2013年 アメリカ映画 129分 ドラマ 採点★★★
ちょっと語弊のある言い方かも知れませんが、“馬鹿”が大嫌いな私。別に学がない人とか物を知らない人のことじゃなく、知ろうとしない人や想像力に欠如した人が嫌い。自分の言動が相手にどんな思いをさせてしまうのかや、何が起きるのかを想像できない人って悪意がない分だけ本当に性質が悪いと思うんですよねぇ。また、知ろうとしない挙句に開き直っちゃう人ってのは、もう論外。
【ストーリー】
フロリダのジムでトレーナーとして働く“筋肉命”のダニエルは、さえない自分の人生に終止符を打ち一発逆転のアメリカンドリームを手にするため、ジムの顧客である裕福なビジネスマン、ヴィクターの誘拐を計画する。同僚で同じく筋肉命のエイドリアンと、前科者のポールを仲間に引き入れ計画を実行するが…。
1995年にフロリダで実際に起きた事件を追ったルポを基に、ナルニアとマーベルの脚本ばっか書いてる印象もある『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のクリストファー・マルクス&スティーヴン・マクフィーリーが脚本を手掛け、『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』のマイケル・ベイがメガホンを握って彼にしては低予算の2600万ドルで作り上げた実録クライム筋肉コメディ。
もうバカと筋肉しか出てこない。筋肉バカがステロイドのせいで脳まで筋肉になったかのようなバカなことをして、それが当然バカな結果を生み出すこの物語が結構事実に忠実だってのに大いに驚かされちゃうが、これをあのマイケル・ベイが意外にも面白く仕上げたってのにも驚かされた。実際に起きた結構凄惨な事件を、ナレーションを多用して過去を振り返る形で描く所謂『グッドフェローズ』タイプの作品を、ドラマなんぞそっちのけでド派手なアクションばかりを描き、その肝心のアクションも派手すぎて何が起きてるのかさっぱり分からなくしちゃうあのマイケル・ベイが撮るってんで、正直不安しかなかった本作。キャストが良いのに監督作としては初めて日本未公開ってのも、その不安を上乗せしてましたし。ところがどっこい、実際観てみるとこれがなかなか面白い。
もちろんマイケル・ベイが普通の監督が作るような作品を撮ったのではなく、日焼けしたテカテカ輝くムキムキの筋肉にフロリダの青過ぎる空の下、分かりやす過ぎるくらい記号的な美女に頭空っぽの登場人物たちが、テンション高すぎるやり過ぎ描写げ描かれる、まさにベイにしか撮れない本作。その、ネタにされ笑われがちな自らの演出を逆手に取ったのか、笑いの演出としてしっかりと活かされているベイ風味ってのも楽しい。事件が陰惨な方向へと転がっていく後半、ダークコメディとして勢いを増していくわけでも、シリアスへ急展開してコントラストを効かせるわけでもなく、序盤とさして変わらぬテンションのまま進んでしまうのでダレてしまう難点こそありましたが、ゴテゴテと飾り付けられたアメリカンドリームの虚像とそれに振り回される空っぽの人々の姿を、そんな作品ばかり撮ってたベイが皮肉へと転化させていたってのが興味深くも楽しめた一本で。
主犯格のダニエルに扮したのは、『テッド2』『ローン・サバイバー』のマーク・ウォールバーグ。頭は少々弱いが人当たりの良いあんちゃんって役柄を得意としているだけあって、“愛すべきバカ”と“憎むべきバカ”の狭間に立つこの役柄を、相当パンプアップした肉体で熱演。知恵も想像力もないくせに行動力だけあるこの役柄は、下手すればただ苛立つだけのものになりそうだが、彼の持つキャラがそこをだいぶ救ってくれてたなぁと。
また、ポジション的にはヒロインに近い共犯のポールに扮したのが、『カリフォルニア・ダウン』『ワイルド・スピード SKY MISSION』のドウェイン・ジョンソン。持ち前のコメディセンスと豊かな表現力で、可愛げが炸裂する前半と凄みの増す後半という様変わりする役柄を好演。バカ過ぎて救いのない物語に、一種の和みってのを与えてたのが彼なのかなぁ。
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『ナイト・ビフォア 俺たちのメリーハングオーバー』のアンソニー・マッキーも相当身体を作り上げての出演でしたけど、上記の二人が少々勢いに任せて突っ走ってる感もあるので、足りないエモーションの部分とか笑いといった隙間をコツコツと埋める2番打者的役割をしっかり務める好キャスティング。
このムキムキしたメインキャストにばかり目を奪われそうだが、劇中唯一まともな人間に扮した『ラン・オールナイト』のエド・ハリスや、『22ジャンプストリート』のピーター・ストーメア、『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』のケン・チョンといったベイ作品ゆかりの顔触れや、『ギャラクシー・クエスト』のトニー・シャループ、『SEXテープ』のロブ・ゴードリー、『ピッチ・パーフェクト2』のレベル・ウィルソン、『キック・アス』のマイケル・リスポリに、囚人の中に紛れてるレスラーのカート・アングルといった、濃いめの顔触れが揃ってたのも魅力の一本で。
“想像力がない”ってのが一番の罪
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