2015年 イギリス映画 98分 ホラー 採点★★★
時に恋愛なんかでそうなんですけど、“忘れたい思い出”ってのは“忘れたくない思い出”と密接に絡み合ってるので、頑張って忘れようにも思い出させるきっかけがアチコチにあり過ぎてそうもいかないんですよねぇ。何をしてても思い出す。新しい恋でも始めて無理やり思い出を上書きするのもいいですけど、思い出す度に大声を上げたくなる衝動と時間を掛けて付き合って、徐々に薄れていくのを待つのが一番確実だったりも。
【ストーリー】
大学で救急救命士の勉強をするホリーは、バイト先のスーパーで恋人のニーナを事故で失ったロブと出会う。その悲しみから立ち直れない暗くナイーヴなロブに惹かれたホリーは彼を元気づけるために近付き、やがて二人はベッドを共にする。しかしそんな時、突如ベッドの中から血塗れのニーナが現れ・・・。
劇長編デビューとなるクリス&ベン・ブレイン兄弟が手掛けた、ホラー・ラブストーリーのコメディ和え。
Hの最中に死んだ元カノが血塗れで現れるから困っちゃうカップルの姿を、若干ウザっためのアート志向が前に出た温度の低い映像で収めた本作。「メキメキッ!ゴキゴキッ!」と『呪怨』の伽椰子ばりに登場するニーナのインパクトに少々邪魔されているが、意外と恋愛の本質的な部分を捉えていたりして驚かされた一本でも。
普通に見えるけど実はちょっと変わった娘というよりも、“普通”と言われることを嫌い敢えて変わった娘になろうとして背伸びしているようにも見える19歳のホリー、“死”と言う衝撃的な結末を迎えたこともあり元カノのことが忘れられず、ことあるごとに自殺衝動に駆られるナイーヴをこじらせたロブ、そして言ってることがいちいち正論のニーナと、三者三様微妙に異なるキャラクターを男兄弟が書いたとは思えぬ繊細さで描いた本作。背伸びして大人びようとするホリーと、そんなものは全て経験済みなだけに「はいはい、頑張ってるね」と達観して見ている一回り近く年上のニーナの関係性なんかも見事に収めていたなぁと。事態が面倒くさくなってくると途端に存在が空気になってくるロブの姿なんかもまさに。
存在感があり過ぎる幽霊が出てくるのでホラーというスタイルを取っているが、過去を無理して受け入れようとしたり力ずくで打ち消そうとしたりと奮闘する恋人同士の姿を描いている、変化球のラブストーリーと言った方が良いのかと。いささか言葉足らずですんなり入ってはこないが、過去を引きずり過ぎている彼氏そのものではなく、“彼女が死んで落ち込んでいる男”という状況に惹かれ、知らず知らずのうちに自分がその過去に取りつかれてしまっていることが判明するストーリー展開も、随所に描かれた「あぁ、わかるなぁソレ!」的な笑いと共になかなか楽しめた作品でも。
どうも評判があまり芳しくないようなんですが、似たような題材を扱った『ライフ・アフター・ベス』よりも、恋愛や男女関係の捉え方や、ただでさえ“元カノ”(とそれに囚われてる男)ってのは面倒くさいのに、死んでるからさらに厄介なニーナの言動のずば抜けた面白さもあって、全然こっちの方が好き。
生きていても太刀打ち出来そうになく
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