1981年 アメリカ映画 99分 アクション 採点★★★
今年の3月に知らされたキース・エマーソンの突然過ぎる死は、プログレに然程詳しくない私ですら大いに驚かされたもので。ELPを熱心に聴いていたわけではないんですけど、本作やダリオ・アルジェントの『インフェルノ』、日本との関係性の深さを物語るひとつでもある『幻魔大戦』など、強い個性を放ちながらも映画そのものは決して破壊しないサントラの数々は、当時自分で作っていたサントラコンピのテープに必ず入れてたほど好きだったものです。今年はホントに出だしから悲しいニュースばかり。
【ストーリー】
欧州を中心に活動していた国際的テロリストのウルフガーが、整形を施しニューヨークへと渡ってくる。囮捜査で数々の手柄を立てていたニューヨーク市警のディークは、相棒のフォックスと共に対テロ特殊部隊に参加しウルフガーを追う。しかし、ウルフガーはロープウェイに大勢の人質と共に立て篭もり・・・。
『ウォリアーズ』のデヴィッド・シェイバーによる脚本を、『ハード・トゥ・キル』のブルース・マルムースがメガホンを握り映画化した、ヒゲ女装で始まりヒゲ女装で終わる衝撃のサスペンスアクション。
現在の小奇麗な姿しか知らない若い衆なら驚いてしまうかも知れないほど荒廃した犯罪都市ニューヨークを舞台に、冷酷非道の国際テロリストと二人の刑事の熾烈な戦いを描いた本作。本物のロープウェイや地下鉄を使用した大掛かりなアクションも見どころ。また、かつては戦場で殺戮マシン並の活躍をするも、現在は刑事として街の犯罪者を逮捕することを前提に働いている主人公が、そんな理屈の全く通用しない相手を前に自ら野獣とならねばならない葛藤も描かれているのが特徴かと。
ただ、スタローンによるヒゲ女装姿以外の個性に致命的に乏しいってのがなんとも惜しい本作。ルトガー・ハウアー本人の魅力もあってかウルフガーにはまだ輝きがあるものの、基本的に登場人物は自分の考えをベラベラ喋る割にどんな人なのかまでは分からず、結果主人公を始めキャラクターに魅力が生まれてるとは言い難し。
また、スタローンのエゴが爆発していた時期だってのもあってか、現場にやたらと口を出した揚句に自分を食いそうなルトガー・ハウアーの出番を削らせたそうで、そのせいもあってか起承転結のバランスや、2発しか撃ってないスタローンの弾丸がハウアーの身体に4つ穴を開けるみたいにシーン間の繋がりがすこぶる悪く、「なんかたるいなぁ」と思ってると唐突にクライマックスが訪れ、その緊張感を持続しないまま結末を迎えてしまうのも非常に惜しい。まぁ、その結末がヒゲ女装なんでインパクトだけは充分ですが。
「そんな女装ばっかしてるんならヒゲくらい剃った方がいいんじゃない?」って思っちゃう主人公に扮したのは、『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』のシルヴェスター・スタローン。『ロッキー』で一躍スターになるも、それ以外に当たり役がない焦りからか様々な役柄に挑戦していた迷走期ってのと、刑事役で成功してこそのアクションスターみたいな風潮ってのもあったのか、果敢に奇抜な個性のディークに挑戦しているが、正直なところ別にスタローンじゃなくても良い役柄だったかなぁと。まぁ、スタントを全て自分でこなした頑張りと、未だに語り草となる強烈な姿を見せてくれたって意味では、★ひとつプラスしていいほどのインパクトでしたが。
ただ、一方のウルフガーに扮した『ホーボー・ウィズ・ショットガン』のルトガー・ハウアーは、その冷たく妖しい魅力と言うか魔力を存分に発揮。本作がハリウッドデビューとなるのだが、この後『ブレードランナー』『ヒッチャー』にキャスティングされるのも納得の存在感と独特の色気が。
その他、年齢的にはスタローンより下なのに今見ると“前世代の女優”感が出ちゃって随分と年上に見えちゃうリンゼイ・ワグナーや、なんか最後に裏切りそうな感じが抜けきらない『ファンボーイズ』のビリー・ディー・ウィリアムズ、作品への箔付けとして今だったらブライアン・コックス辺りが演じそうなポジションだったナイジェル・ダヴェンポートや、見た目とは裏腹に面倒見が良いのか、なんだかんだとニューヨーク映画界の中心にいて初期のスタローンともよく絡んでいた『マニアック』のジョー・スピネルらもキャスティング。
相反するポリシーのぶつかった結果
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