。演出云々以前に、ストーリーテラーとして類稀な才能の持ち主であることは確かだなぁと。

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過去に散々なことをしておきながら、久しぶりの再会を祝い自宅に招き入れる無神経ぷりが、過去の言動を正当化し、然程重要視していないどころか、特に記憶にも留めていない苛めっ子特有の思考回路を持つサイモン。そもそも面白半分で行ってるので、罪悪感もなし。そんなサイモンに扮した、『宇宙人ポール』『ウソから始まる恋と仕事の成功術』のジェイソン・ベイトマンのハマリっぷりたるや。認められたい相手や認めてる相手に対しては人当たりの良い好人物でいるが、見下している相手にはちょっとした余興のように苛めを行う、実生活でもそんなことをしてそうな程の似合いっぷり。これを同じ苛めっ子キャラのベン・アフレックが演じると、社会的成功の伴わないその性悪さだけが前に出るんですけど、「あいつは性悪なんだ!」と訴えても周囲が信じてくれなさそうな感じが上手く出ていたのも、ジェイソン・ベイトマンが演じたからこそなんだろうなぁと。
一方のゴードに扮した、演出に専念するため自分の出演シーンは撮影開始序盤にまとめ撮りしたという、『ゼロ・ダーク・サーティ』『遊星からの物体X ファーストコンタクト』のジョエル・エドガートン。実在しているはずなのに実生活がほとんど描かれていないこともあり、まるでそれぞれの手に赦しと懲罰を携え地上に舞い降りた天使のようなフワフワした存在感を、ライティングひとつで懐の深さと怖さが入れ替わる個性的な顔立ちで好演。
また、サイモンの妻ロビンに扮したのは、『アイアンマン3』『ザ・タウン』のレベッカ・ホール。中盤まで独り慄いている様が、その短くした髪もあってか『シャイニング』の嫁を彷彿させ、存分にイライラしてしまったんですけど、その苛立たしさは物語をミスリードさせるのに非常に効果的だっただけではなく、最後ロビンが居る病室の番号が『シャイニング』の例の怖い部屋“237号室”と同じってことから、意図的かつ的確な演出だったんだなぁってのにも驚かされた作品で。やるなぁ、エドガートン

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家に居る時は不在票置いてくくせに

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posted by たお at 15:28 | Comment(0) | TrackBack(2) | ★★★★(満足!) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月14日

ロバート・パーマー/ディシプリン・オブ・ラヴ (Robert Palmer - Discipline Of Love)

愛してやまなかった人や慣れ親しんでいたものが次々と失われていった2016年よりはマシな年になるかと思いきや、年明け早々悲しいニュースばかりな2017年。

中でも、ジョン・ハートの死は何となくシックリきたので寂しさが中心でしたけど、ビル・パクストンとミゲル・フェラーの死には大いに驚かされたもので。悲しさもさることながら、なんかこう、死んでいるのが似合わない

私にとって、そんな“死んでいるのが似合わない”代表格が、ロバート・パーマー。もう、亡くなってから14年も経つというのに、いまだにピンと来ないんですよねぇ。まだ、カリブのビーチで夕日を眺めながら美味しいお酒を飲んでいる気がしたりも。ま、きっとそんな天国にいるんでしょうけど。

そのロバート・パーマーが1985年にリリースした曲をペタリと。
オーバー・プロデュースを嫌い自身でプロデュースすることが多い彼にしては珍しく、バーナード・エドワーズを迎え、同年話題になったパワー・ステーションを継承するサウンドを披露した“リップタイド”からの1stシングルがこれ。その後大ヒットする『恋におぼれて』などの陰に隠れちゃって忘れられがちな一曲なんですけど、ズンドコズンドコした音頭的なビートがなんともツボな、好きな一曲なんですよねぇ。
あ、そう言えばエージェント・スミスの他に、ロバート・パーマーにも似てるらしいですよ、わたし。なんか、目の位置関係とか口の脇の“餌袋”的な膨らみとか。

【Robert Palmer - Discipline Of Love】


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タグ:音楽
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2017年03月07日

ペイチェック 消された記憶 (Paycheck)

監督 ジョン・ウー 主演 ベン・アフレック
2003年 アメリカ/カナダ映画 119分 SF 採点★★

フィリップ・K・ディックの小説って未来を舞台にしてるのが多いんで、映画化の際もそのまんま未来を舞台にしてたりするんですが、スピルバーグやリドリー・スコットのように現在の延長線上にある未来像をしっかり描ける監督ならまだいいんですが、大抵の場合は絵空事の未来像を作っちゃうんで、ディック特有のユーモアや不条理さが台無しになっちゃうんですよねぇ。だったら下手に未来にしないで、いっそのこと50〜60年代の風景に存在しえないテクノロジー(ポンコツの)を融合させた方がマシだと思ったりも。

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【ストーリー】
高額の報酬と引き換えに、極秘プロジェクトでの3年間の記憶を消去されたエンジニアのジェニングス。しかし、契約終了時に彼が手にした報酬は金ではなく、記憶を消される前の彼自身が望んだ19個のガラクタだった。しかも、そのプロジェクトを巡りFBIに捕らえられてしまう。手元のガラクタが役立ち命からがら逃げだせたジェニングスは、それらのガラクタが重要な意味を持つことを知り…。

