2013年 アメリカ/チリ/カナダ映画 100分 ホラー 採点★★★
なにやら本作の予告編が劇場で流された際、観客が「不快だ!」とクレームを付けたせいで予告が差し替えになったとか。これがクレヨンしんちゃんとか妖怪ウォッチとかやってる際の予告編なら理屈はまだ分かるんですけど、どうやらそうでもなさげ。なんだい?もうこの国ではホラーは予告編ですら許されない存在になっちゃったのかい?自分が不快に思うものは全て“悪”なのかいと。かつて『食人族』が『E.T.』と興行成績を競い合った所と同じ国とは思えないほど、世の中は変わっちゃったんでしょうかねぇ。
【ストーリー】
未開のジャングルに暮らす先住民ヤハ族を企業の開発工事から守る抗議活動に参加するため、活動家グループと共に南米ペルーへと赴いた女子大生のジャスティン。その活動は成功に終わり大きな成果と共に帰路に付く彼らだったが、乗り込んだセスナ機が墜落してしまい彼らはアマゾンのジャングルに放り出されてしまう。辛うじて一命を取り留めた彼らだったが、突如現れたヤハ族に捕えられてしまう。集落に連れてこられた彼らを待っていたのは、おぞましい食人の儀式で・・・。
『ホステル2』以来久しく劇場長編の監督業から離れていたイーライ・ロスが、食人映画に対する愛を爆発させながら作り上げた“俺の食人族”的ホラー。主演は“俺の嫁”ロレンツァ・イッツォ。
金のために嫌々仕方なくホラーを撮った人の映画って、そのやる気の無さや現状への怒りが反映されるのか、不条理で不快で、自分もそうだからか観客を楽しませようなんて気配りがない作品になりがちですよねぇ。一方、ホラーを愛してやまない人が撮る映画はその逆で、ホラー映画ファンが楽しんでくれるような作品を作る。本作は明らかに後者で、私個人が好きなのは生憎前者。
人肉晩餐会はもちろんのこと、眼球くり抜きに四肢切断などありとあらゆる人体破壊に下痢とゲロという、お下劣なグロ描写満載の本作。ちょっとしたゴア描写でも一切手を抜かない、さすがホラー愛好家の作品っていったところで。ただ、そのそれだけのことをやっておきながらも、やっぱりどこか能天気な感じが漂ってしまっているのも事実。臓物を素手で触るかのようなヌメっとした不快感がないというか。自分自身が楽しんでいるのと同様にホラーファンを心底楽しませようとする姿勢は素晴らしいと思うんですけど、食人映画に求めてるのはそれじゃないんだよなぁって感じも。
しかしながら、文明社会から先住民の文化を守ろうと言ってる一方で割礼は野蛮だからやめさせようと騒ぎ立てる、文明人のエゴと思いあがりといった、作品の本質と言うかテーマを見失っていないのは流石イーライ・ロス。そんな“自分が信じてる大義や価値観こそ全て”という宗教的な胡散臭さ満載の信条と、“自分たちが助けなければ”って思いあがりを胸に呼ばれてもいない他人の土地にズケズケと上がり込み、マスターベーションでしかない活動に満足する輩が助けてると思っていた部族にばんばか食われていく様は、ある種痛快ですら。
また、ゴアのみに走るのではなく、アクションにサスペンスに笑いにアドベンチャーとありとあらゆる娯楽要素を盛り込み、しかもそれら全てが思いのほかしっかりとしているイーライ・ロスの“巧さ”ってのも堪能できた一本。
続編狙いの結末は蛇足な感じが否めなかったんですが、妙に和気あいあいとした部族の婦人会による人肉調理シーンや、男子の馬鹿さ具合は万国共通なんだってことを痛感させられた、白人娘にほだされた部族の男子が委員長的部族の女子に叱られる名シーンがとっても楽しかったので採点は若干甘めに。
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