2016年04月25日

クリード チャンプを継ぐ男 (Creed)

監督 ライアン・クーグラー 主演 マイケル・B・ジョーダン
2015年 アメリカ映画 133分 ドラマ 採点★★★

ランボー』をこよなく愛する私ですけど、じゃぁランボー関連で『ティーズル保安官の大冒険』とか『トラウトマン/最後の戦場』とか作られたら観たいかと言うと、ちょっと微妙。「ランボーも出るよ!」と言われれば少しそそられますが、こっちはランボーをメインで観たいんでやっぱり微妙。まぁ、それでもそのキャラクターに主人公としての存在感や魅力、説得力さえあれば問題ないんでしょうけどねぇ。

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【ストーリー】
かつてロッキーと死闘を繰り広げた、ライバルにして無二の親友であるアポロ・クリードの隠し子アドニス。施設を転々とする荒れた少年時代を過ごした彼だったが、アポロの妻メアリー・アンに養子として迎え入れられ、恵まれた環境の中立派な青年へと成長していた。しかし、ボクシングへの夢を諦められないアドニスは義母の反対を押し切り単身フィラデルフィアへと向かい、ロッキーにトレーナーを依頼するのだったが・・・。

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言わずと知れたロッキーの永遠のライバル、アポロ・クリードの息子を主人公に据えた“ロッキー”シリーズのスピンオフ。メガホンを握ったのは、自ら手掛けたこの脚本をスタローンに持ち込み直談判したという、本作が長編2作目になるライアン・クーグラー。
これまでのシリーズのほとんどでメガホンを握り、全ての作品の脚本も手掛けたスタローン。ロッキー像もその世界観も全てスタローン一人で築き上げたと言っても過言ではないのだが、本作は初めてスタローン以外の人間による脚本を映像化した一本。スタローンも共演しているとは言っても正直不安も大きかったのだが、そんな不安が杞憂に過ぎなかったほどロッキーの世界観を忠実に継承していたことにまず驚いた。人物像や作品の構造のみならず、街とその住人たちがチャンプを育て上げる、忘れられがちだが重要な要素までをも漏れずに継承。
また、主人公を置き換えただけのお手軽作品ではなく、主人公が偉大なるチャンプの愛人の子(しかも本妻に育てられる)というパンチの効いた生い立ち設定を持ち、その会ったこともない父親に対する愛憎交えた葛藤や、その名のために過剰に加護されたり比べられてしまう苦悩、認められたいという強い思いなど独自の物語も生み出している。そこに愛する家族を失い、自らも重病を患ってしまうロッキーが絡むことで、多層的で重厚なドラマも生まれていた。もちろん試合のシーンは白熱するし、お馴染みのシーンや曲が流れれば鳥肌が立つほど興奮もする。ファンなら喜ばないわけがない作りをしていた一本で。

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しかしながら、“ロッキー的な何か”はある程度楽しむことが出来たんですけど、それがこの映画そのものの面白さだったかと考えてしまうと、その辺は微妙な感じも。興奮もしたし感動もしたが、それは全てロッキーの遺産を利用したものに対してであって、アドニスが生み出したものに対してではなかったのかなと。ロッキーの存在が大前提のスピンオフとは言え、サイドにいるには存在感も役割も大き過ぎてロッキーがメインの物語が観たくなってしまうだけですし、それを求めるには微妙に役割が小さい。なんと言うか、ハンバーグが食べたいのに出てきたのがおからハンバーグだったみたいな。
また、アドニスが置かれた状況に対する葛藤や苦悩は確かに描かれてはいたが、それでも(本人は不本意ながらも)偉大な父親の名前と血を受け継ぎ、伝説的なチャンプをセコンドに付けそれらのおかげでプロ2戦目でしかないのに世界戦に挑戦できる主人公は、やはり恵まれ過ぎている印象は拭えず。これで対戦相手がバブリーな嫌な奴であったり戦闘サイボーグのような奴であれば多少バランスも取れたんでしょうが、ボクシングの世界でしか認めてもらえない荒くれという純ボクサーだっただけに、「やっぱりオレにはボクシングしかない!」って意気込みは立派ですが、豪邸で立派な義母に育てられ何不自由なく生活し、それなりに立派な会社内でも仕事を認められる主人公ではやはりバランスが悪い。意地悪な見方ではありますが、そんな主人公が自分の気持ちだけでフィラデルフィアに赴き、生活とトレーニングスタイルをロッキーに似せる様は、ワーキングクラス・ヒーローの衣を着たセレブに見えてしまう印象も。
素直に「ロッキーが戻って来た!わーい!」と喜んでいれば良かったんでしょうが、なまじロッキーに色々と寄せてしまってる分、この辺が気になってしまいイマイチ気持ちが入ってこなかった一本で。ま、私がへそ曲がりだからってのも大きいんでしょうけど。

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アドニスに扮したのは、『クロニクル』『ファンタスティック・フォー』のマイケル・B・ジョーダン。二日ほど前に本作を観たんですが、今となっては正直どんな人だったのやら。また、ロッキーとエイドリアンのドラマを模したんでしょうけど、ゴミ溜めの恋というか過酷な環境下におけるオアシスという物語上重要な位置づけにまでは至っていなかった恋模様の相手となる、『ストレンジャー・コール』のテッサ・トンプソンも印象がボンヤリ。
まぁそれもこれも、『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』『リベンジ・マッチ』のシルヴェスター・スタローンが素晴らし過ぎたからなんですけど。自身が作りだし長年演じてきたキャラクターだから素晴らしいのは当然とはいえ、家族を失い孤独に苛まれ、重病を患う老いたロッキーというより深まったキャラクターを、素朴で気の良い町の兄ちゃんって雰囲気を残しつつ哀愁を漂わせる見事な熱演を披露。肉体派アクションスターの宿命か演者として低く見られがちなスタローンだが、これまでもそうだったようにハマる役柄にはとことんハマる。アカデミーにもノミネートされ話題にもなりましたが、如何せん他のノミネートされた作品を観ていないので受賞を逃したことに関しては判断できず。ただ、もし逃した理由が「スタローンだし」とか「いつものロッキーだし新鮮味がぁ・・・」といった理由ならば、それこそそんな賞を相手にする必要なしかと。
その他、スタローンとは『ランボー 最後の戦場』でも共演済みであるグレアム・マクタヴィッシュや、重要度が高まったせいか、過去2度クリード夫人を演じたシルヴィア・ミールズからバトンタッチしたフィリシア・ラシャドらが共演。
それにしても、『ロッキー3』ではミッキー、『ロッキー4/炎の友情』ではアポロ、『ロッキー・ザ・ファイナル』では妻エイドリアンと、作品を重ねる度に誰かが死んでる感もあるシリーズですが、本作では遂にポーリーが死んじゃってた。不景気に打ちのめされたフィラデルフィアを象徴する人物とは言え、こっちが引いてしまうほどのダメ人間だったポーリー。でも、いざ出てこないと寂しいこと寂しいこと。ポーリーの存在がこんなにも大きかったことを痛感させられたことが、案外本作最大の収穫だったかも。

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死ぬにも死ねない

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posted by たお at 23:52 | Comment(0) | TrackBack(24) | 前にも観たアレ■か行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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