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フィリップ・K・ディックの短編“報酬”を、『M:I-2』のジョン・ウーが映像化したSFアクション。
あれこれ設定が違うので原作と比べてなんやかんや言うつもりはありませんが、過去の自分も自分であることに違いがないのに、記憶がないので過去の自分を他人のように扱う、ディック特有のパラノイア風味がゴッソリと抜け落ちてしまってるために、ただただ「ガラクタが役立って良かったね!」ってだけの緊張感皆無の一本に。公開当時を振り返っても前時代的な未来デザインもアレですが、白鳩に前転銃弾避けと、無理やり詰め込まれたウー風味も全くハマってない残念な作品。ヒロインとは記憶を消される起点の前に出会ってるのに主人公はそれすら忘れているなど、設定の雑さも気になるところ。
まぁ、無駄に長いアクションシーンや、監督もキャストも合ってないなど不満も多い作品ではあるんですけど、平和だロマンだと偉そうなことを言っておきながら最後は「やっぱ金だね!」で終わる心の無さや、ケツ顎の主人公にケツ顎の悪役、ケツ顎の偽ヒロインが三分割のスプリットスクリーンで並ぶケツ顎アンサンブルの強烈さもあって、嫌いにはなれない一本で。

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ジェニングスに扮したのは、次世代スター候補として大作に起用され続けるも、作品の話題よりも交際絡みの話題の方が目立ってた、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のベン・アフレック。最近は脂も抜け良い感じの顔になってきましたが、当時はまだ見てるだけで厭な気分になるニヘラ笑いといじめっ子風貌が際立ってた時期なので、天才的なエンジニアにだけはどうやっても見えないミスキャスト。
一方、相手役の『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』のユマ・サーマンも、若干アホっぽい自然派の可愛い子にだけは見えず。そんなキャラに扮するユマは、似合う/似合わないを通り越してなんか不気味。私がユマ・サーマンを苦手にしてるってのも大きいんですが、出る度に「うわぁ…」ってなる。
その他、物凄い機械を作り上げた天才エンジニアを契約満了と同時に殺そうとする、未来が見える機械を作ってる会社の社長とは思えぬ先の見えなさが驚いた『エンド・オブ・キングダム』のアーロン・エッカートや、『カリフォルニア・ダウン』のポール・シアマッティ、『エグゼクティブ・デシジョン』のジョー・モートンに、『マイノリティ・リポート』に続いてのディック作品出演となったキャスリン・モリスらがキャスティング。

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社長とエンジニアが喧嘩するだけの映画でも

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タグ:★★ SF
posted by たお at 13:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | ★★(暇なら) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月03日

FOUND ファウンド (Found)

監督 スコット・シャーマー 主演 ギャヴィン・ブラウン
2012年 アメリカ映画 103分 ホラー 採点★★★

子供の頃は、自分の両親や兄弟はそこらの大人よりはマシな人間だと信じてたもんですよねぇ。言われることに理不尽さを感じたり腹立たしさを感じたりすること多々でしたけど、“ちゃんとした人間だ”と疑いもしなかったもので。ただ、自分も大人になり家庭を持つ身となると、自分の両親は決して“ちゃんとした人間”じゃないことに気付かされたりも。素直にそういった部分を受け入れればいいんでしょうけど、なまじ厳しい家庭だっただけに、失望感の方が大きかったりするんですよねぇ。

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【ストーリー】
不協和音響く過程で育つ11歳のマーティ。彼の楽しみは、ホラー映画を観ることと過激なコミックを描くこと、そして家族の秘密を覗き見ることだった。母はベッドの下に昔のラブレターを、父はガレージにエロ本、そして兄はクローゼットに生首を隠している。ある日、兄のクローゼットに忍び込んだマーティは、そこに彼をいじめていたクラスメートの生首が隠されているのを発見する。そして、その秘密を知っていることが兄にバレてしまい…。

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わずか8000ドルの低予算ながらも、数々のファンタ系映画祭で受賞したことで話題となったホラー。『ロストボーイ』のお兄ちゃんは吸血鬼でしたけど、こっちのお兄ちゃんは猟奇殺人鬼。どっちがいいかな?
思春期を迎えると共に周囲の大人に対する不信感が芽生えていく様を、何気に巧みにとらえていた本作。不安定なカメラワークに露出過多気味の映像は、単に素人仕事が生み出したものなんでしょうけど、思春期の揺らぎと苛立ち、受け入れがたい現実とそこからの逃避を図る子供の心理状態と見事にマッチ。災い転じてなんとやら
淡々とし過ぎてるので眠気覚ましのサービスのつもりだったのか、中盤に兄の凶行をイメージさせるアナログなスプラッターシーンが結構な尺で放り込まれてましたが、残念ながらオチのインパクトを薄める以外の効果なし。ちょいとそこが残念ではありましたが、さり気なく序盤のセリフと対をなす、凄惨ながらも諦めと独特のユーモア、ちょっとした美しさすら感じられる形だけの家庭が迎えたエンディングはやはり秀逸。親子愛とは明らかに違う、極端な愛憎混じった兄弟愛もちゃんと描けてましたし。
ヘル・レイザー』や『ミディアン』と、やたらクライヴ・バーカーを推すホラー映画愛溢れる小ネタの数々もさることながら、可愛さの中に陰があるマーティ役のギャヴィン・ブラウンや、少しばかり若い頃のヴァル・キルマーを彷彿させる兄役のイーサン・フィルベック、自然体過ぎる他の子役らと役者も印象的だった一本で。

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“お兄ちゃんが猟奇殺人鬼”って、小学男子にとっちゃちょっとしたステータスだよなぁ

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posted by たお at 15:15 | Comment(1) | TrackBack(2) | ★★★(まぁまぁ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする